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10 自由のために
蓮華の失われた過去 その一
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自由の旗の支部
作戦室で大きなテーブルを囲んでいる。
麗美、京介、ナミリア、俊、蓮華、弥之助の姿があった。
ハイデルから手渡された木札を手にする麗美。
「すごいわね。これがあれば、大抵の場所には行けてしまうわ」
自由の旗の一員ばかりか、誰もが喉から手が出るほど入手したい代物だ。
「蓮華さん、せっかくの頂き物です。無くさないように気をつけて。身内にも欲しがる輩もいるから」
「はい、気をつけます」
麗美は、木札を蓮華に返すとハイデルとの経緯を蓮華の口から聞かされた。
「ロムル軍ジパン侵攻隊第三隊隊長、ハイデル・ランバルト。そう名乗っていました」
あごをつまむ麗美は、驚きを隠せない。
「ジパン侵攻隊といえば、第一陣のエリート部隊よ。その隊長ともなれば、ロムル国王の信頼も厚いわね」
京介がニヤリとする。
「そんな男に好かれるとは、蓮華ちゃんも隅に置けないね」
「そんなんじゃないです。一度、拳と剣を交えただけです」
俊が箱の中身が気になって仕方がないようだ。
卵を取り出しては、模様などを眺めている。
「俊ちゃん、良かったらこの子の面倒見てもらえると助かるんだけど、お願い出来ないかな?」
蓮華は俊があまりに興味津々に卵を気にしているのを見て笑顔で言った。
「ほんと?いいの?私育ててみたい」
俊は、少女のようにはしゃいだ顔をした。
時折見せる大人びた表情とは違っていた。
「ありがとう俊ちゃん」
「合点、引き受けた」
俊は親指を立てるとクシャクシャの笑顔で箱を抱え、ナミリアの手を取ると作戦室を出て行った。
そうと決まれば行動に移すのが早いのが俊だ。
「俊ちゃん、卵に関する文献があるから、書庫を探してみて」
麗美が俊を後押しするかのように弾んだ声を掛ける。
「わかりました。ありがとう、麗美さん」
通路から俊の元気な声が戻ってくる。
「んふっ、本当に俊ちゃんて、変わった子ね」
クスリと笑う麗美は、見えなくなった通路に俊の姿を追う。
「蓮華さん、後一つ、疑問があるのだけれど」
麗美は、再び蓮華を見る。
「蜃気楼の影のこと」
「はい」
麗美が知りたがっている疑問に蓮華は知る限り答えるつもりの顔をしている。
「ロムル軍の加勢があったとはいえ、なぜあのまま引き上げたのかしら。いつものあいつらとは違っていたわ」
「そうなんですか?」
「うん、あのサトルと呼ばれていた男。あの男は、部隊のリーダーよ」
ハッとして、顔を上げ麗美を見る蓮華。
「サトル?麗美さんは、あの男の人をご存知なんですか?」
「男の人・・・そう、蓮華さんも何かあのサトルについて知っている事がありそうね。なんでもいいわ。話してもらえる?」
首を振る蓮華は、実は何もサトルのことを知らなかったのだ。というよりも何も覚えていなかった。
「知っている・・・のかもしれません」
「ん?」
「どこかで会っているのだと思います。ただ、それがまったく思い出せないのです」
「そお、でも初対面という風ではないわね」
「はい、知っていた。という方が正しいのかもしれません。何かを思い出しそうになるのですが、何も思い出せなくて・・・」
麗美は、蓮華が嘘を言っているとは思えなかった。あの時、サトルが蓮華に向けていた視線は、男として女を見る目をしていた。
「京介くん」
「はい」
「見張りをお願い出来る?」
「いいっすよ。任せてください。ついでに、先程の戦さ場も見てきますよ」
「そうね、蜃気楼の影が何しに来たのかわかるかもしれないわね。お願い、京介くん」
「任してください」
京介が立ち去り、場の空気を読んだのか弥之助が刀を手に取ると立ち上がった。
「さて、拙者はスグル殿のお側に参ります。これにて失礼」
麗美が、お辞儀をする。
