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第二章 サザンソルト国
第十一話 料理長 ナップル
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ナラタス城 鍛冶場
ナルセがシリアに問いかける。
「あの、シリア様?お聞きしたいのですが」
「ナルセ様、私のことは、シリアで結構でございます。何をお知りになりたいのですか?」
「え、では、シリア。先ほど図書室があると話されてましたが」
「はい、確かにこの城には図書室はございますが、何か?」
「あの、お、僕達が図書室に入るのは難しいでしょうか?」
シリアはうなずくタルーシャを見る。
「百合の札をお持ちの方でしたら、どなたでも入室可能です」
サユミがリリービル?とハヤネを見る。
首に下げた札を見せるハヤネを見て理解するサユミ。
ナルセがシリアを見る。
「少し調べておきたいことがあるのですが」
「お急ぎでしたら、今からご案内いたしますが」
「ええ、ぜひ」
言うとハヤネの背中を押すナルセ。
シリアに付いて行くナルセとハヤネ。
サユミは、マリカを見ると何やらアマルと話が弾んでいるのか、笑い声すら聞こえてくる。
タクトが、タルーシャに尋ねる。
「ねえ、タルーシャ。厨房を見たいんだけどいいかな?」
「うん、いいよ。こっちだよ」
玄関の方に向かうタルーシャ。
「あ、私も行く。マリカ、厨房に行ってくるね」
鍛冶場の音で聞こえないのかマリカは夢中だった。
サユミは肩をすくめタクトのあとを行く。
正面玄関を横切り鍛冶場とは反対側の階段を降りて行く。
湯気と一緒に、なんともいい匂いが立ち込めてくる。
「なんだか、美味しそうな匂いがするね」
「鯛にアサリに、オリーブオイルの香りがする」
タクトが鼻をクンクンしている。
「この後は、白ワインだな」
ジュワー♪厨房から、白ワインを投入する音。
タルーシャが中の様子を見ながら感心している。
「へえ、タクトって料理得意なの?」
「そんなでもないよ。父さんには厨房に立つのは百年早いって、よく言われる」
「ふうん、ナップル。手が空いたら来てくれる?」
タルーシャがコックに向かって声をかける。
「あ、はい。少々お待ちを。タルーシャ様」
タルーシャがタクトを見る。
「ナップルが、ここの料理長なの。聞きたいことは彼に聞いてね」
「あ、うん。わかった」
厨房の中からナップルが出てきた。
「これはこれは、お帰りなさい。丸太小屋はいかがでしたか?」
「ウッドウルフに襲われたわ」
驚くナップル。
「えっ、よくご無事で」
「サユミとタクトたちのおかげよ」
「そうでしたか、大事なくて良かったです。あ、そうだ」
ナップルは中に戻ると、氷に浸したグラスに入ったものを持ってきた。
「デザートです。お試しください」
スプーンを手に取ると、すくって口に運ぶタルーシャ。
「うん、美味しい。タクト、食べてみて」
器を差し出すタルーシャからそれを受け取るタクト。
「え、いいの?じゃ遠慮なく」
タクトもすくって食べる。
「んんっ、これナババじゃないか。それにこの上にかかってる黒っぽいのがほろ苦くて甘い。めちゃくちゃ上手い。サユミも食べてみな」
スプーンにすくって、サユミの口に運ぶタクト。
パクッ、口に含んだだけで甘さが広がる。モグモグ、ナババの味だ。それにほんのり苦くて甘い。そこに冷たい甘さも重なる。
「何これ、この世の中にこんなに美味しいものがあったなんて」
ナップルは、大口開けて笑った。
「君たちチョコレートは初めてなんだね。バナナに生クリームとバニラアイスを加えてチョコレートソースをかけたものだよ。これに他のフルーツを加えたらもっと美味しくなる」
中に戻るナップル。
そそくさと戻ってくると、両手に三本串に刺した黒っぽいバナナの形をしたものを持っている。
「シンプルにこんなのもどうですか?」
三人は、それにかぶりついた。
パリッと表面が割れると中から白い果肉のバナナが出てきた。
「おお、モグモグ、パリッとしてたのに、モグモグ、口の中で溶けて、モグモグ、ナババに絡み付いて、モグモグ、さらに美味しく」
サユミが興奮するタクトを横目で見る。
「食べるか、しゃべるか、どっちかにしたら?」
ナップルが、トレイに乗せてコップに入った牛乳を持ってきた。
「喉が渇いたら、これです」
タクトがコップをかざす。
「牛乳?」
ゴクゴクとタクトは飲んだ。
「ぷはぁ、この牛乳美味すぎ」
「そうでしょう。料理はシンプルが一番です」
「おじさん、このチョコローテっで、どうやって作るの?」
「ほおほお、関心がおありで?いいですかな。カカオの実、カカオポッドと呼ばれるものから作るのですが、この硬い殻の中のヌルヌルした果肉パルプをバナナの葉などで包んで発酵させます」
夢中になる二人。すっかり意気投合した感じだ。
