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奈落に落ちる
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彼の実家で正座をした。焦げ茶色で少し大きなちゃぶ台の前に僕と彼は畏まって、向かいには彼の両親が居た。怒号が目の前から聞こえて、僕はゆっくりと瞬きをする。乾いた瞳が少しだけ痛かった。
彼の父親は顔を真っ赤にして立ち上がって、僕らを罵った。彼の母親は泣いていた。僕らはそれをただじっと、瞳を逸らすことなく見つめていた。畳と太ももに挟まれた足が悲鳴を上げるが無視をする。ビリビリとした感覚が下半身を刺したが、どうでも良い事だった。
彼の父親は一通り言葉を吐ききったのか、ドカリと音を立ててその場にあぐらをかく。そして彼を見ると、また口を開いた。僕のことはもう眼中に無いみたいで、彼の父親はこちらをちらりとも見ない。けれど、彼の母親は僕を睨みつけていた。親の仇ならぬ子の仇。僕はその眼光に内心震え上がって、何を口に出すことも目を合わせることさえしなかった。
やがて話が終わり、彼に勘当が告げられる。僕たちは正座を崩し立ち上がった。彼の両親はまだ何か言いたげだったが、僕らはそれを聞くこともなく家を出た。
僕の実家で正座をした。カーペットの上で僕と彼は畏まって、向かいには僕の両親がソファに座っていた。父が座ったまま刺々しい言葉を僕らに突き刺して、僕はゆっくりと瞬きをする。乾いた瞳が少しだけ痛かった。
僕の父親は苦虫を噛み潰したような顔をして、僕たちに棘を吐いた。僕の母親は化け物を見るような目でこちらを見た。僕らはそれをただじっと、瞳を逸らすことなく見つめていた。カーペットと太ももに挟まれた足が悲鳴を上げるが無視をする。ビリビリとした感覚が下半身を刺したが、どうでも良い事だった。
僕の父親は一通り言葉を吐ききったのか、こちらを見下して一つ溜息を付く。そして、僕らから視線を外した。僕らのことはもう眼中に無いみたいで、僕の父親はこちらをちらりとも見ない。僕の母親も同様だった。
呆れたような口調で、僕に勘当が告げられる。僕たちは正座を崩し立ち上がった。僕の両親は僕の事を一瞥もせず、僕らが家を出るとさっさと鍵を閉めた。
親にもキリストにも決して望まれぬ僕らの恋は、きっと許されるものではない。僕らにはもう親など居ないし、僕らは釈迦にお祈りをする。けれど、許されない僕たちが辿り着くのはきっと地獄だ。
いつか奈落に辿り着く日までは、僕たちは笑っていられるのだ。
彼の父親は顔を真っ赤にして立ち上がって、僕らを罵った。彼の母親は泣いていた。僕らはそれをただじっと、瞳を逸らすことなく見つめていた。畳と太ももに挟まれた足が悲鳴を上げるが無視をする。ビリビリとした感覚が下半身を刺したが、どうでも良い事だった。
彼の父親は一通り言葉を吐ききったのか、ドカリと音を立ててその場にあぐらをかく。そして彼を見ると、また口を開いた。僕のことはもう眼中に無いみたいで、彼の父親はこちらをちらりとも見ない。けれど、彼の母親は僕を睨みつけていた。親の仇ならぬ子の仇。僕はその眼光に内心震え上がって、何を口に出すことも目を合わせることさえしなかった。
やがて話が終わり、彼に勘当が告げられる。僕たちは正座を崩し立ち上がった。彼の両親はまだ何か言いたげだったが、僕らはそれを聞くこともなく家を出た。
僕の実家で正座をした。カーペットの上で僕と彼は畏まって、向かいには僕の両親がソファに座っていた。父が座ったまま刺々しい言葉を僕らに突き刺して、僕はゆっくりと瞬きをする。乾いた瞳が少しだけ痛かった。
僕の父親は苦虫を噛み潰したような顔をして、僕たちに棘を吐いた。僕の母親は化け物を見るような目でこちらを見た。僕らはそれをただじっと、瞳を逸らすことなく見つめていた。カーペットと太ももに挟まれた足が悲鳴を上げるが無視をする。ビリビリとした感覚が下半身を刺したが、どうでも良い事だった。
僕の父親は一通り言葉を吐ききったのか、こちらを見下して一つ溜息を付く。そして、僕らから視線を外した。僕らのことはもう眼中に無いみたいで、僕の父親はこちらをちらりとも見ない。僕の母親も同様だった。
呆れたような口調で、僕に勘当が告げられる。僕たちは正座を崩し立ち上がった。僕の両親は僕の事を一瞥もせず、僕らが家を出るとさっさと鍵を閉めた。
親にもキリストにも決して望まれぬ僕らの恋は、きっと許されるものではない。僕らにはもう親など居ないし、僕らは釈迦にお祈りをする。けれど、許されない僕たちが辿り着くのはきっと地獄だ。
いつか奈落に辿り着く日までは、僕たちは笑っていられるのだ。
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