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1 新たな出会い
拙者の名は、忍
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さて、これからが問題だ。
マップにはN県とある、車でも一時間は優にかかる。
どうしたものか、交通機関を使うにせよ、高校生くらいで、そんな大金持ち合わせてるはずもないからだ。
玄関を出ると、行く手を塞ぐように、目の前にランドクルーザーが停まっていた。
ガチャっと、ドアが開くと、サバゲー装備の男が降りてきた。
年齢は三十代くらいで、鍛えられた肉体の持ち主だ。
真希乃、彩花、蓮華は、圧倒される。
玄関の鍵をかけて、出てきた俊。
「急に無理言って、ごめんね。シノ」
サバゲー大男に手を振る俊。
ゴツい顔がデレっとなる。
「俊ちゃんのためなら、えんやこらです。ささっ、御三方は、こちらへ」
俊は知り合いであろう、この大男に、いつの間にか話をつけていた。
察した真希乃
「あ、俺んち目の前だから、荷物取ってきます」
「わかった、一回りしたら、また来るから」
俊が手を振る。
大男は、後部座席のドアを開ける。彩花、そして蓮華と乗り込む。
「お邪魔致します」
一礼して、ニコリとする蓮華。
ドキューン、蓮華のニコリ弾で胸を撃たれ悶絶するサバゲー男。
「なんたる、不覚」
踞るサバゲー男。不意に臀部に激しい痛みを感じ飛び上がる。
「あひゃあ」
「デレデレするな。シノ」
大きなお尻を俊が蹴り上げたから、堪らない。
「あー、ごめんなさい、ごめんなさい」
土下座を始めるサバゲー男。
プイとして、助手席へ乗り込む俊。
「まったく、男ってなんでこうなのかしら」
俊の言葉に、小さくなるサバゲー男。
遠くで、真希乃がくしゃみをしている。
うんうんと彩花
サバゲー男
篠田忍三十五歳独身、自作アプリが人気となり、巨額の富を得て暇を持て余していた。
「シノ、二人のお宅まで、お願い」
「御意」
ランドクルーザーは、大志の家の前を出発。
・・
「真希乃兄ちゃん、お待たせ」
彩花の家、蓮華の家と回って真希乃の家の前に到着。
すっかり、私服に着替えた三人は、ちょっとした旅行気分であった。
「行き先、大丈夫だよね?シノ」
親指を立てる忍。
〈まもなく、ひだりほうこうです〉
ナビの音声が流れて、行き先案内を始めた。
大志への手がかりが見つかって、期待で前屈みになる真希乃。
「すみません、シノさん、お世話になります」
真希乃が頭を下げる。
「気にせんでください。こうして、大勢でドライブなんて、ワクワクします。それに、大志の兄貴のためですから」
ありがと、と俊は忍を見て笑っている。
「喉が渇いたら、後ろのクーラーボックスに飲み物あるから」
知り尽くしている俊。
真希乃がクーラーボックスから、飲み物を取り出し、皆に配る。
彩花が身を乗り出す。
「俊ちゃん、忍さんとはどういう関係?」
「ゲームのフレンドです」
忍が、さらりと言う。
「ゲーム開始からの付き合いだよね」
小さい俊は、シートの上で、あぐらをかいている。
「はい、色んな所連れてってもらいました。スグルから、もらったオオトカゲのスープは、絶品でした」
「いや、味わえないから」
俊が裏拳で、忍の左腕を叩く。
「拙者が小さな女の子キャラで、魔導士やってました。キャラ名は、シノシノ」
「私は、大男のキャラで大剣使いで、スグル」
リアルを象徴するような、キャラだ。
「こんな言い方、誤解しないで聞いてね」
彩花が遠慮がちに
「どうやったら、二人が知り合いに?」
「ああ、俊、シノのこと、女の子だと思ってて、ゲームしながら人生相談してあげてたんです」
「相談に乗ってもらってるうちに、何でも話せるようになりまして、当時、付き合ってた女性に振られたことを、打ち明けたんです」
「最初は驚いたけど、その後は、音声チャットとかする様になって、そんな女なら、逆に捨ててやれって言ってやりました」
