ある冬の朝

結城りえる

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Episode 4 ある冬の朝

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 その朝は、雪が降った。今年は暖冬でいつもよりも10日以上早く桜が開花するだろうと言われていたのに。

*************

 その前日、オレはようやく退院して仕事復帰を果たした。交通事故に遭い、半年近く入院リハビリを経験し、オレが入院していた間に、優は9階の技術事業部に異動していた。オレの斜め前の席の見晴らしが良くなっている。
 入院中は優は献身的に面倒をみてくれた。片手が不自由だったから、食事を食べさせてくれる時は有り難かった。尤も、朝や昼は優は会社にいるから、自分でスプーンと格闘して食事をしたのだ。
 優以外に来てくれたのは営業部の上司たちと、笹本元課長や武岡さんだ。
「お前なぁ、ちゃんと治ってよかったな。後遺症とか残ったら大変なとこだった」
「そうだね。アメリカから来てくれたご両親もさぞかし肝を冷やしただろう?」
 両者からは本当にうんざりするほど小言を貰っている。
「そういえば、高山君とはどうなったんだ?」
 唐突に優のことを聞かれ、ちょっと困ってしまう。
「どうなったって、言われても」
「お前なぁ」
「優とは友達づきあいをしてる」
「向こうは…不満だったりして」
「笹本課長っ!」
「浅野君は、高山君のことは好きじゃないのかい?」
 好きじゃないのかと言われると、違うとハッキリ言えた。そばにいてくれないと淋しいと思う。
「お前、うちの店に来るの、金曜だけだろ?」
「だって、金目の煮付けは金曜日だけじゃん」
「月木以外もランチやってんだぞ?」
「月木はどうしてやってないの?」
「豊洲に仕入れに行ってんだよ、バーロー」
 気のせいか、笹本課長の言葉遣いが魚屋のおやっさんに似てきた気がする。
「高山君が水曜に来てくれるんだよ」
 すかさず武岡さんが間に入る。
「え?水曜日?水曜日なんてしょぼいランチしかないじゃん」
「コーラっ!うちの店のランチをしょぼいとか言うな!おやっさんに頼んで出禁にしてやる!」
 どうも笹本課長が入ると話がややこしくなる。
「浅野君は裏メニューを知らないの?ミックスフライ定食には海老フライが付くよ。しかも赤味噌ソース付き」
「うわっ?何それ?知らなかった」
「おやっさんがね、水曜日に来てくれる貴重なお客様だからって、高山君の出身地にあやかってメニュー作っちゃったんだ」
 今さら思うけど、あの店はおやっさんの一言で全てが決まるのだ。
「で、今週も水曜日に高山君が来てくれて、話をしたんだ。オレも智之も、浅野君は可愛い部下だからね。会社辞めても君には幸せになって欲しいと願ってるから、何度だって背中を押し続けるさ」
「おい、シゲ、肝心の内容が抜けてる!」
「ああ、そうだった。高山君、浅野君の気持ちを待つんだって、そう言ってた」
 二人は影でかなりお節介をやいていてくれたらしい。
「浅野!もう腹括って直ぐに高山君の気持ちに応えてやれよ?あっと言う間にまた1年経って正月来ちまうぞ?」
 自分の時はかなり悩んでいたくせに、笹本課長も武岡さんもオレの事に関しては前のめりじゃん。
 それでも、嬉しかった。優はまだ、オレを好きでいてくれている。だったら、この恋が冬の寒さで凍えてしまわないうちに、オレは優に飛び込もう。
