輝く草原を舞う葉の如く

貴林

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第一章 五大元素の術

第二話 サユミと仲間たち

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五大元素修練学場 
学場に到着したサユミとマリカは、それぞれの席に着くとカバンを机の横に掛けている。
「マリカ。次はオペ何するか決めた?」
感動冷めやらぬマリカは、滑空してきたことが嬉しすぎた。
「風、最高!サユミは?」
サユミは、あごをつまみ、考え込んだ。
「ん~、それなんだよね。まだ、決めかねてる」
マリカは、悩むサユミを覗き込んで
「じゃあさ、火にすれば?私と同じになるよ」
「それも、気になるけど。やっぱ、空を飛べたら、次は・・・」
「次は?」
空を仰ぎ高く飛ぶ鳥を見るサユミ。
「〈空〉もいいかなって」

[ヴァヴァンダー]
サユミの足元に呪文がかかる。
ブアッと、スカートがめくれる。
反射的に、それを抑えるサユミ。
がショートパンツを履いていたので、平気だった。
「ちぇっ、つまんねえの」
タクト・ヤトラング 土使いソイルオペレーションの男の子で、サユミとは幼馴染であった。
「ふふん、毎度、その手にかかりませんよぉだ」
指を右目に当て、べえ~ とするサユミ。
「卑怯だよな。この頃の女子はさ」
「昔だって、ブルマ履いてました。今時、ショートパンツとか履かないのは、ハヤネくらいだよ」
あっと、口を手で塞ぐと、しまったとサユミは思った。
あっと、何かに気がついたタクトは、唇を舐める。
ちょうど、そこへ、その噂のハヤネがやってきた。
ハヤネ・ユミスルカ 空使いエアオペレーションで、ファイアオペレーション火使いも修得しようと試験勉強中の優等生である。
「確かに、言われてみれば」
タクトは、しめしめとばかりハヤネを見る。
[ヴァヴァンダー]
ハヤネの足元に呪文をかける。
ブアッと、スカートがめくれ、ピンク色の肌着がむき出しとなった。
慌てるでなく、さらりと手でスカートを抑えるハヤネだったが、ほのかに頬を赤らめている。
「キャハハハハ、やったね。大成功」
イタズラ成功にはしゃぐタクトに、サユミが腕まくりをしながら、ズカズカと歩み寄る。
「コラ、タクト」
そんなサユミの背後から、ハヤネがささやいた。
[シューニィスターン]
サユミが、今にもタクトに殴りかかろうとしている。
「タクト~いいかげんに、し・・・」
サユミは、タクトが喉元を抑えて苦しんでいるのに気がついた。
ハヤネがタクトを涼しい顔で見ている。
「お返しです。五秒ほど真空を味わってください」
タクトの顔全体を真空状態にしたハヤネは、物静かにタクトを見下ろしている。
息が出来ず、ジタバタしているタクト。
ハヤネを怒らせると怖いことを、皆が再認識していた。
サユミに近づくハヤネ。
「ありがとう、サユミ」
ふっと、微笑むハヤネ。
言葉の出ないサユミは、うんうんとうなずくであった。
ゲホゲホと床に手をつくタクトの肩を叩くナルセ・タグステン 水使いウォーターオペレーション
「タクト、いつまでもお子ちゃまみたいなことしてるから、そうなるのさ」
肩に乗せられた振り解くタクト。
「けっ、お前だってついこの間までやってたじゃんか」
「無駄な抵抗は、しないことにしたのさ。それより、頭を冷やせよ」
[ナハーナ]
ナルセは、タクトに向かって手をかざす。
バシャァっと、水を浴びるタクト。
全身がぐっしょりになる。
「て、てめえ、何しやがる」
立ち去りながら、手を振るナルセ。
「あとは、マリカとサユミに頼めよ」
渋々、サユミとマリカが呪文を唱える。
マリカが口を開く。
[ニシャーナサーデン]
続いてサユミ。
[ブローア]
マリカが火を起こすとサユミが風を送った。いわゆるドライヤーの役目である。
タクトが、文句を言う。
「これじゃ、いつまでも乾かないよ」
遠くでハヤネが呪文を唱える。
[シューニィスターン]
タクトの全身が真空状態に。
水分が水玉となって周りに浮いた。
ハヤネは、それを見ると真空状態を取り払った。
スパンと、水滴が飛び散る。
微かに濡れているが、ほとんどの水分は取り除かれている。
「さすが、ハヤネ」
ナルセは、ふふっと笑うと素知らぬ顔で場舎へと入って行った。
なんとも、サユミ、マリカ、タクトの三人は間が抜けている。
ハヤネとナルセのクールさが、三人は気に入らなかった。いつものことなのだが

サユミにとっては、今日は最大の試練となる日であった。
サユミ以外は、オペレーションの試験に合格していた。サユミは、いわゆる 落ちこぼれ であった。
試験に受かれば、心置きなくオペレーションの呪文が使えるのであった。

午後になれば、試験時間開始となる。
今度こそはと、気合の入るサユミであった。
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