「その時は、なんとか吹っ切れたんですが、その後、今度はアプリ制作してる会社をリストラされましてね。さらに落ち込んでたんですよ」
「でもって、直接会って話したいって、電話番号と住所を送って来たりして」
驚いて彩花
「会ったの?」
首を振る俊。
「さすがに、それはね。気が引けちゃって、断ってたんです」
ほっとする三人。
「そのうち、シノ、ゲームに来なくなったんです。何度か、電話してようやく、繋がったんですけど」
俊が続ける。
「もうダメです。今まで、ありがとう。さようならって、電話が切れちゃって」
頭をかく忍を見ながら
「さすがに、居ても立っても居られず、シノの部屋を尋ねました。そしたら、部屋が真っ暗で、嫌な予感がするけど、ドアをなかなか開けれなくて困っていました」
三人が後部座席から、体を乗り出す。
「部屋の中から、うめき声が聞こえたんです。慌ててドアを開けて入ってみると、鴨居からローブが下がってました。その下でシノ、座り込んで泣いてたんです」
「ロープが重みで切れちゃいまして」
照れる忍。
俊が一点を見つめたまま
「死なせてもくれないんだ。俺、どうしたらいいのかな」って、この大きな体で震えながら言うんです」
「・・思わず抱きしめちゃいました」
優しい顔で俊を見る忍。
「スグル、俺を抱きしめながら、こう言ってくれたんです。」
「生きなさいって、神様が言ってるんだよ。って、よく聞くような、ありきたりな言葉だったけど、嬉しかったです」
彩花は、子供のように、声を出して泣き出した。いい話だった。
蓮華は、スッと指先で涙を拭っている。
真希乃は、嗚咽して声にならない。
忍は、前を見たまま
「俊ちゃんは、俺にとって天使なんです。だから、これからは、俺がこの天使を守るんだって、決めたんです。それが、生きがいなんです」
忍の太い腕にしがみつく俊。
側から見たら、親子にしか見えない二人だったが、恋愛感情とも違う、別の愛に溢れていた。
真希乃は、少し安心した。大志がいなくなって、気がかりだった事が、一つ解消したように思えた。
音声ナビが流れる
〈まもなく、もくてきちふきんです〉
マップにはN県とある、車でも一時間は優にかかる。
どうしたものか、交通機関を使うにせよ、高校生くらいで、そんな大金持ち合わせてるはずもないからだ。
玄関を出ると、行く手を塞ぐように、目の前にランドクルーザーが停まっていた。
ガチャっと、ドアが開くと、サバゲー装備の男が降りてきた。
年齢は三十代くらいで、鍛えられた肉体の持ち主だ。
真希乃、彩花、蓮華は、圧倒される。
玄関の鍵をかけて、出てきた俊。
「急に無理言って、ごめんね。シノ」
サバゲー大男に手を振る俊。
ゴツい顔がデレっとなる。
「俊ちゃんのためなら、えんやこらです。ささっ、御三方は、こちらへ」
俊は知り合いであろう、この大男に、いつの間にか話をつけていた。
察した真希乃
「あ、俺んち目の前だから、荷物取ってきます」
「わかった、一回りしたら、また来るから」
俊が手を振る。
大男は、後部座席のドアを開ける。彩花、そして蓮華と乗り込む。
「お邪魔致します」
一礼して、ニコリとする蓮華。
ドキューン、蓮華のニコリ弾で胸を撃たれ悶絶するサバゲー男。
「なんたる、不覚」
踞るサバゲー男。不意に臀部に激しい痛みを感じ飛び上がる。
「あひゃあ」
「デレデレするな。シノ」
大きなお尻を俊が蹴り上げたから、堪らない。
「あー、ごめんなさい、ごめんなさい」
土下座を始めるサバゲー男。
プイとして、助手席へ乗り込む俊。
「まったく、男ってなんでこうなのかしら」
俊の言葉に、小さくなるサバゲー男。
遠くで、真希乃がくしゃみをしている。
うんうんと彩花
サバゲー男
篠田忍三十五歳独身、自作アプリが人気となり、巨額の富を得て暇を持て余していた。
「シノ、二人のお宅まで、お願い」
「御意」
ランドクルーザーは、大志の家の前を出発。
・・
「真希乃兄ちゃん、お待たせ」
彩花の家、蓮華の家と回って真希乃の家の前に到着。
すっかり、私服に着替えた三人は、ちょっとした旅行気分であった。
「行き先、大丈夫だよね?シノ」
親指を立てる忍。
〈まもなく、ひだりほうこうです〉
ナビの音声が流れて、行き先案内を始めた。
大志への手がかりが見つかって、期待で前屈みになる真希乃。
「すみません、シノさん、お世話になります」
真希乃が頭を下げる。
「気にせんでください。こうして、大勢でドライブなんて、ワクワクします。それに、大志の兄貴のためですから」
ありがと、と俊は忍を見て笑っている。
「喉が渇いたら、後ろのクーラーボックスに飲み物あるから」
知り尽くしている俊。
真希乃がクーラーボックスから、飲み物を取り出し、皆に配る。
彩花が身を乗り出す。
「俊ちゃん、忍さんとはどういう関係?」
「ゲームのフレンドです」
忍が、さらりと言う。
「ゲーム開始からの付き合いだよね」
小さい俊は、シートの上で、あぐらをかいている。
「はい、色んな所連れてってもらいました。スグルから、もらったオオトカゲのスープは、絶品でした」
「いや、味わえないから」
俊が裏拳で、忍の左腕を叩く。
「拙者が小さな女の子キャラで、魔導士やってました。キャラ名は、シノシノ」
「私は、大男のキャラで大剣使いで、スグル」
リアルを象徴するような、キャラだ。
「こんな言い方、誤解しないで聞いてね」
彩花が遠慮がちに
「どうやったら、二人が知り合いに?」
「ああ、俊、シノのこと、女の子だと思ってて、ゲームしながら人生相談してあげてたんです」
「相談に乗ってもらってるうちに、何でも話せるようになりまして、当時、付き合ってた女性に振られたことを、打ち明けたんです」
「最初は驚いたけど、その後は、音声チャットとかする様になって、そんな女なら、逆に捨ててやれって言ってやりました」
「その時は、なんとか吹っ切れたんですが、その後、今度はアプリ制作してる会社をリストラされましてね。さらに落ち込んでたんですよ」
「でもって、直接会って話したいって、電話番号と住所を送って来たりして」
驚いて彩花
「会ったの?」
首を振る俊。
「さすがに、それはね。気が引けちゃって、断ってたんです」
ほっとする三人。
「そのうち、シノ、ゲームに来なくなったんです。何度か、電話してようやく、繋がったんですけど」
俊が続ける。
「もうダメです。今まで、ありがとう。さようならって、電話が切れちゃって」
頭をかく忍を見ながら
「さすがに、居ても立っても居られず、シノの部屋を尋ねました。そしたら、部屋が真っ暗で、嫌な予感がするけど、ドアをなかなか開けれなくて困っていました」
三人が後部座席から、体を乗り出す。
「部屋の中から、うめき声が聞こえたんです。慌ててドアを開けて入ってみると、鴨居からローブが下がってました。その下でシノ、座り込んで泣いてたんです」
「ロープが重みで切れちゃいまして」
照れる忍。
俊が一点を見つめたまま
「死なせてもくれないんだ。俺、どうしたらいいのかな」って、この大きな体で震えながら言うんです」
「・・思わず抱きしめちゃいました」
優しい顔で俊を見る忍。
「スグル、俺を抱きしめながら、こう言ってくれたんです。」
「生きなさいって、神様が言ってるんだよ。って、よく聞くような、ありきたりな言葉だったけど、嬉しかったです」
彩花は、子供のように、声を出して泣き出した。いい話だった。
蓮華は、スッと指先で涙を拭っている。
真希乃は、嗚咽して声にならない。
忍は、前を見たまま
「俊ちゃんは、俺にとって天使なんです。だから、これからは、俺がこの天使を守るんだって、決めたんです。それが、生きがいなんです」
忍の太い腕にしがみつく俊。
側から見たら、親子にしか見えない二人だったが、恋愛感情とも違う、別の愛に溢れていた。
真希乃は、少し安心した。大志がいなくなって、気がかりだった事が、一つ解消したように思えた。
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