「……考えておくよ。二人ともありがとう」
 ひとりっ子のオレには、二人の温かさが心に沁みた。
 店を出た後、オレは優にメールを入れてみた。すると直ぐにチャットに切り替わった。
「身体の具合はどう?慎太郎」
 文字からでも優の優しさが伝わってくる。
「昨日の今日じゃないか、優。オレの事、心配し過ぎ」
「慎太郎は、意外にアクティブだからね」
「そう思うんだったら、今晩、うちで一緒にご飯食べてよ」
 画面が変わるまで、吹き出しの中の文字がしばらくローディング状態になっている。優が割と長い文章を打っているのだろう。それとも言葉を慎重に選んでいるのか。
「慎太郎の家でいいの?うちでも構わないよ。ケータリングを頼む?」
 オレもしばらく考える。
「スーパーでデリカテッセン、選んで持って行くよ。7時でいい?」
「ああ、いいよ。オレの部屋、505だから」
「505?なんだかデニムみたい」
「そういうと思った。じゃ、待ってるよ」
 お互いの胸の内をうまく伝えられない不器用なオレ達はチャットになるとついつい長くなってしまう。
 オレは電源を切ると会社のエントランスに急いで向かった。残りの仕事、死ぬ気でやらないと残業出来ないことが、たった今、決定したから。
 会社帰りにスーパーに立ち寄り、デリカコーナーで惣菜をいくつか選んだ。シュリンプの唐揚げ、ポテトフライ、フリット、やたら揚げ物が多いんだけど、トマトサラダもいいかな。誰かと一緒に食べるご飯を選ぶのって、楽しいんだな、と知った。
 自宅に一旦戻り、ラフな服装に着替えてすぐ斜め向かい側にある優のマンションへと入る。505を押してインターホンで呼び出すと、優が解錠してくれた。
「早かったね」
「まぁね。慎太郎も残業しなかった?」
「オレだって、やる時はやるんだよ!まぁ…要領は良くないけど」
 エレベーターで5階まで上がると、角部屋が優の部屋だった。
「ちぇっ…オレよりいい部屋に住んでる」
 羨ましさと褒め言葉を混ぜ、ドアノブに触れると、中から同時に優がドアを開けてくれた。
 久しぶりに優の顔を間近に見た気がした。あれほど毎日、病院で会っていたというのに、今会ったら優が愛しく見えた。
 うん、オレはやっぱり優と一緒に居たかったんだ。
「おっ?なんか沢山持ってきてくれたな」
「飯っていうよりジャンクっぽいよ」
「ガーリックシュリンプの唐揚げ?」
「うん、好きじゃないかと思ってた」
「さては…水曜日のランチ裏メニュー、バレたか?」
 二人でニャッと笑った。
「優って海老フライ好きなんだ?」
「うん。中部国際空港セントレアに美味しい食堂があるよ。本店は昔からあって、セントレアは支店。父方の爺ちゃんに聞いたんだよ。名物女将さんがいたんだって」
 銘店には名物オーナーが必ずいる。武岡さんと笹本課長のあの店も、おやっさんがいるし。
「あ、ヤベーこれは美味しいわ」
 優の言い方、ちょっと変。ヤベーなんて言いながら、ウマイと言わず美味しいって。
 テーブルを前にして二人で並んで座ってる。テーブルを挟んで座らなかったのは、敢えてオレたちが距離を近づけてたくて頑張ってる証拠でしょ、これ。
「ビール飲む?買っといた。ハイボールが良かった?」
 優が冷蔵庫から6缶パックを出してくる。オレは優がプルタブにかけようとした手を止めた。
「あのさ、飲む前にちゃんと言わなきゃ」
「うん、オレもだ」
 二人して畏まる。視線を何処にもって行けばいいのか分からず、何故かお互いに正座した。第三者がいたら絶対に笑われるだろうな。

