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第二章 サザンソルト国
第八話 ナラタスの街と城
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ナラタス城
海に面した崖の上にあって、崖は荒波に削られ海の上に迫り出している。
海とは反対に城下が栄え、そこからつながる港の大きさが交易の盛んなことを物語っていた。
城へは、街に入る門を抜けると幅広い一本道であった。間に二本の水路が走り、橋を二つ越えなければならなかった。
城の周りを囲む城壁を内壁とし、その壁を囲むように一本目の掘りの深い水路が走る。二本目の水路は農業地と商業地及び工業地の間にあって生活には欠かせないものであった。農業用水、運搬用水路にも使われている。
崖淵の城から、波紋のように二本の水路が広がっている。
馬車は、背の高い木々が立ち並ぶ中、整地された道を進んでいく。
林の向こうを道と並行するように大きな川が蛇行しながら城のあるほうへ流れている。
所々、木々を切り倒したばかりで開拓されるのを待っている場所がある。
林を抜けると広大な平地が広がっていた。
湖がすぐ横にあったことにようやく気付くタクトが叫ぶ。
「うほっ、でっけえ、池だなぁ」
マリカが恥ずかしそうに
「バカねぇ、湖って言うのよ。これは」
船着き場では、ボートがゆらゆらと乗る人を待つ。
その横で竿を傾けて糸を垂らす釣り人が、のんびりした時間を楽しんでいる。
タクトが身を乗り出す。
「ここなら、ワカサギかマスだな。釣りやりてぇ」
水鳥が数羽飛び立ち、湖面に波紋を広げていく。
水面から伸びる草が、そこだけ浅いことを教えてくれる。
ここに堰を設け水道橋が城へと伸びている。
サユミが、驚いている。
「すごい、城まで行くならあの上行った方が早そうだね」
タクトといいサユミといい、田舎者丸出しであった。
サユミたちと同じ馬車に乗っていたタルーシャ。
「城に着いたら、港町を案内してあげるね」
タクトの料理人の血が騒ぐ。
「マジか、海の魚、何があるかな?」
「大抵のものは、揃うはずよ。たまにクジラも見るかな?」
「クジラが獲れるの? ほげえ」
マリカは、くだらない駄洒落に呆れて顔を手で隠す。
整地された道を辿ると平地がゆるやかに下り広がっている。
サユミが大きく息を吸い込む。
「んんー、空気が美味しい」
緑が広がる中、道がひび割れのようにあちこちに伸びている。
その道に沿うようにポツリポツリと家々が点在している。
メインの広目の道を辿った先に、城壁に囲まれた城があった。
マリカがつぶやく。
「なんだか、人が増えてきたね」
城に近づくと家々が立ち並び、人の出も多くなり賑わいを見せ始める。
道を荷を山と積んだ行商人の馬車が往来する。
その側を、麻の束を背負う者の姿も見られる。
城門に近づくと門兵が荷物改めをしている。
こちらの馬車を見て、敬礼をする門兵。
素通りして通り抜ける心地良さ。
タクトが胸を張る。
「なんだか偉くなった気分だ」
マリカが突っ込む。
「今だけよ。タルーシャ王女と同乗してるんだから、当然のことだよ」
道の両側を緑が広がり、稲の表面を風がなぞっていく。
田畑を抜けると一つ目の水路が見えてきた。
その先にさらに高めの城壁が高い城を見えなくしている。
タルーシャ王女が思い出したように
「あとで、通行証渡しますね。それから・・あの」
ナルセが言葉に詰まるタルーシャ王女を見る。
「それから、なんですか?」
「王女って、みんなからは呼ばれたくないな」
サユミが驚く。
「じゃあ、なんて?」
「お爺様みたいに、タル って」
ナルセが笑みを浮かべる。
「わかったよ、タル。これからも、よろしく」
「うん、ナルセ。こちらこそ、よろしく」
嬉しそうに、足をバタバタとするタルーシャ。
城壁の何箇所かに船着き場が設けられ荷下ろしをする行商人の姿が見える。
石を四角く加工し積み上げたアーチ型の橋を馬車は進んでいく。
街に入るための城門は日中は開かれたままで、門兵が行き交う人々の行動に目を光らせている。
門をくぐるとさらに家々が密集し、釣りたての魚を並べて客を呼び込む店主。
「おいおい、あの魚見たか?マリカ」
「はいはい、見てますよぉ」
ぜんぜん見ていないマリカ。
籠ごとに果物や野菜を分け色取り取りに陳列する店。
サユミが、珍しい果物を見て
「なにあれ?細長くて黄色のやつ」
タルーシャが、どれどれと。
「ああ、あれはバナナだよ」
「へ?ナババ?」
「バ・ナ・ナ」
ふふっと、笑うタルーシャ。
「城に着いたら食べてみる?甘くて美味しいよ」
「え、いいの?食べたい」
目を丸くするサユミ。
赤や青、黄色、色鮮やかな生地を広げ積み重ね、中でもおすすめの生地を肩にかけて通る人に広げて見せている店主。
マリカが生地を見て
「うわ、あんなのでシャツ作ったら素敵だろうな」
タクトが頭の後ろで手を組み。
「どうせ、失敗して雑巾になるだけだろ?」
ゴン と、タクトの頭を殴るマリカ。
それを見て笑うタルーシャ。
間も無くして中央に噴水のある広場に出た。道は左右にも伸びている。
噴水に面した部分が商業地区、左右に伸びた道を進んだ奥が工業地区となっている。
マリカが窓から身を乗り出す。
「ねえ、タル。鍛冶屋ってあるよね?」
「もちろん、あるよ」
「うわ、見てみたい」
「城に行けば、王室御用達の鍛冶場があるから案内するよ」
「ほんとぉ、やったね」
ウキウキするマリカ。
さらに進むと、急に目の前が開け幅が広く底の深い堀が現れた。
そこに跳ね橋が掛かり必要に応じて引き上げられるようになっている。
ナルセが感心する。
「これじゃ、城攻めは容易じゃないな」
バタバタと馬車が橋を渡っていくと門兵が合図を送り金属が音を立てて門が開き始める。
海に面した崖の上にあって、崖は荒波に削られ海の上に迫り出している。
海とは反対に城下が栄え、そこからつながる港の大きさが交易の盛んなことを物語っていた。
城へは、街に入る門を抜けると幅広い一本道であった。間に二本の水路が走り、橋を二つ越えなければならなかった。
城の周りを囲む城壁を内壁とし、その壁を囲むように一本目の掘りの深い水路が走る。二本目の水路は農業地と商業地及び工業地の間にあって生活には欠かせないものであった。農業用水、運搬用水路にも使われている。
崖淵の城から、波紋のように二本の水路が広がっている。
馬車は、背の高い木々が立ち並ぶ中、整地された道を進んでいく。
林の向こうを道と並行するように大きな川が蛇行しながら城のあるほうへ流れている。
所々、木々を切り倒したばかりで開拓されるのを待っている場所がある。
林を抜けると広大な平地が広がっていた。
湖がすぐ横にあったことにようやく気付くタクトが叫ぶ。
「うほっ、でっけえ、池だなぁ」
マリカが恥ずかしそうに
「バカねぇ、湖って言うのよ。これは」
船着き場では、ボートがゆらゆらと乗る人を待つ。
その横で竿を傾けて糸を垂らす釣り人が、のんびりした時間を楽しんでいる。
タクトが身を乗り出す。
「ここなら、ワカサギかマスだな。釣りやりてぇ」
水鳥が数羽飛び立ち、湖面に波紋を広げていく。
水面から伸びる草が、そこだけ浅いことを教えてくれる。
ここに堰を設け水道橋が城へと伸びている。
サユミが、驚いている。
「すごい、城まで行くならあの上行った方が早そうだね」
タクトといいサユミといい、田舎者丸出しであった。
サユミたちと同じ馬車に乗っていたタルーシャ。
「城に着いたら、港町を案内してあげるね」
タクトの料理人の血が騒ぐ。
「マジか、海の魚、何があるかな?」
「大抵のものは、揃うはずよ。たまにクジラも見るかな?」
「クジラが獲れるの? ほげえ」
マリカは、くだらない駄洒落に呆れて顔を手で隠す。
整地された道を辿ると平地がゆるやかに下り広がっている。
サユミが大きく息を吸い込む。
「んんー、空気が美味しい」
緑が広がる中、道がひび割れのようにあちこちに伸びている。
その道に沿うようにポツリポツリと家々が点在している。
メインの広目の道を辿った先に、城壁に囲まれた城があった。
マリカがつぶやく。
「なんだか、人が増えてきたね」
城に近づくと家々が立ち並び、人の出も多くなり賑わいを見せ始める。
道を荷を山と積んだ行商人の馬車が往来する。
その側を、麻の束を背負う者の姿も見られる。
城門に近づくと門兵が荷物改めをしている。
こちらの馬車を見て、敬礼をする門兵。
素通りして通り抜ける心地良さ。
タクトが胸を張る。
「なんだか偉くなった気分だ」
マリカが突っ込む。
「今だけよ。タルーシャ王女と同乗してるんだから、当然のことだよ」
道の両側を緑が広がり、稲の表面を風がなぞっていく。
田畑を抜けると一つ目の水路が見えてきた。
その先にさらに高めの城壁が高い城を見えなくしている。
タルーシャ王女が思い出したように
「あとで、通行証渡しますね。それから・・あの」
ナルセが言葉に詰まるタルーシャ王女を見る。
「それから、なんですか?」
「王女って、みんなからは呼ばれたくないな」
サユミが驚く。
「じゃあ、なんて?」
「お爺様みたいに、タル って」
ナルセが笑みを浮かべる。
「わかったよ、タル。これからも、よろしく」
「うん、ナルセ。こちらこそ、よろしく」
嬉しそうに、足をバタバタとするタルーシャ。
城壁の何箇所かに船着き場が設けられ荷下ろしをする行商人の姿が見える。
石を四角く加工し積み上げたアーチ型の橋を馬車は進んでいく。
街に入るための城門は日中は開かれたままで、門兵が行き交う人々の行動に目を光らせている。
門をくぐるとさらに家々が密集し、釣りたての魚を並べて客を呼び込む店主。
「おいおい、あの魚見たか?マリカ」
「はいはい、見てますよぉ」
ぜんぜん見ていないマリカ。
籠ごとに果物や野菜を分け色取り取りに陳列する店。
サユミが、珍しい果物を見て
「なにあれ?細長くて黄色のやつ」
タルーシャが、どれどれと。
「ああ、あれはバナナだよ」
「へ?ナババ?」
「バ・ナ・ナ」
ふふっと、笑うタルーシャ。
「城に着いたら食べてみる?甘くて美味しいよ」
「え、いいの?食べたい」
目を丸くするサユミ。
赤や青、黄色、色鮮やかな生地を広げ積み重ね、中でもおすすめの生地を肩にかけて通る人に広げて見せている店主。
マリカが生地を見て
「うわ、あんなのでシャツ作ったら素敵だろうな」
タクトが頭の後ろで手を組み。
「どうせ、失敗して雑巾になるだけだろ?」
ゴン と、タクトの頭を殴るマリカ。
それを見て笑うタルーシャ。
間も無くして中央に噴水のある広場に出た。道は左右にも伸びている。
噴水に面した部分が商業地区、左右に伸びた道を進んだ奥が工業地区となっている。
マリカが窓から身を乗り出す。
「ねえ、タル。鍛冶屋ってあるよね?」
「もちろん、あるよ」
「うわ、見てみたい」
「城に行けば、王室御用達の鍛冶場があるから案内するよ」
「ほんとぉ、やったね」
ウキウキするマリカ。
さらに進むと、急に目の前が開け幅が広く底の深い堀が現れた。
そこに跳ね橋が掛かり必要に応じて引き上げられるようになっている。
ナルセが感心する。
「これじゃ、城攻めは容易じゃないな」
バタバタと馬車が橋を渡っていくと門兵が合図を送り金属が音を立てて門が開き始める。
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