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第1章:異世界転生と見習い神様・ナギ

#02 異世界で冒険者になりました

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 辺り1面が木に覆われ鳥のさえずりが響き渡る森に転送されたが、何処へ送られるか詳しく説明されていなかったことを思い出す。

「あぁぁぁ………何一つ詳しい説明をされていなかった………。
 ……とりあえず街を探してみるしかないよな……」
「おい、こんな森に1人だと危ないぞ。
 最近は魔物の動きも活発になってきているし、身を守る物を何一つ持っていないじゃないか」

 後ろから声をかけられ、振り返ると馬にまたがった男性が奇妙な物を見るような目でこちらを見ていた。
 正直に“転生したら此処に転送された”なんて言っても、相手に伝わらない もしくは頭のおかしい奴と思われる の2パターンが考えられる。ここは道に迷ったことにするのが最善だ。

「えっと、少し道に迷ってしまって……。
 近くに街があれば、そこに向かいたいと思うのですが…」
「まぁ、この森は道を間違えると瞬く間に迷う森だから無理もないか…。
 此処で立ち話も危険だ。俺は一応この先の王都へ行く予定だから、問題なければそこまで送ってやるよ」
「あ、ありがとうございます!」

 声をかけてくれた男性の名前はジンさんで、冒険者として依頼を受けているらしく、魔物討伐の依頼を終えて王都へ帰る途中に偶然僕を見かけて声をかけてくれたようだ。
 楽しく会話をしている間に王都に到着する。そこでは男女2人の傭兵が警備をしていた。

「安全の為に冒険者ギルドや商業ギルドの会員カードを、もしくは住人カードの拝見をさせていただきます」

 男性の傭兵にジンさんは懐から銀色をしたカードを取り出す。コレが身元確認に使われているのだろうか?こうしている合間に女性の傭兵の人に声をかけられる。

「そちらの方は、身元を証明出来るものをお持ちですか?」
「あ……えっと……」

 身元を証明する術を持っていない。どうしよう……異世界で放浪しながら過ごすことになるのか??

「あぁ、アヤトはあの迷いの森で迷っていたところを俺が保護したんだ。
 恐らく先日の魔王軍進行で焼失したあの村の住人で逃げる時に紛失したのだろう」
「そう、でしたか……。
 では此方で登録をしましょう。付いてきてください」

 案内された先には年季を感じる机と1つの石版が置かれていた。

「では、こちらの石版に片手を乗せてください」
「………うわっ!!」

 手を乗せると魔法陣が広がり、緑や青い光を放っている。

「魔力は……水や自然由来の魔法がお得意みたいですね」

 どうやら魔法陣の色でどんな魔法を得意に扱えるのか分かるらしい。

「……はい、これで登録が出来ました。以降はこちらを提示してくださいね」
「ありがとうございます。
 えっと、1つ質問をしてもいいですか?」
「良いですよ。ご不明な点がありましたか?」
「その…魔力で得意な魔法が使えることは分かりました。それで、もしも得意ではないと出た魔法を使う場合って何か不便な事があるのかと……」

 魔力で魔法の得意不得意が分かるのならば、不得意とされた魔法を扱うには何かしらのデメリットがあるのでは無いか。
 思い当たる可能性は、「そもそも使えない」か「使えるけれども魔力の消費量が増えるなどデメリットがある」の2つだ。

「そうですね……その場合は体への負担が大きくなるのであまりオススメ出来ませんね。使い過ぎると最悪の場合、命に危険を及ぼすので」

 デメリットが大きいのか……。生命に関わってくることは予想外だったけれども、これで間違った魔法を使って再び天使様と対面なんて展開を回避出来る。もし思考を読めたなら、あの天使様が「失礼ですね」なんて感じの言葉を言っているイメージが思い浮かぶ。

「お、無事登録出来たか。よし、俺はこれからギルドへ向かうがアヤトも一緒にどうだ?」
「あの……僕も冒険者ギルドへ向かいたいので、その場所へ案内してもらってもいいですか?」
「もちろん良いぞ!それじゃあ、これからは同じ冒険者仲間だな!
 俺のことはジンと遠慮なく呼んでくれ。無論、敬語はいらないぞ」
「うん。よろしく、ジン」

 ギルドへ向かう途中にジンから色々と王都の街並みについて教えてもらった。それらをまとめると……

 ・人々の暮らしを妨げる魔物を討伐する冒険者ギルドと、品々の運搬や土地の売買,回復薬などの開発と販売を主に行っている商業ギルドが互いに協力しながら運営されている
 ・この世界の何処かに神話時代から伝わる種族。
 〇神々に愛される幻獣と上位種『神獣種』
 〇自然を司り、エルフのような長命種を含む『精霊種』
 〇強力な魔力を持つ空の王者『龍種』
 〇魔力を持つ亜人『獣人種』
 〇長い年月をかけて魔力が象られ誕生する『神霊種』
 が今も尚暮らしている
 ・魔力はこの世界の中枢にある高い塔とその周辺が最も密度が高く、今まで何人もの冒険者達が調査に向かうが密度の高い魔力に体が耐えきれず撤退することが多く謎に包まれている

 大まかに分けると以上の3つに分類される。

「さて、此処が冒険者ギルドだ。それで隣は商業ギルド。
 俺は依頼の報酬を受け取ってくるからアヤトは新規登録をあっちの受付でやってみてくれ。俺も終わり次第向かう」

 そう言うとジンは少し離れた窓口に行ってしまう。ギルド内は多くの冒険者達で賑わっている。

「こちらで冒険者登録が出来ると聞いているのですが…」
「新規登録の受付ですね。ではこちらの水晶に手を乗せてください。登録された魔力を照らし合わせてギルドカードが発行されますので」
「こうですか?」
「こちらで大丈夫ですよ。えっと……ホウジョウ・アヤトさんですね。何か希望の職業はありますか?」
「うーん……どうしよう」
「人気のある職業ですと、戦士や魔法使いが多いですよ」
「よし、剣士にします!」

 転生前ではよくRPGで剣士をよく選んでいた。折角の転生だから新しい職業に挑戦してみようと思ったが、慣れている職業が1番良いという考えに至った。

「こちらがアヤトさんの冒険者ギルドの登録カードです。
 アヤトさんは冒険者に入ったばかりですので1番下のランクであるFからスタートになります。依頼はあちらのボードにランク毎に分けて掲示され、該当するランクとその1つ上のランクまで受けることが可能で、Eランク以上では3回以上依頼を失敗されると1つ下のランクに下がってしまいますので注意してください。
 1つ上のランク依頼を5回達成しますとランクアップになりますので、上位ランクを目指して頑張って下さい」

こうして、冒険者としての生活が幕を開けた
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