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第七夜 ラート はじまり編
格闘家
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矢那の実家 千舞宇の部屋
「はあ?何で私があんたなんかのために、なんかしなきゃいけないわけ?」
千夜宇ちゃんの妹、千舞宇が駿太に食って掛かる。
矢那が割り込んで代わりに頭を下げる。
「なあ、千舞宇、そう言わないで協力してくれよ。な?」
「ヤダよ。誰がお姉ちゃんのこと、振った奴なんかの手伝いをするかっての」
え?
駿太が何かを言いかけると、矢那さんが割り込む。
「いやいや、そりゃ違うぞ。千舞宇」
「何がよ」
「いつ駿ちゃんが千夜宇のこと振ったって言うんだい?」
「え?だってお姉ちゃん泣いてたよ」
「ん?それって、いつよ?」
「引っ越してからお兄ちゃんと住み始めてからだけど、それがなに?」
「てか、未だに駿ちゃん、千夜宇のことが好きなんだけど」
「は?あり得ないし。だったら、こうして一緒にいるこの女は何?だれ?」
ミサオを指差す千舞宇。
「いや、だから、それは・・」
ミサオが矢那を遮る。
「黙って聞いてりゃ、あんた一体何様?」
「妹よ」
「そんなこと言ってんじゃないでしょ?」
二人に割り込む矢那。
「まあまあまあ、二人とも落ち着けって・・・な?」
「これが、落ち着いていられる?」
「そうよ、矢那さんは引っ込んでてくれる?」
「これは、女同士の会話ですから」
ミサオと千舞宇が顔を近づけて睨み合う。
あかんわ、これは・・・矢那が、椅子に沈み込む。
「た、頼むよ、千舞宇ちゃん」
駿太が土下座を始める。
「ちょ、ちょっと、どういうつもりよ。そんなことやめて」
千舞宇がさすがに困っている。
矢那が立ち上がる。
「千舞宇、とにかく話し合おう?頼むよ」
観念したのか、椅子にドッカと座り込む千舞宇。
「わ、わかったわよ。話だけは聞いてあげるわよ」
「ミサオちゃんも、ね?」
「う、うん、わかった。駿太?座ろ」
ミサオの座るソファの横に腰を下ろす駿太。
「ありがとう、千舞宇ちゃん」
「で?どういうことか、話してくれる?」
「そもそも、俺、千夜宇ちゃんを振ったつもりはないよ」
「なにを・・・まだ言うか」
立ち上がろうとする千舞宇を止める矢那。
それを見た駿太が矢那に会釈すると口を開いた。
「あの時、俺も引っ越しするなんて、全く知らなかったんだよ」
「え?そんなわけ・・・」
千舞宇に矢那が首を振る。
「ある日、突然、転校するって聞いて、家に行ってみたよ。そしたら、知らない家族がもう住んでてさ。さよならも言えなかったよ」
「うそよ、お姉ちゃん、お別れしてきたって、あのとき・・・あ」
何か、辻褄が合わないことに気づく千舞宇。
「お姉ちゃん、さよなら。してないね、あんたに」
口元を手で覆う千舞宇。
「引越しの日、あんたに会う約束してるからと言って出てったんだよね、お姉ちゃん。でも、実際は会いになんて行ってなかったんだ」
あの日のことを思い返している千舞宇。
「確か、あの後、電話があったんだよ。あんたから。母さんがその電話を受けてたのね。で、母さん。こう言ってた
『もう、娘はここにはいません』て。
なんで、忘れてたんだろ。会話のやりとりから、会う約束してないの、わかるよね。私って馬鹿だ」
矢那が千舞宇に歩み寄り、肩に手を置く。
「仕方がないよ。まだ、千舞宇は、小さかったんだから」
「小さくなんかないよ。小四だよ?」
「いや、それは充分幼いと思うぞ」
「ごめん、駿太さん・・・私ったら」
「わかってくれたなら、それでいいよ。ありがとう。千舞宇ちゃん」
顔を上げる千舞宇。
「でもね、これは納得いかないよ」
言いながらミサオをこれ扱いして指を差す。
「誰が、これじゃあ。ぁあ?」
矢那が慌てて立ち上がる。
「だから、こらこらこら、よさないか」
「これだから、これ。言ってるだけだろ。これ」
「まだ言うか、この女は」
