輝く草原を舞う葉の如く

貴林

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第一章 五大元素の術

第四話 学場に迫る暗雲

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暗雲は、サユミのいる学場にも迫っていた。
先生たちが元素術を使って、それを食い止めようとするがまるで歯が立たなかった。
防壁のための土の壁はボロボロと崩れる。風を使い雲をかき消すも、すぐに雲が広がってしまう。
たちまち先生たちも、雲霧うんむに飲まれ見えなくなった。

サユミは、変わらず発作を起こしている。
マリカが、サユミを支える。
タクトが雲霧に土を使った術で応戦する。一時凌ぎだが、時間稼ぎにはなっている。だが、このままではいずれ。
そこへ、ハヤネとナルセも駆けつけてきた。
「もう逃げ場がないぞ」
水柱を作っては、雲霧を遮るナルセ。
「サユミは、どうしたの?」
ハヤネも、気圧を上げ、追いやろうとするがあまり効果はなかった。自然のものなら、効果もあるだろうが。
まるで生き物のようなそれには効果がなかったのだ。
「耳鳴りがするとかって、急に痙攣を起こしちゃって」
ハヤネがサユミを見て
「体内の内気圧が、かなり上がってるようだけど」
マリカが、首を傾げる。
「内気圧?」
ハヤネが、風に流される髪を抑えながら
「この風って、サユミが起こしてないかな?」
マリカも、流れる髪を手で抑える。
「どうして?」
「サユミをよく見て」
マリカはサユミを見る。
サユミの着ている服が内側からの風力ではためいていた。
「ほんとだ。で、これが何かあるの?」
「わからないけど、内気圧が上昇してるところを、抑え込んで一気に放出したらどうなるかなっと、思ったの」
マリカが、笑う。
「なんだか、面白そうだけど、危険な感じもするね」
「何もしないよりはマシよ。ナルセ、タクト。手伝って」
タクトが土の壁を作っては雲霧の進行を遅らせている。
「何する気?」
「タクト、あなたは、ここの窓から屋上に向かって土で道を作って」
「ん?ああ、わかった」
「マリカ、爆発的に噴射とかって出来るかな?」
「爆発か、ガスみたいなものがあれば、なんとか」
「ガスか・・・」
タクトが土の道を作ると、滑り降りてきた。
「螺旋状に道作ったぞ」
「ありがとう。タクト、もう一つお願い。ガスを作れる?」
「ガス?やったことないけど、地中に含まれてるなら出すくらいなら」
「いいわ、すぐにやって」
頭を掻くタクト。
「忙しいなぁ、ったく。了解」
窓から、土の坂道を作ると滑り降りていくタクト。
「ナルセ、タクトが作った道に水流をお願い。私が真空でサユミを取り込むからうまく屋上まで導いてほしいの」
「了解」
そこに、タクトが戻ってきた。
大玉の土の塊を、宙に浮かべながら運んできた。
「ガス出た。でも、このままじゃ漏れてなくなるよ」
ハヤネが、手を差し出す。
「タクト、ガスを」
土を取り除くとゆらゆらと大気が歪んでいる。それをハヤネが、高圧で球状にして受け止めるギュッと小さく圧縮させるとボールのような液体の塊になった。
皆に声をかけるハヤネ。
「いい?いくわよ」
高圧のガス玉をマリカのに前に放る、これをマリカが発火させ噴射。
真空の玉の中にいるハヤネ、サユミ、マリカをナルセが水流を操作して土の道を走らせる。
ズバーーー
道を滑り上がる真空玉。
屋上に飛び出す三人。
一度、真空を切るハヤネ。
屋上で、息を整えるサユミ、ハヤネ、マリカの三人。
「サユミ、お願い力を貸して」
ハヤネは、再びサユミを高圧の玉にして包み込み、出来るだけ高い位置に移動させる。
「マリカ、炎でサユミの周りを温めて」
「タクトたちは、衝撃に備えて障壁を」
サユミは、白目を剥き上昇する内気圧を外に放出している。
それを抑え込むハヤネ。
「さらに圧縮するよ」
ただでさえ、高圧状態のところを圧縮するのだから、ハヤネにはかなりの負担であった。
高圧で圧縮されるサユミにも相当の負荷が掛かっているにも関わらず反発は強くなっている。
「これ以上は、抑えてられない・・そろそろ、行くわよ」
「いつでもいいよ」
「いい? 三、二、一、解放」
サユミから放出されていた内気圧が超高気圧となって圧縮されていたものが、一気に解放された。
ズボーーン
凄まじい勢いだ。球状の波紋が衝撃波となって空間を歪めていく。
屋上の床面がズシンと沈む。
タクトが作った土の壁で、皆が衝撃波に耐えている。
サッと雲霧が、吹き飛ばされる。
その波紋は、一気に広がり、その力はすごいものだった。
木々が押し倒され民家の屋根が吹き飛び、地を歩くゴーストウォーカーも打ち消し、そればかりか、ネルスニア大陸全土の暗雲が一瞬にして取り除かれたのだ。
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