「「オレ、ちゃんと付き合いたい。好きだから」」

「優のこと」
「慎太郎のこと」

 名前以外は同じことを言ってハモるだなんて、こんな奇跡あったのかな。

 そしてどちらからともなく顔を寄せ合ってキスをした。ああ、オレ、ちゃんと優とキスしてるんだ…そんなことをふと思ったら、何故か自然に涙の雫がぽとりと落ちた。
「慎太郎…?ごめん、イヤだった?」
 優が慌ててオレの両肩に手を置いたまま、少し悲しそうな顔をしたので慌てて首を振って否定した。
「違う!違うよ。ごめん…。ちゃんと優とキス出来たんだって思ったらなんだかホッとしたんだ。オレ…意気地がないから、その…うまく言えないからみんなに誤解されるし」
「慎太郎の言うことはちゃんとオレにはわかるよ。ただ、ストレートな時があるからたまにココに突き刺さる」
 優は左胸をトントンと叩いて笑った。
「ホントごめん。なんかたまに真逆の意味で伝わっちゃうときがあって、そういうときはちゃんと言ってくれたら謝るから」
 なんだかオレも胸が痛くなった。それは傷ついたとかそういうのではなく、優が“慎太郎の言うことはちゃんとオレにはわかるよ”と言ってくれたことが嬉しくて、キュンと胸が締め付けられたのだ。いいな、こういうの。自分のことをわかってるよ、って当たり前のように言葉にしてくれるひとがちゃんといるってこと。
「慎太郎…もっとキスしたい」
 今度は優がオレを抱き寄せてくれた。ホントかな?優、手の動きがキス以外も誘ってるような。
「………ッもう!優、息出来ないじゃないか」
 オレが笑いながら怒ると、優は子供みたいにはしゃいだ。ああ、よかった。優…すごく嬉しそう。オレだけじゃないんだ、優も嬉しいんだな。
「ねぇ…慎太郎、ちょっとだけお願いがある」
「何?」
「お酒、飲もうよ。オレに…ちょっと勇気をくれ」
 優は大胆そうだったけれど、幸せすぎて恐いから…と言った。酒の力を借りるのはどうなの?って思うかもしれないけれど、オレたちみたいに臆病に恋をしてる者同士は何かの手助けが必要なのだと思う。
 それに……優はともかく、オレにとっては初体験になる。だからきっと、優はオレを恐怖から解放してくれるつもりでそう言ったのだと思った。
 缶ビールをグラスに注ぎ、乾杯の合図をする。飲み干すと、ちょっとだけ落ち着いた。もう一度キスをする。キスをしながら、優の手がオレのベルトのバックルを器用に外し、ズボンの中に手を入れてくる。それが恥ずかしくて目を開けてなんかいられない。
「あっ……優……っ」
 オレに触れる優の指先の感覚に気付いて、オレは優の唇から離れる。
「……しようよ、大丈夫。恥ずかしくないから」
 うわぁ…そんな至近距離で囁くとか、優のやつ、ズルい。オレだってイヤじゃないけど、するの、めちゃめちゃ恐いんだから。
「はぁ……っ……優……やめて」
「ごめん。手術痕、痛かった?無理だったら止めるよ」
「ううん、違う。ヘーキ」
 怖さ半分、そして優の手の中で踊らされている自分の性欲がどんどん溶けていく感覚。気持ちよすぎて…自分でやるのとは違うから?もどかしい分、じらされて敏感になる。
「硬くなってきた……慎太郎カワイイ。ねぇ…目を開けて。慎太郎がオレの手の中で感じてくれてるときの顔…見せて」
 優のちょっとイジワルな言葉にビクンと震えた。ヤバいかも…コイツの言葉はいちいち心臓に良くない。っていうか…手の動きが怖ろしくエッチ。
「だめだって……こんなの。オレだけヘンになってる」
 オレがちょっとむくれると、優はオレの体に跨るように移動し、自分のズボンのチャックを下ろした。ボクサーパンツの股間の膨らみってこんなに生々しい型だっけ?オレはさらに酔いがまわった気がした。
 優は下着をずらし、下半身を曝け出す。なんか…クラクラしてきた。優のアレを見たのはオレの家に泊まった日以来だけど、こんなに…大きかったっけ?
「……慎太郎の手で触れて。オレの、大きくして」
 バカ、既に充分大きいじゃないかっ!
「優……大きくなってるじゃん」
 酔ってるせいか、もともと語彙力のないオレだからか、すごくバカなことを言っている。
「ふ……慎太郎のを触ってたらそうなるんだよ」
 お互いに相手の雄を不慣れな手つきで扱く。括れの先が濡れそぼり、反り返るほど硬く充血して、息があがる。
「気持ちいいよ……慎太郎。もっとして……あとでいいことしてあげるから」
「バカ……いいことってなんだよ。ホント、優はえっちだな」
「慎太郎は違うの?えっちなこと…考えないの?」
「……知るかっ……って…やっ……コラ…!優…急に速くしないで」
 優の手がせわしなくオレの雄を扱き始めた。
「あっ…あっ……ヤバい……ヤバいって、待って!待って…」