バンと音を立ててテーブルに手を着く矢那。
え?となるミサオと千舞宇は矢那を見る。
「いい加減にしないか!二人ともぉお!」
珍しく矢那が吠えた。
「黙って聞いてりゃ、なんだよ。ちったあ、駿ちゃんのことも考えたらどうなんだ。ああ?」
静まり返る場。
千舞宇は、本気で怒った時のお兄ちゃんの怖さを知っていた。普段が優しいだけに、そのギャップにやられてしまう。
ミサオもまた、こんな矢那さんを見たことがなかった。
「ごめんなさい・・・」
シュンとなるミサオと千舞宇。
「と、とにかくだ。落ち着いたんなら、それでいいよ。って、俺が落ち着かない。ああああ」
矢那が顔を両手で覆うと突っ伏してしまう。
自分でも何年ぶりかに、ブチギレたので、抑えが効かなくなっている。
「まあ、お兄ちゃんのことは、放っておいていいから本題に入ってくれる?」
おいおい、いいのか~と、救いの手を差し伸べる矢那。
「そうだね、俺から全てを話させてもらうね」
駿太が事の始まりを語り始める。
「ミサオの映画を見ていた俺は、ミサオの大ファンでね。一緒にいて。って言われたら一生離さないぞって、願ったんだよね。そしたら、ほんとに画面から出てきてさ」
「は?何それ?てことは、何よ。これ、本物なわけ?」
うんと、うなずく一同。
「んな訳ないじゃん。これがあのミサオなの?似ても似つか・・な・・て、そっくりなんだけどぉ。ミサオに」
「だって、本人だもん」
ケロっと、ミサオが言う。
えええええええええ
千舞宇が、おかしくなった。
「ばばばば、こんなバカな話って、ありますか?」
(ここにあります)
「うそぉ、信じらんない。ほんとにミサオ?」
(何を、そんなに?)
「あ、私、あんたの大ファンなんだよ」
は?
「合気道、始めたのも、あんたみたいになりたかったからなんだよ。あ~嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、ほんとに~?」
(ほんとです。今も信じられないんだけどね)
「あんたの頼みなら何でも聞いちゃうよ。ミサオ」
(手のひらを返すとは、こういうことね)
て、ことで、格闘家 ゲット。
次なるは、治癒師なのだが・・・
「はあ?何で私があんたなんかのために、なんかしなきゃいけないわけ?」
千夜宇ちゃんの妹、千舞宇が駿太に食って掛かる。
矢那が割り込んで代わりに頭を下げる。
「なあ、千舞宇、そう言わないで協力してくれよ。な?」
「ヤダよ。誰がお姉ちゃんのこと、振った奴なんかの手伝いをするかっての」
え?
駿太が何かを言いかけると、矢那さんが割り込む。
「いやいや、そりゃ違うぞ。千舞宇」
「何がよ」
「いつ駿ちゃんが千夜宇のこと振ったって言うんだい?」
「え?だってお姉ちゃん泣いてたよ」
「ん?それって、いつよ?」
「引っ越してからお兄ちゃんと住み始めてからだけど、それがなに?」
「てか、未だに駿ちゃん、千夜宇のことが好きなんだけど」
「は?あり得ないし。だったら、こうして一緒にいるこの女は何?だれ?」
ミサオを指差す千舞宇。
「いや、だから、それは・・」
ミサオが矢那を遮る。
「黙って聞いてりゃ、あんた一体何様?」
「妹よ」
「そんなこと言ってんじゃないでしょ?」
二人に割り込む矢那。
「まあまあまあ、二人とも落ち着けって・・・な?」
「これが、落ち着いていられる?」
「そうよ、矢那さんは引っ込んでてくれる?」
「これは、女同士の会話ですから」
ミサオと千舞宇が顔を近づけて睨み合う。
あかんわ、これは・・・矢那が、椅子に沈み込む。
「た、頼むよ、千舞宇ちゃん」
駿太が土下座を始める。
「ちょ、ちょっと、どういうつもりよ。そんなことやめて」
千舞宇がさすがに困っている。
矢那が立ち上がる。
「千舞宇、とにかく話し合おう?頼むよ」
観念したのか、椅子にドッカと座り込む千舞宇。
「わ、わかったわよ。話だけは聞いてあげるわよ」
「ミサオちゃんも、ね?」
「う、うん、わかった。駿太?座ろ」
ミサオの座るソファの横に腰を下ろす駿太。
「ありがとう、千舞宇ちゃん」
