19 / 25
第二章 サザンソルト国
第十三話 王の間
しおりを挟む
豪華な夕食を済ませ、来賓用の部屋に戻ったサユミたち。
マリカが興奮している。
「今日は、一日楽しかったぁ。あ、これ、みんなに」
テーブルに籠を置くマリカ。
「同じものだけど、それぞれに名を彫っておいたわ」
見ると鋼製のリストバンドであった。
「元素力を増幅すると言われるドラゴニウム鉱石から抽出したものを練り込んであるの」
タクトがリストバンドを装着して感心して見ている。
「へえ、マリカがねえ」
「そんなこと言うんなら、返してよ」
「ダメだよ。もらったものは返さないよ」
タクトが、舌を出してベエとする。
口をへの字にするマリカ。
コンコン、扉を叩く音。
ハヤネが、はい と答える。
ガチャリと、扉が開き執事が入ってくる。
「失礼致します。国王並び王女が王の間にて、お待ちで御座います。お話があるとのことで、お急ぎお越しになるようにと」
「なんだろう?急ぎって」
サユミがやや不安そうな顔をする。
「とにかく、行ってみればわかるよ」
ナルセが立ち上がり皆を促す。
「王の間って?」
タクトが口にするのを執事が聞いていて、それに答える。
「正面広間の階段下の扉を抜けた先で御座います」
「ありがとう」
執事が扉まで案内すると、頭を下げて入室を確認する。
扉を抜けると、正面奥に数段上がった所で、ギムネラ王とタルーシャ王女が腰掛けている。
両脇をまだこんなに人がいたのかと思うほど、役職についた者たちが並んで来賓を出迎える。
アマルとナップルも、そこにいた。
シリアは、列の一番奥に立っている。
「お待たせ致しました。お急ぎのお話があるとのことで参上致しました」
五人が、横一列に並ぶとナルセが挨拶をした。
「急に呼び立てて、申し訳ない。皆にわしの重臣らを紹介したくてな」
「皆から向かって右手に内政担当、左手に外政担当を任せている者たちじゃ」
「各担当責任者は、内政はシリア、外政はランテスが指揮しておる」
シリアが一歩前に出る。
「領地内の出来事を全般的に処理しております。シリアと申します」
続いてランテスが前に出る。
「領地の内外の攻守を任されております。ランテスと申します」
「シリアについては、存じておるであろう。ランテスは、我が国一の戦の猛者じゃ。王室近衛師団副師団長を勤め王女の警護担当でもある」
ギムネラ王が続ける。
「集まってもらったのは、其方らに頼みたいことがあっての」
ナルセが問いかける。
「頼みとは?」
「使者として、デタロワまで行ってもらいたい」
「デタロワ大陸ですか?ヤグスラ王が統治するノースウォーター国ですね?」
「うむ、ナルセは物知りよのぉ。話が早くて助かる」
「恐れ多いことで御座います」
ナルセがお辞儀をする。
「明朝、出立してもらいたい。イーストグラスランドでの出来事を伝えに行って欲しい」
もっと、ここでの生活を味わいたかったサユミが残念がる。
「明朝?」
「そこでじゃ、シリアとランテスを同行させることにした」
えっと、立ち上がるタルーシャ。
「では、私も一緒に」
「それは、無理じゃ」
孫とはいえ、厳しかった。
「どうしてです?お爺様」
「タルよ。お前にはここで王女としての勤めがあるのじゃぞ」
返す言葉がなく、玉座に座り込むタルーシャ。
ギムネラ王は、サユミたちに向き直ると
「必要なものは、全て積み込んでおる故、異論が無ければ明朝出立としたいが如何かな?」
「積み込む?と申されますと?」
ナルセは大体の予想はついていた。
「帆船を用意してある。我が国最大の船じゃ」
タクトが声を上げる。
「おお、船に乗れるのか」
重臣たちの視線がタクトに注がれる。
ギムネラがそれを手で制する。
「あははは、良い良い。其方らは、わしの孫のようなものじゃ」
軽くお辞儀をすると重臣たちは元の姿勢に戻った。
「シリア、ランテス」
はっと、直立するシリアとランテス。
「只今より二人は、この者たちの配下とする。それぞれが責務を全うするよう努めるのじゃ。良いな」
「はっ、かしこまりました」
シリアとランテスが敬礼をする。
マリカが興奮している。
「今日は、一日楽しかったぁ。あ、これ、みんなに」
テーブルに籠を置くマリカ。
「同じものだけど、それぞれに名を彫っておいたわ」
見ると鋼製のリストバンドであった。
「元素力を増幅すると言われるドラゴニウム鉱石から抽出したものを練り込んであるの」
タクトがリストバンドを装着して感心して見ている。
「へえ、マリカがねえ」
「そんなこと言うんなら、返してよ」
「ダメだよ。もらったものは返さないよ」
タクトが、舌を出してベエとする。
口をへの字にするマリカ。
コンコン、扉を叩く音。
ハヤネが、はい と答える。
ガチャリと、扉が開き執事が入ってくる。
