飛花落葉〜様々な情景〜

蒼河颯人

文字の大きさ
上 下
10 / 12

第10話 新幹線

しおりを挟む
 新幹線に乗って三十分位しか経ってないのに、
 タカヤったらとなりですぐ寝ちゃうものだから、寝顔をこっそり撮っちゃった。
 自撮り写真の練習ついでに巻き込んだものだけど。
 視線が合ってないし、何かズレてるけど、せっかくだから保存しておこう。
 
 ふとテーブルを見ると、レモンチューハイが一缶空っぽになっている。
 昨日は行きの新幹線から呑んでいたから、朝っぱらからだったっけ。
 全く、呑み過ぎだよ。
 
「なあリカ、今どこ?」
 
 あなたが突然起き出すものだから、あたしは思考を一気に現実に引き戻した。
 
「あ、ごめん。アナウンス聴き逃しちゃった。確か福島通り過ぎたあたりだったと思う。広島はまだだったはず」
 
「着くまで後一時間強だから……そうだね。まだまだやね」
 
 しばらくすると、車内販売のカートの音が聞こえてきた。
 カートが傍で止まったと思ったら、あなたはコーヒーともみじ饅頭を頼んでた。
 スマホで写真を撮ってたから、きっと後でSNSに上げるんだろうな。
 
 新幹線の窓から外を覗くと、闇の帳が降りてきていた。
 乗ってすぐはまだ明るかったのに。
 もう十月の半ばだから、当然か。
 今やほんのりとわずかに残る夕陽が残り火のよう。
 消えそうで、消えない。
 だけど、そのうちすうっと消えてゆくのだろう。
 一日、一日減ってゆく命の光のように。 
 
 中々一緒にお休みとれる機会はないけど、
 また今度一緒にお休みとれたら、
 出かけよう。電車で。
 
 次はまた違う所へ。
しおりを挟む

処理中です...