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第二章 サザンソルト国
第十六話 出帆
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タクトが何やら、厨房近くの何もない植え込みで、土いじりをしている。
「タクト、なにしてんの?ほら、行っちゃうよ」
マリカが、はやし立てる。
「待って、すぐに終わるから」
掘った穴に、サマナからもらった葉っぱの包みを広げ木の実を取り出すと掘った穴に落とすタクト。
そっと土をかけると
[フーロシオン]
言葉を唱えるタクト。
「よし、行くか」
立ち上がり、馬車に駆け寄るタクト。
「何やってたのよ。遅いよ。タクト」
「わりい、わりい」
何か、期待に胸を膨らせているようだ。
馬車に乗り込んだ一行は、城壁を出ると港町の中を進んでいた。
朝早いと言うのに、活気に溢れている。
魚などが水揚げされ、塩の匂いが一層強くなっている。
船着き場には、帆船がズラリと並んでいて、それを横目に進んでいく馬車。
奥の数段の階段を登った先に一際大きなさらに豪華や帆船が停泊していた。
水龍を象った船首が、航海の安全を保障しているかのようだ。
すでに、王たちが見送りに来ている。
シリアとランテスも、旅姿で待っている。
そこにタルーシャの姿はなかった。
「おはようございます。ギムネラ王」
ナルセが深くお辞儀をする。それに合わせる一行。
「うむ、待っておったぞ。ナルセ殿」
王は、シリアの代わりを務める側近に、あれをと合図を送る。
「こちらをお納め下さい」
ゴロゴロしたものが入った巾着を受け取るナルセ。開けて中を見ると、何かの鉱石が入っていた。
「これは?」
「ドラゴニウムです。ドラゴンの糞の化石から採れる鉱石」
「これを、どうすれば?」
「換金してください。ノースウォーターでしたら、5000万にはなると思います」
「5000万?そんなに?」
「はい、とても希少なものですから」
うずらの卵程の大きさのものが、10個は入っている。その1個が500万ということになる。
シリアは、更にもう一袋の巾着を差し出してきた。
「こちらは、ヤグスラ王に献上して下さい」
「わ、わかりました。お預かり致します」
タクトが堪えかねて身を乗り出す。
「あ、あの?タル。タルーシャ王女は、どこにいるんですか?」
あごをつまむギムネラ王。
「それがの、朝から見当たらんのだよ。まったくもって、どこへ行ってしまったのか。まったく、仕方のない」
「きっと、お辛いのでしょう。お別れをするのが」
う~ん、と唸るギムネラ王。
(少し厳しすぎたか)
兵士の一人が駆け寄ってくる。
「出立の用意が整いました」
「お、そうか、いよいよだな」
「ギムネラ王、大変お世話になりました」
ナルセがお辞儀をする。
「何も何も、無事に戻ったら旅の話でも聞かせてくれんかの?」
「はい、必ず帰って来て報告いたします」
タクトがギムネラに近づく。
「王様、厨房の前に種を植えました。育ちましたら、葉を充分に乾燥させよく揉み煎じてお飲み下さい」
「ほう、茶を?それは、楽しみだの」
「あと、実がなりますので調理にお使い下さい」
ナップルがそれに答える。
「承知しましたぞ、タクト殿」
「ありがとう、ナップルさん。戻ったらまた、チョコローテ食べさせて下さいね」
「わかり申した。良ければ一緒にデザートを作りましょう」
「はい、喜んで」
ギムネラ王は、サユミを見る。
「良い旅をの」
「はい、ありがとうございました」
周囲を気にして、辺りを見回すがやはりタルーシャの姿はどこにもなかった。
「タルに、よろしくお伝え下さい」
言うと、ギムネラに抱きつくサユミ。
それに応えて抱きしめるギムネラは、サユミの耳元で囁く。
「サユミ殿、タルをよろしく頼みましたぞ」
「え?」
意味がよくわからなかった。
「ナルセ殿、ヤグスラ殿に、こうお伝えて下され」
「はい、どのように?」
「シングウの誓い」
「シングウの誓い?」
「そうじゃ、そういえばわかる」
「はい、承知しました。では、行ってまいります」
皆が帆船に乗り込むと、渡し板が外される。
ゆっくりと離れていく帆船。
甲板から、皆が手を振る。
「さよなら~」
「行ってきます」
ナルセが、ハヤネが、タクトが、マリカが、そしてサユミが手を振っている
「タル。いつか、また会おうね」
と、不意に横に誰かが立つ。
「お爺様~、ごめんなさ~い」
大きく手を振るタルーシャ。
「え?タル?」
「どうしても、我慢出来なくて」
片目を閉じて、舌を出すタルーシャ。
「タル!」
思わず抱き締めているサユミ。
互いに手を取り握り合うと、大きく手を振る。
「行って参りま~す」
皆が、タルーシャの周りに集まる。
六人が揃って甲板に並ぶ。
遠く小さくなるギムネラ王。
「行って参ります。お爺様」
追い風に乗り、遠退いていく帆船。
引いては寄せる波の音だけが、そこに残っている。