「失礼致します。国王並び王女が王の間にて、お待ちで御座います。お話があるとのことで、お急ぎお越しになるようにと」
「なんだろう?急ぎって」
サユミがやや不安そうな顔をする。
「とにかく、行ってみればわかるよ」
ナルセが立ち上がり皆を促す。
「王の間って?」
タクトが口にするのを執事が聞いていて、それに答える。
「正面広間の階段下の扉を抜けた先で御座います」
「ありがとう」
執事が扉まで案内すると、頭を下げて入室を確認する。
扉を抜けると、正面奥に数段上がった所で、ギムネラ王とタルーシャ王女が腰掛けている。
両脇をまだこんなに人がいたのかと思うほど、役職についた者たちが並んで来賓を出迎える。
アマルとナップルも、そこにいた。
シリアは、列の一番奥に立っている。
「お待たせ致しました。お急ぎのお話があるとのことで参上致しました」
五人が、横一列に並ぶとナルセが挨拶をした。
「急に呼び立てて、申し訳ない。皆にわしの重臣らを紹介したくてな」
「皆から向かって右手に内政担当、左手に外政担当を任せている者たちじゃ」
「各担当責任者は、内政はシリア、外政はランテスが指揮しておる」
シリアが一歩前に出る。
「領地内の出来事を全般的に処理しております。シリアと申します」
続いてランテスが前に出る。
「領地の内外の攻守を任されております。ランテスと申します」
「シリアについては、存じておるであろう。ランテスは、我が国一の戦の猛者じゃ。王室近衛師団副師団長を勤め王女の警護担当でもある」
ギムネラ王が続ける。
「集まってもらったのは、其方らに頼みたいことがあっての」
ナルセが問いかける。
「頼みとは?」
「使者として、デタロワまで行ってもらいたい」
「デタロワ大陸ですか?ヤグスラ王が統治するノースウォーター国ですね?」
「うむ、ナルセは物知りよのぉ。話が早くて助かる」
「恐れ多いことで御座います」
ナルセがお辞儀をする。
「明朝、出立してもらいたい。イーストグラスランドでの出来事を伝えに行って欲しい」
もっと、ここでの生活を味わいたかったサユミが残念がる。
「明朝?」
「そこでじゃ、シリアとランテスを同行させることにした」
えっと、立ち上がるタルーシャ。
「では、私も一緒に」
「それは、無理じゃ」
孫とはいえ、厳しかった。
「どうしてです?お爺様」
「タルよ。お前にはここで王女としての勤めがあるのじゃぞ」
返す言葉がなく、玉座に座り込むタルーシャ。
ギムネラ王は、サユミたちに向き直ると
「必要なものは、全て積み込んでおる故、異論が無ければ明朝出立としたいが如何かな?」
「積み込む?と申されますと?」
ナルセは大体の予想はついていた。
「帆船を用意してある。我が国最大の船じゃ」
タクトが声を上げる。
「おお、船に乗れるのか」
重臣たちの視線がタクトに注がれる。
ギムネラがそれを手で制する。
「あははは、良い良い。其方らは、わしの孫のようなものじゃ」
軽くお辞儀をすると重臣たちは元の姿勢に戻った。
「シリア、ランテス」
はっと、直立するシリアとランテス。
「只今より二人は、この者たちの配下とする。それぞれが責務を全うするよう努めるのじゃ。良いな」
「はっ、かしこまりました」
シリアとランテスが敬礼をする。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
おいでませ神様のつくるミニチュア空間へ
森羅秋
ファンタジー
目を開いたら『私』ではない人間になっていた。
ホラー夢は楽しいなぁ。とエンディングまで進めたが、いつまで経っても夢から醒めない。
もしかして、これは現実?
いやあり得ない。だって『私』が住んでいた世界ではないから。
それに私の名前は………………えっと、なんだっけ?
天路国という異世界で目覚めた『私』。
防衛組織カミナシに所属している『息吹戸瑠璃』になっていた。
自分が何者かわからないまま、息吹戸として異界からの侵略者を討伐する日々を送る。
いつかは夢が覚めて元の世界に戻るはず。それまでは……
<こちらの世界に来た時に記憶喪失になりましたが
神話の知識が役に立つので、愛想尽かされないように立ち回ろうと思います!>
・
・
・
8/31から続きが始まります。その後9/30まで毎日投稿します。
ホラー要素やバトル、強い女性が好きな方はぜひ読んでみて下さい!
・
・
・
□補足□
☆世界の神話、神様やモンスターを参考にしています。(ただしクトゥルフ神話は省いています)
☆物語の都合上、神話とは違う動きや機能を持たせていますがご了承ください。
☆軽めの復讐劇になります。
同作品を小説家になろう・カクヨムに投稿しています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる