骨董屋と黒猫の陽だまり日記帳

蒼河颯人

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第十二話 忍び足

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 お外はぴゅーぴゅーと風が吹いていて、窓がカタカタ音を立てている。お部屋の中は、ヒーターと言う暖房器具がつけてあるけど、今日は格別に寒い気がする。もう少しこの器具の傍にいこうかな。あたしは抜き足差し足、移動することにしたの。

 え? あたしが何をしているのかって?
 しーっ! 駄目よ。そこで声を出しちゃ。
 柳都が起きちゃうじゃないの。
 あのね、彼、今お昼寝をしているの。
 そこに見えるでしょう?
 あの揺り椅子の上でね。
 昨日のお仕事も結構大変だったみたいだから。
 ほら、気持ちよさそうな寝顔をしているわ!
 起こしちゃ可哀想でしょ?
 こうやってかかとをつけないで、つま先だけで歩いた方が、音が立ちにくいでしょ?
 あたし、これでも、ちょっとは気を遣っているんだから!

「……ディアナ? 一体誰と話しているんですか?」

 あらやだ! 起こしちゃったのかしら? やぁねぇもう。 

「……こちらにおいで」

 どうやら、あたし、柳都に呼ばれちゃったみたい。ご主人様に呼ばれちゃったのなら、しょうがないわね。でも、心の中は凄く嬉しかったりして。

「外は寒いから、中にお入りなさい」

 柳都はあたしを膝掛けの中に入れてくれたの。

 しかも胸元ー!
 あたしの特等席ー!
 う~んほっかほかであったか~い……。
 柳都の優しい匂いもするぅ……。

 あたしは思わず、柳都の頬に自分の小さな頬をすりすりしてしまった。すると、彼ったら、膝掛けごと優しく抱き締めてくれたの。

 「こんなに冷たくなって……ほら。しっかりあたたまりなさい。風邪をひいたら大変ですから」

 あーん。幸せぇ~。
 大きな手と、ふかふかした膝掛けに包まれて、あたし、ふにゃふにゃにとろけてしまいそう……!! 

 冬って寒くて嫌いだけど、これなら毎日でも良いわ!
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