ギムネラは、遠く見えなくなった帆船を見る。
「誰に似たのかのぉ」
ため息をつき、ニコリとするギムネラ。
「タクト、なにしてんの?ほら、行っちゃうよ」
マリカが、はやし立てる。
「待って、すぐに終わるから」
掘った穴に、サマナからもらった葉っぱの包みを広げ木の実を取り出すと掘った穴に落とすタクト。
そっと土をかけると
[フーロシオン]
言葉を唱えるタクト。
「よし、行くか」
立ち上がり、馬車に駆け寄るタクト。
「何やってたのよ。遅いよ。タクト」
「わりい、わりい」
何か、期待に胸を膨らせているようだ。
馬車に乗り込んだ一行は、城壁を出ると港町の中を進んでいた。
朝早いと言うのに、活気に溢れている。
魚などが水揚げされ、塩の匂いが一層強くなっている。
船着き場には、帆船がズラリと並んでいて、それを横目に進んでいく馬車。
奥の数段の階段を登った先に一際大きなさらに豪華や帆船が停泊していた。
水龍を象った船首が、航海の安全を保障しているかのようだ。
すでに、王たちが見送りに来ている。
シリアとランテスも、旅姿で待っている。
そこにタルーシャの姿はなかった。
「おはようございます。ギムネラ王」
ナルセが深くお辞儀をする。それに合わせる一行。
「うむ、待っておったぞ。ナルセ殿」
王は、シリアの代わりを務める側近に、あれをと合図を送る。
「こちらをお納め下さい」
ゴロゴロしたものが入った巾着を受け取るナルセ。開けて中を見ると、何かの鉱石が入っていた。
「これは?」
「ドラゴニウムです。ドラゴンの糞の化石から採れる鉱石」
「これを、どうすれば?」
「換金してください。ノースウォーターでしたら、5000万にはなると思います」
「5000万?そんなに?」
「はい、とても希少なものですから」
うずらの卵程の大きさのものが、10個は入っている。その1個が500万ということになる。
シリアは、更にもう一袋の巾着を差し出してきた。
「こちらは、ヤグスラ王に献上して下さい」
「わ、わかりました。お預かり致します」
タクトが堪えかねて身を乗り出す。
「あ、あの?タル。タルーシャ王女は、どこにいるんですか?」
あごをつまむギムネラ王。
「それがの、朝から見当たらんのだよ。まったくもって、どこへ行ってしまったのか。まったく、仕方のない」
「きっと、お辛いのでしょう。お別れをするのが」
う~ん、と唸るギムネラ王。
(少し厳しすぎたか)
兵士の一人が駆け寄ってくる。
「出立の用意が整いました」
「お、そうか、いよいよだな」
「ギムネラ王、大変お世話になりました」
ナルセがお辞儀をする。
「何も何も、無事に戻ったら旅の話でも聞かせてくれんかの?」
「はい、必ず帰って来て報告いたします」
タクトがギムネラに近づく。
「王様、厨房の前に種を植えました。育ちましたら、葉を充分に乾燥させよく揉み煎じてお飲み下さい」
「ほう、茶を?それは、楽しみだの」
「あと、実がなりますので調理にお使い下さい」
ナップルがそれに答える。
「承知しましたぞ、タクト殿」
「ありがとう、ナップルさん。戻ったらまた、チョコローテ食べさせて下さいね」
「わかり申した。良ければ一緒にデザートを作りましょう」
「はい、喜んで」
ギムネラ王は、サユミを見る。
「良い旅をの」
「はい、ありがとうございました」
周囲を気にして、辺りを見回すがやはりタルーシャの姿はどこにもなかった。
「タルに、よろしくお伝え下さい」
言うと、ギムネラに抱きつくサユミ。
それに応えて抱きしめるギムネラは、サユミの耳元で囁く。
「サユミ殿、タルをよろしく頼みましたぞ」
「え?」
意味がよくわからなかった。
「ナルセ殿、ヤグスラ殿に、こうお伝えて下され」
「はい、どのように?」
「シングウの誓い」
「シングウの誓い?」
「そうじゃ、そういえばわかる」
「はい、承知しました。では、行ってまいります」
皆が帆船に乗り込むと、渡し板が外される。
ゆっくりと離れていく帆船。
甲板から、皆が手を振る。
「さよなら~」
「行ってきます」
ナルセが、ハヤネが、タクトが、マリカが、そしてサユミが手を振っている
「タル。いつか、また会おうね」
と、不意に横に誰かが立つ。
「お爺様~、ごめんなさ~い」
大きく手を振るタルーシャ。
「え?タル?」
「どうしても、我慢出来なくて」
片目を閉じて、舌を出すタルーシャ。
「タル!」
思わず抱き締めているサユミ。
互いに手を取り握り合うと、大きく手を振る。
「行って参りま~す」
皆が、タルーシャの周りに集まる。
六人が揃って甲板に並ぶ。
遠く小さくなるギムネラ王。
「行って参ります。お爺様」
追い風に乗り、遠退いていく帆船。
引いては寄せる波の音だけが、そこに残っている。
ギムネラは、遠く見えなくなった帆船を見る。
「誰に似たのかのぉ」
ため息をつき、ニコリとするギムネラ。
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