肩をすくめ合うサユミとタルーシャ。
二人は階段を上り城壁の上に出た。
ナルセがシリアに問いかける。
「あの、シリア様?お聞きしたいのですが」
「ナルセ様、私のことは、シリアで結構でございます。何をお知りになりたいのですか?」
「え、では、シリア。先ほど図書室があると話されてましたが」
「はい、確かにこの城には図書室はございますが、何か?」
「あの、お、僕達が図書室に入るのは難しいでしょうか?」
シリアはうなずくタルーシャを見る。
「百合の札をお持ちの方でしたら、どなたでも入室可能です」
サユミがリリービル?とハヤネを見る。
首に下げた札を見せるハヤネを見て理解するサユミ。
ナルセがシリアを見る。
「少し調べておきたいことがあるのですが」
「お急ぎでしたら、今からご案内いたしますが」
「ええ、ぜひ」
言うとハヤネの背中を押すナルセ。
シリアに付いて行くナルセとハヤネ。
サユミは、マリカを見ると何やらアマルと話が弾んでいるのか、笑い声すら聞こえてくる。
タクトが、タルーシャに尋ねる。
「ねえ、タルーシャ。厨房を見たいんだけどいいかな?」
「うん、いいよ。こっちだよ」
玄関の方に向かうタルーシャ。
「あ、私も行く。マリカ、厨房に行ってくるね」
鍛冶場の音で聞こえないのかマリカは夢中だった。
サユミは肩をすくめタクトのあとを行く。
正面玄関を横切り鍛冶場とは反対側の階段を降りて行く。
湯気と一緒に、なんともいい匂いが立ち込めてくる。
「なんだか、美味しそうな匂いがするね」
「鯛にアサリに、オリーブオイルの香りがする」
タクトが鼻をクンクンしている。
「この後は、白ワインだな」
ジュワー♪厨房から、白ワインを投入する音。
タルーシャが中の様子を見ながら感心している。
「へえ、タクトって料理得意なの?」
「そんなでもないよ。父さんには厨房に立つのは百年早いって、よく言われる」
「ふうん、ナップル。手が空いたら来てくれる?」
タルーシャがコックに向かって声をかける。
「あ、はい。少々お待ちを。タルーシャ様」
タルーシャがタクトを見る。
「ナップルが、ここの料理長なの。聞きたいことは彼に聞いてね」
「あ、うん。わかった」
厨房の中からナップルが出てきた。
「これはこれは、お帰りなさい。丸太小屋はいかがでしたか?」
「ウッドウルフに襲われたわ」
驚くナップル。
「えっ、よくご無事で」
「サユミとタクトたちのおかげよ」
「そうでしたか、大事なくて良かったです。あ、そうだ」
ナップルは中に戻ると、氷に浸したグラスに入ったものを持ってきた。
「デザートです。お試しください」
スプーンを手に取ると、すくって口に運ぶタルーシャ。
「うん、美味しい。タクト、食べてみて」
器を差し出すタルーシャからそれを受け取るタクト。
「え、いいの?じゃ遠慮なく」
タクトもすくって食べる。
「んんっ、これナババじゃないか。それにこの上にかかってる黒っぽいのがほろ苦くて甘い。めちゃくちゃ上手い。サユミも食べてみな」
スプーンにすくって、サユミの口に運ぶタクト。
パクッ、口に含んだだけで甘さが広がる。モグモグ、ナババの味だ。それにほんのり苦くて甘い。そこに冷たい甘さも重なる。
「何これ、この世の中にこんなに美味しいものがあったなんて」
ナップルは、大口開けて笑った。
「君たちチョコレートは初めてなんだね。バナナに生クリームとバニラアイスを加えてチョコレートソースをかけたものだよ。これに他のフルーツを加えたらもっと美味しくなる」
中に戻るナップル。
そそくさと戻ってくると、両手に三本串に刺した黒っぽいバナナの形をしたものを持っている。
「シンプルにこんなのもどうですか?」
三人は、それにかぶりついた。
パリッと表面が割れると中から白い果肉のバナナが出てきた。
「おお、モグモグ、パリッとしてたのに、モグモグ、口の中で溶けて、モグモグ、ナババに絡み付いて、モグモグ、さらに美味しく」
サユミが興奮するタクトを横目で見る。
「食べるか、しゃべるか、どっちかにしたら?」
ナップルが、トレイに乗せてコップに入った牛乳を持ってきた。
「喉が渇いたら、これです」
タクトがコップをかざす。
「牛乳?」
ゴクゴクとタクトは飲んだ。
「ぷはぁ、この牛乳美味すぎ」
「そうでしょう。料理はシンプルが一番です」
「おじさん、このチョコローテっで、どうやって作るの?」
「ほおほお、関心がおありで?いいですかな。カカオの実、カカオポッドと呼ばれるものから作るのですが、この硬い殻の中のヌルヌルした果肉パルプをバナナの葉などで包んで発酵させます」
夢中になる二人。すっかり意気投合した感じだ。
肩をすくめ合うサユミとタルーシャ。
二人は階段を上り城壁の上に出た。
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