小突いて候。

貴林

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第二話

白馬の王子

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次の日、水菜の通う高校の教室。
「水菜、何か、面白いことない?」
親友の奈良美優留ならみゆるが、近づいてきた。
水菜は、口元に指を置いて考える。
「あ、あったよ、二本足で立つ猫にあった」
「おお、よく動画で見るやつだね」
首を傾げる水菜。
「あれとは、ちょっと違うかな。おまけに、話すし」
「は?話す?」
聞き間違いかと思う美優留。
「うん」
「猫が?」
「そう」
お腹を抱える美優留。
「あはははは、そんなわけないじゃん」
「ほんとなんだってば」
「水菜、ウケる」
「あ、だったらさ」
涙目を拭きながら美優留。
「だったら?」
「放課後付き合ってよ」
「いいけど、何するの?」
得意気な顔をする水菜。
「ふふん」

        ・・

昨日の、川辺に来ている二人。
「こんなとこ来て、何するの?」
「いいからいいから」
スマホのストラップに、昨日の小槌がぶら下がっていた。
それを、指でつまむ水菜。
「念のため、手を繋いで?」
渋々、手を差し出す美優留。
「あらたまると、変な感じね」
照れ臭そうに、水菜の手を取る美優留。
「じゃ、行くよ」
「ええ?」
「打出小槌よ。昨日のココに、私と美優留を連れて行って」
シャンシャンと小槌を振る。
ボワンと、煙が立つと、消えてしまった。

        ・・

昨日、なめろうと別れた川辺に来ている。
美優留が目を丸くする。
「ど、どこよ、ここ?」
「んとね、ここはココでしょ。あっちはコッチで。こっちはアッチ」
「は?」
首を傾げる美優留。
「何言ってんの?水菜。おかしくなった?」
美優留は、頭のそばで、指でクルクルと回してみせた。
「いいから、いいから。美優留、普段から白馬の王子様に会いたいって、言ってたよね?」
「まあね」
「ここからが、本番よ。見ててね」
「打出小槌よ。白馬の王子様を今すぐ出して」
シャンシャンと小槌を振る。
ボワンと、現れたのは
ヒヒヒヒヒンと、前脚を高く掲げ、全身を白い毛で覆われた。美しいちっちゃな馬が現れた。
それを見た美優留。
「かわいい。でも、王子様は?」
困り果てる水菜。
「あ、いや、こんなはずじゃ。どうなってるの?白馬の王子様って、お願いしたのに」
すると、ちっちゃな馬は、口を開いた。
「この私が、白馬の王子様だ」
「へっ?」
水菜と美優留は、口を揃え白馬を見る。
「いや、だって、王子様いないし」
ヒヒンと鳴くと
「ここに、いるではないか」
「白い馬の王子様、すなわち、白馬の中の王子様ってことだな」
「ああ?なるほど」
「それとな、もう一つ、付け加えるとだな」
「私は、白馬王子ではない」
「なんと?」
「わたしの名は、臼馬玉子うすばたまこである」
美優留は、ぷっと吹き出す。
臼毛うすげ玉子?臼毛だって・・・」
はっと、ため息を吐き捨てる玉子。
「どこにでもいるんだよね、必ず、と言ってるのに、わざとって言う奴が。あれは確か、始業式での自己紹介だったな、私がうすばと言ってるのに、わざとうすげ?て言う奴が・・・それから、あれは・・・」
ぶつぶつといつまでも、話が止まらない様子なので、水菜と
美優留は、その場を離れようとした。
「ちょっとちょっと、俺のこと呼んでおいて、そのまま放置か?」
「て言われてもね。いったいどうしたら?」
「決まってんだろ?俺も、連れて行け。お供に」
「お供って、何よ?鬼退治でもするつもり?」
「おお、そんなのでも、いいぞ」
「ていうか、玉子さん?あなた自分の大きさわかって、お供とか言ってます?」
「何?大きさ?」
「そうそう」
玉子は、自分の体を見る。
「そんなもの、小槌があるだろ?」
「あっ!」
水菜と美優留は、顔を見合わせる。
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