輝く草原を舞う葉の如く

貴林

文字の大きさ
上 下
9 / 25
第二章 サザンソルト国

第三話 小屋の中

しおりを挟む
お爺さんに連れられて、恐る恐る家の中に案内されたサユミたち。
一つ部屋の大きなスペースに、台所、ベッド、食卓に六脚の椅子、暖炉の前の長椅子が二つ、お爺さん用にロッキングチェアが置かれている。
お爺さんは、暖炉からやかんを取ると、ティーポットにお湯を注ぐ。
茶のいい香りが立ち込める。
「まあ、座って楽にしなさい」
五つのカップに茶を注ぐお爺さん。
テーブルの周りに五人が腰をかける。
頂きますと、それぞれがカップを口にする。
甘い花の香りが鼻に残り、なんとも言えない後味を残した。
タクトが感心する。
「うんま、こんなの初めてだ」
お爺さんが目を細める。
「それは、何よりじゃ」
皆も、美味しかったのか、一気に飲み干してしまった。
サユミの横に前脚に顔を埋める犬がいる。そんな犬の頭を撫でるサユミ。
「君、お名前は?」
お爺さんが答える。
「ルーサーじゃよ」
サユミは、お爺さんを見るとルーサーに視線を戻した。
「そう、君ルーサーって言うんだ。よろしくね、ルーサー」
クゥンと声を出すルーサー。
お爺さんが、立ち上がり窓の外を伺っている。
「しかし、遅いのぉ」
サユミが立ち上がりお爺さんの横に立つ。
「どうしたんですか?どなたかいらっしゃるんですか?」
「うむ、孫が遊びに来とるんじゃが、どうも帰りが遅くての。近くの川原に行っとるはずだが。警護の者たちを付けておるから平気だとは思うがの」
「私、見てきましょうか?」
「おお、そうしてもらえるかい?」
「はい」
言うとドアから飛び出していった。
その後を追うように出て行くマリカのタクト。
心配そうなお爺さんを見てハヤネが
「この辺りは、危険があるんですか?」
「うむ、そろそろ、ウッドウルフが徘徊を始める頃なんじゃ」
外は陽が傾き始めている。
何やら、不穏を感じてハヤネとナルセも飛び出して行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫を愛することはやめました。

杉本凪咲
恋愛
私はただ夫に好かれたかった。毎日多くの時間をかけて丹念に化粧を施し、豊富な教養も身につけた。しかし夫は私を愛することはなく、別の女性へと愛を向けた。夫と彼女の不倫現場を目撃した時、私は強いショックを受けて、自分が隣国の王女であった時の記憶が蘇る。それを知った夫は手のひらを返したように愛を囁くが、もう既に彼への愛は尽きていた。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

小突いて候。

貴林
ファンタジー
駿美水菜、異世界に憧れる高校生。 ある日、川で溺れる子猫を助けた時、見知らぬ世界に迷い込んだ水菜。 助けた子猫に望みを一つ叶えると言われ、打出小槌をもらうことに。そこから水菜の物語が始まる。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

処理中です...