「で?どういうことか、話してくれる?」
「そもそも、俺、千夜宇ちゃんを振ったつもりはないよ」
「なにを・・・まだ言うか」
立ち上がろうとする千舞宇を止める矢那。
それを見た駿太が矢那に会釈すると口を開いた。
「あの時、俺も引っ越しするなんて、全く知らなかったんだよ」
「え?そんなわけ・・・」
千舞宇に矢那が首を振る。
「ある日、突然、転校するって聞いて、家に行ってみたよ。そしたら、知らない家族がもう住んでてさ。さよならも言えなかったよ」
「うそよ、お姉ちゃん、お別れしてきたって、あのとき・・・あ」
何か、辻褄が合わないことに気づく千舞宇。
「お姉ちゃん、さよなら。してないね、あんたに」
口元を手で覆う千舞宇。
「引越しの日、あんたに会う約束してるからと言って出てったんだよね、お姉ちゃん。でも、実際は会いになんて行ってなかったんだ」
あの日のことを思い返している千舞宇。
「確か、あの後、電話があったんだよ。あんたから。母さんがその電話を受けてたのね。で、母さん。こう言ってた
『もう、娘はここにはいません』て。
なんで、忘れてたんだろ。会話のやりとりから、会う約束してないの、わかるよね。私って馬鹿だ」
矢那が千舞宇に歩み寄り、肩に手を置く。
「仕方がないよ。まだ、千舞宇は、小さかったんだから」
「小さくなんかないよ。小四だよ?」
「いや、それは充分幼いと思うぞ」
「ごめん、駿太さん・・・私ったら」
「わかってくれたなら、それでいいよ。ありがとう。千舞宇ちゃん」
顔を上げる千舞宇。
「でもね、これは納得いかないよ」
言いながらミサオをこれ扱いして指を差す。
「誰が、これじゃあ。ぁあ?」
矢那が慌てて立ち上がる。
「だから、こらこらこら、よさないか」
「これだから、これ。言ってるだけだろ。これ」
「まだ言うか、この女は」
バンと音を立ててテーブルに手を着く矢那。
え?となるミサオと千舞宇は矢那を見る。
「いい加減にしないか!二人ともぉお!」
珍しく矢那が吠えた。
「黙って聞いてりゃ、なんだよ。ちったあ、駿ちゃんのことも考えたらどうなんだ。ああ?」
静まり返る場。
千舞宇は、本気で怒った時のお兄ちゃんの怖さを知っていた。普段が優しいだけに、そのギャップにやられてしまう。
ミサオもまた、こんな矢那さんを見たことがなかった。
「ごめんなさい・・・」
シュンとなるミサオと千舞宇。
「と、とにかくだ。落ち着いたんなら、それでいいよ。って、俺が落ち着かない。ああああ」
矢那が顔を両手で覆うと突っ伏してしまう。
自分でも何年ぶりかに、ブチギレたので、抑えが効かなくなっている。
「まあ、お兄ちゃんのことは、放っておいていいから本題に入ってくれる?」
おいおい、いいのか~と、救いの手を差し伸べる矢那。
「そうだね、俺から全てを話させてもらうね」
駿太が事の始まりを語り始める。
「ミサオの映画を見ていた俺は、ミサオの大ファンでね。一緒にいて。って言われたら一生離さないぞって、願ったんだよね。そしたら、ほんとに画面から出てきてさ」
「は?何それ?てことは、何よ。これ、本物なわけ?」
うんと、うなずく一同。
「んな訳ないじゃん。これがあのミサオなの?似ても似つか・・な・・て、そっくりなんだけどぉ。ミサオに」
「だって、本人だもん」
ケロっと、ミサオが言う。
えええええええええ
千舞宇が、おかしくなった。
「ばばばば、こんなバカな話って、ありますか?」
(ここにあります)
「うそぉ、信じらんない。ほんとにミサオ?」
(何を、そんなに?)
「あ、私、あんたの大ファンなんだよ」
は?
「合気道、始めたのも、あんたみたいになりたかったからなんだよ。あ~嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、ほんとに~?」
(ほんとです。今も信じられないんだけどね)
「あんたの頼みなら何でも聞いちゃうよ。ミサオ」
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