「ご苦労様」
弥之助も作戦室から、出て行くと後には蓮華と麗美二人だけが残された。
作戦室で大きなテーブルを囲んでいる。
麗美、京介、ナミリア、俊、蓮華、弥之助の姿があった。
ハイデルから手渡された木札を手にする麗美。
「すごいわね。これがあれば、大抵の場所には行けてしまうわ」
自由の旗の一員ばかりか、誰もが喉から手が出るほど入手したい代物だ。
「蓮華さん、せっかくの頂き物です。無くさないように気をつけて。身内にも欲しがる輩もいるから」
「はい、気をつけます」
麗美は、木札を蓮華に返すとハイデルとの経緯を蓮華の口から聞かされた。
「ロムル軍ジパン侵攻隊第三隊隊長、ハイデル・ランバルト。そう名乗っていました」
あごをつまむ麗美は、驚きを隠せない。
「ジパン侵攻隊といえば、第一陣のエリート部隊よ。その隊長ともなれば、ロムル国王の信頼も厚いわね」
京介がニヤリとする。
「そんな男に好かれるとは、蓮華ちゃんも隅に置けないね」
「そんなんじゃないです。一度、拳と剣を交えただけです」
俊が箱の中身が気になって仕方がないようだ。
卵を取り出しては、模様などを眺めている。
「俊ちゃん、良かったらこの子の面倒見てもらえると助かるんだけど、お願い出来ないかな?」
蓮華は俊があまりに興味津々に卵を気にしているのを見て笑顔で言った。
「ほんと?いいの?私育ててみたい」
俊は、少女のようにはしゃいだ顔をした。
時折見せる大人びた表情とは違っていた。
「ありがとう俊ちゃん」
「合点、引き受けた」
俊は親指を立てるとクシャクシャの笑顔で箱を抱え、ナミリアの手を取ると作戦室を出て行った。
そうと決まれば行動に移すのが早いのが俊だ。
「俊ちゃん、卵に関する文献があるから、書庫を探してみて」
麗美が俊を後押しするかのように弾んだ声を掛ける。
「わかりました。ありがとう、麗美さん」
通路から俊の元気な声が戻ってくる。
「んふっ、本当に俊ちゃんて、変わった子ね」
クスリと笑う麗美は、見えなくなった通路に俊の姿を追う。
「蓮華さん、後一つ、疑問があるのだけれど」
麗美は、再び蓮華を見る。
「蜃気楼の影のこと」
「はい」
麗美が知りたがっている疑問に蓮華は知る限り答えるつもりの顔をしている。
「ロムル軍の加勢があったとはいえ、なぜあのまま引き上げたのかしら。いつものあいつらとは違っていたわ」
「そうなんですか?」
「うん、あのサトルと呼ばれていた男。あの男は、部隊のリーダーよ」
ハッとして、顔を上げ麗美を見る蓮華。
「サトル?麗美さんは、あの男の人をご存知なんですか?」
「男の人・・・そう、蓮華さんも何かあのサトルについて知っている事がありそうね。なんでもいいわ。話してもらえる?」
首を振る蓮華は、実は何もサトルのことを知らなかったのだ。というよりも何も覚えていなかった。
「知っている・・・のかもしれません」
「ん?」
「どこかで会っているのだと思います。ただ、それがまったく思い出せないのです」
「そお、でも初対面という風ではないわね」
「はい、知っていた。という方が正しいのかもしれません。何かを思い出しそうになるのですが、何も思い出せなくて・・・」
麗美は、蓮華が嘘を言っているとは思えなかった。あの時、サトルが蓮華に向けていた視線は、男として女を見る目をしていた。
「京介くん」
「はい」
「見張りをお願い出来る?」
「いいっすよ。任せてください。ついでに、先程の戦さ場も見てきますよ」
「そうね、蜃気楼の影が何しに来たのかわかるかもしれないわね。お願い、京介くん」
「任してください」
京介が立ち去り、場の空気を読んだのか弥之助が刀を手に取ると立ち上がった。
「さて、拙者はスグル殿のお側に参ります。これにて失礼」
麗美が、お辞儀をする。
「ご苦労様」
弥之助も作戦室から、出て行くと後には蓮華と麗美二人だけが残された。
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