 ……………ッ…………ん…んあああっ

 声を抑えようとしたけど、ムリだった。あまりにも衝撃的な刺激にしばらく放心した。
 その間、優の手のなかで脈打ちながら白濁したものが飛び出してくる。
「慎太郎……凄くエッチなものを見せてくれるんだから…」
 オレの手の中でも優のものがドクンと脈打ち更に硬さが増す。
「慎太郎の手でイキたいところだけど、我慢するよ」
「え?」
「皆まで言わせないでよ。慎太郎とイキたいんだから」
 優はオレの体を跨いだまま膝立ちし、服を脱ぎ捨てて上半身裸になった。そして同じ様にオレの服も脱がせてくれた。
「ベッドに連れて行ってあげるよ」
 優は軽々とオレをお姫様抱っこした。男にお姫様抱っこされるなんて、夢にも思わなかったよ。
 ベッドにそっと置いてくれるから、優はやっぱり王子様っぽい。いや、ちょっと思っただけ。
「大好きだよ、慎太郎。君の全部を見せて」
「…オレんち泊まった時に見たんだろ?」
「ははは、そんなことはないよ。パンツ穿いてただろ?」
「オレが酔って寝てた時は?」
「それが残念ながら、見てない」
「見る気満々?優、油断ならないじゃん」
「さ、うるさい口はチャックだな」
 優と二人でベッドに沈む。キスを何度も繰り返し、見つめあう。なんかもう恥ずかしくなくなってきたかな。
 再び優の手が下半身に絡みついてきたから、オレも優のを捕まえた。
「そのまま、慎太郎のとオレのを擦り合わせて…」
  掠れた優の声がゾクリとする。
「ふぁ…ん…んふ」
 キスをしながら、お互いのpenisの先が擦れあって滑る。うまく手で支えながら違った刺激が腰に来る感じ。ムズムズした焦れた感じでオレは優が欲しいと思った。もう怖くなんかない。手術痕もヘーキだ。優と一緒に繋がれるなら、ひとつになれるならそれは……。
「優……っ」
「かわいいな、腰が動いて…誘ってくれてるの?」
 優はからかうように言いながら、それでもまだ事に及ぶことはしようとしない。
乳首ここ尖ってきたね、慎太郎…。舌で転がしたらどうなるかな」
「……いちいち言わなくて……いいよぉ…」
 我ながら、声が小さくなる。女の子みたいな胸をしているわけじゃないから、そんなものが魅力的に優の眼に映ってるなんて思えないし。
 優はわざと音を立ててオレの乳首にしゃぶりつき始めた。この音って…すごく扇情的で…。
オレは思わず仰け反った。こんなの…刺激が強すぎてヤバい…。片方の手で必死に耐えるためにシーツを握りしめた。それでも、まだ自分のpenisを優のものと擦り合わせている。
「あ……オレもそろそろヤバいかも…。我慢の限界だよ、慎太郎…。お・ね・が・い。オレのこと……一緒に天国に連れていって」
 囁くように耳元で息を吹いて話す優。

 コイツ……絶対悪いやつだ!オレの弱点を全部握ってる。

 オレは心のなかで既に陥落していた。オレには勝ち目はない。心ごと、全部優は持っていこうとしていた。
「…………優となら、いいよ」
 オレは蚊の鳴くような声で返事をした。優はそんな小さな声でもちゃんと聞いてくれていて、ゆっくりと頷いた。
 両脚を広げ、優を受け入れやすい姿勢にされた。腰にピローがあてがわれ、ちょっと楽になる。
 優はベッドサイドの引き出しからゴムとローションを取り出した。
「……待って、優。ゴム…必要ない」
「でも……ローションだけだと後が…ちょっと大変かも」
「……ヘーキ。初めては……ちゃんと優を感じたいから」
「……うわぁ…スゴイ殺し文句////////////」
 優は柄にもなく真っ赤になった。そして嬉しいよ、って微笑んだ。
「痛くしたくないから、指でちょっとだけ慣れてね」
 優の指が体のなかに入ってきて蠢く。なんとなく違和感がしたけど、思ったより不快じゃなかった。挿れたり出したりを試したあと、優がゆっくり息を吐いた。
「……慎太郎……愛してる」
「うん……オレも…」
 優を……愛してる。
 
