僕とお前のヤバい関係〜入れてくれないなら、入れてやる

貴林

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第七話

脇をツンツンされても

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チャイムが鳴って、昼の合図を告げている。
礁がやってきて、隣の椅子を持ってくると背もたれを抱えて座る。
「峡、今日飯は?」
「ああ、今朝は母さん早番でさ。弁当ないんだよ」
「ええ、買いに行くなら早く行かないと無くなっちまうぜ?」
「あ、いけね。そうだった」
ほらっと、礁がパンの入った袋を机に置いた。
 え?
「そんなことだろうと思ってさ。お前のも買っといた」
「うわ、マジか。助かる~」
礁は、俺の肩に腕を回し羽交い締めにしてくる。
「割り増しな」
言うと、手のひらを目の前にかざす。
「ええ?抜け目ねえな。わかったよ、いくら?」
「そうだな、締めて400円だな」
「は?それって、定価じゃん」
「不服か?」
「いや、それで結構で御座います」
「毎度」
こんなやりとりが、ただ楽しくて笑ってしまう。
そこに、要がニコニコしながら近づいてきた。
「ほんと、二人いつ見ても仲良いよね」
それに答える礁。
「羨ましいだろ?」
「そうね、私が男だったらね、あいにく女なので、わかりません」
こんな二人のやりとり、ヘラヘラした顔で見ているであろう僕。
こういう時の礁が、羨ましい。
「要、飯は?」
「お弁当」
布に包まれた手作り弁当を持ち上げてみせる。
「たまには、三人でどお?」
礁が気を効かせる。
「うん、そう思ってきたの」
(おっ!)
「やっぱ、屋上か?」
「だね」
ニコリとする要。
立ち上がると、要を挟んで歩き始める。
「ところでさ、今朝、何話してたの?」
不意に要が、礁と僕を交互に見ながら質問を投げかけてきた。
ドキッとする僕。どうしよう、やっぱ朝の会話、聞かれてた?
その質問には礁が答えてくれた。
「峡ね、好きな子がいるんだと」
口元に軽く握った手を当てる要。
「え?誰よ、それ。気になるんだけど」
二人の視線が僕に向けられる。
(ヤバいヤバいヤバい。どうしよう)
「それがね、ハッキリ教えてくれないんだよ、こいつ」
「なにそれ?好きな子がいるなら、言っちゃえばいいのに」
(そう簡単じゃないので悩んでます)
「だろ?普通、思うよね?」
「まあ、結果はどうあれ、言わないことにはね」
「もしさ、要?」
礁が何かをやらかそうとしている。
礁が要を覗き込む。
「もしさ、仮の話なんだけど」 
「うん」
「峡が要のこと、好きだって言ったらどうよ?」
(ええ?それ聞いちゃう?)
「う~ん、そうだな」
考えている要。
僕は、ドキドキしていた。
「そうだな、悪い気はしないかな」
(ほおほお)
「で?」
「で?って、ん~、難しいな」
固唾を飲む僕。
「峡くん、悪く取らないでね。昔からよく知ってるせいか、恋愛の対象にはならない気がする」
ガビーン!そのまま、硬直する僕。
(終わったな、これ)
その様子を見た礁が、
「でも、一緒にいるのは嫌いじゃないしょ?」
クスッと笑う要。
「まあね、嫌いだったら、今ここにいないよ」
脇をツンツンしてくる礁。
(なんのツンツンだよ。それ)
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