 優がオレの身体を壊れ物を扱うように、優しく挿入はいってきた。

 
 ローションの潤いが効いているせいか、優と繋がった瞬間、オレはとてもフワフワした気持ちになっていた。
 
「慎太郎……動くよ」
 
 クチュ……クチュ……。

 灯りの落ちた寝室で静かに滑る音が響く。

「ああ…優……っ………優……」
「慎太郎……気持ちいいよ……早く…慎太郎とこうしたかった…」

 ずぶっ……ずぶっ……。

 挿入のたびに体内を搔き分けて優が入ってくる。思わず彼の腰に両脚を絡ませた。
「ダメだよ、慎太郎……焦らないで。傷ついてしまう…」
 優は体重をかけないようにオレの浅いところで行為を繰り返している。それがちょっともどかしくて、オレは優を抱き寄せた。
「うわ…っ……慎太郎!奥はまだ……」
「……いいんだよ、もっと…もっときてよ、優。優ので切り刻んで入ってきてよ」
「……物騒な殺し文句再び……って。もう……知らないぞ、ここまで来るとオレも止められないんだからな」
 優は手加減を諦めてくれて、自身の欲望のままにオレを貫き続ける。

 ぐちゅ……ぐちゅ……

 行為の音はさらに淫靡な音となる。

「慎太郎には前と後ろでイかせてあげる…」
「ちょ…ちょっと…やぁああああ……ダメぇ……優……優ったら…」

 ぐちゅ……ぐちゅ……

 なんて淫靡な音…。優とオレが繋がって愛し合う二人だけの音。

「……慎太郎……そんなに締め付けないで……っく……」
 汗まみれになりながら、優はオレを抱き、ピストンを繰り返す。
「や……やだ……いやだ……オレ……さっきイッたばかりなのに…」
「慎太郎……愛してるよ……耳をすましてみて。判る?ひとつになってるのが…」
「……優の…意地悪…。そんなの………耳を塞いでも…聞こえる…ヤダ…」
 
 一緒に……イキたいんだ、慎太郎。君が大好きだから…。

 優は腰の動きを速め、引き抜くとさらにオレのなかへと挿入してきた。
「あああああ……っ……イク…」
「慎太郎……オレも……」
 ジワジワと侵食する熱い液がオレのなかへと流れ込んでくる。優の熱だ。オレのなかで拡がっていく。ビクンっ…と大きく脈打ち、優がゆっくりと息を吐く。
「オレの想いでいっぱいに出来たよ、慎太郎…」
「…うん」
「……夢みたい。子供みたいに夢中になってた」
「……うん。優と……もっとしたい」
「慎太郎…」
「もっとキスして、もっと抱き合って、優を感じたい」
「……オレもだよ、慎太郎」
 二人で並んで寝転びながら、静かに笑った。
 ああ、よかった。
 オレたち、こんなにお互いが好きだったんだって…知った。
「キスしたら……オレは復活しちゃいそうだな」
 優はしれっと物騒なことを言った。
「……じゃあ、キスをあげる」
 寝ている優に覆いかぶさり、オレが唇を奪う。
「ん………」
 ……なるほど、たしかにオレの肌に触れた優のpenisが頭を擡げた。
「嘘みたい…」
「慎太郎がかわいいからだよ。責任…とってくれる?」
 あっという間に組み敷かれ、オレは下になる。
「調子にのるなよー、優」
「まぁね、そういう年頃だからさ」
 また噛み付くようなキスをして、優が背面から絡み付いてくる。

 グチュ……

「ああ……また……」
「蜜の入った壷みたい……しっとり濡れてるから…慎太郎のなか、気持ちいいよ」
 うっとりと言葉に載せる優の艶やかな喩えが耐えられない。すぐに自分でも堅くなるのが判った。
「このまま死んでもいいよ……それくらい慎太郎が好きだよ」
 優はそう言ってオレの肩を唇でなぞり、インサートを繰り返し続けた……。

***************

 目覚めたら…テレビが点いていて、天気を告げていた。布団の中に潜ったままでいると、隣で寝ながらテレビを見ていた優がオレに気付いた。
「外……雨からさっき雪になったよ。今日が土曜日でよかったね」
「……え?雪が降ってるの?マジか…」
「布団から出たくないなー」
 優が子供みたいなことを言うから可笑しくてケラケラ笑った。
「なんだよ?そんなにウケること言った覚えがないんだけど」
「だってコドモみたいなこと言ってるし…」
「ふーん。コドモは昨夜みたいなことするわけ?」
 優はちょっとエッチなくすぐり方をしてきた。オレの笑い声は止まらない。
「まって……待って……あははは……くすぐったい……参った!」

 

 それはある冬の朝のことでした。

 オレに、とても大切な恋人が出来ました。




the ende
 



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