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釣りして出会ってブルドッグ

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「お~い、ナナ~」

「ナナさ~ん」


「うが~、あうと·おぶ·がんちゅう~・・・ん」


「もう午後だぞ」


「ふぁ~あ、お、末信すえのぶ桜子ようこちゃんをしっかり連れてきたか」

「こんなくっそ暑いのによく寝れるな、それと後で母さんたちも来る」

「ホッホッお友だちかいな」


 精霊バナナ·ガールのナナと同じく寝ていたおばあさんのことも2人に説明する。


「――知りあったって、よくホントに次から次へと」

「ナナさん、呼んでくれてありがとう」

「うん」


 さらに4人で話し合って30分後、千夏と友だちで同級生の向日葵ひまわりも集まる。


「んじゃっ、時間もあることだし何かやりますか」


 またどんな楽しいことをするのだろうと内心ワクワクの桜子と千夏、末信だけは変なことを言い出すんじゃないかと心配だ······。



 チャポンッ、



 し~ん、



 ミーンミーンミーン、



「まだかなー」

「末信うるさい」



 またまたし~ん、



 車の通り過ぎる音に周りの会話、セミの鳴き声などが聞こえる程に静かであった。


 そう、これはみんな揃って川で釣り。騒ぐばかりがギャルではない、ときに自然と心を通わせ静かに釣りをするのもギャルの道、とナナはいう。


「ナナお姉さん私の分までありがとう」

「気にしなくていいよ、向日葵ちゃん、ん?」


 さっそく竿に反応、

 すかさず引っ張りときには力を抜いて相手を少しずつ追い詰めていくナナは、


 ジャポーンッ、


「ヒット~ッ!」

「お、マジすげーナナーッ」


 見事キンブナを釣り上げた。

 その勢いに負けじと末信も掛かり、


「よっしゃ~釣ったぜ~!」

「やるじゃん末信」


「へへっ」オイカワを釣る。


「うわ~、すごいな2人とも~」

「あたしたちも頑張ろ向日葵ちゃん」

「うん」


 2人のヒットに桜子、千夏にヒマワリも釣りたくなってきて、このあと3人も続くように釣り上げていった。そんな盛り上がる釣りだったが、


「キャッ、なにか浮いてる!」


 ヒマワリの見た方向に目を向くナナも何かがうつ伏せになっているのに気づくと、濡れぬよう靴を脱ぎ近づいていく彼女に「おい、ナナ」と心配する末信を気にせず川に足を入れる。


ちめたい」


 浮いているブラウン調の毛皮をツンツンとそこらへんの棒でつつく、


「こりゃ犬ね」


 ジャプンッ、


「バウ?」


 頭を上げたのは顔の皺でわかるブルドッグであった。


「おう、どうした?」


 プルプルプルッと水を弾き、


「バウバウ」

「ふむふむ」

「バウ~」


「アイツがいつものようにケンカを売りに行ったから」


「バ~ウバウッ」川でもみてようかと思ったら足を滑らせて河川敷から転げ落ちたようだ。


「たっはっはっはっはっ、もう、間抜けなんだから~」

「ク~ン」

「まあまあ元気だせ、しゃあないわね」


 ナナは犬とともに川から上がってきて飼い主を探すと言い出したため末信と桜子が付いていき千夏と向日葵は釣りの続きをすることにした······。


「んで、その飼い主がケンカばかりしてるからもっと相手してほしいのか」

「バウ、ワン、ワン」

「ったくしょうもない飼い主ね」


 楽しそうに会話するナナとブルドッグに後ろで違和感を持っていた桜子。


「あ、あのナナさん、もしかして犬の言っていることが」


「ん、わかるわよ」


「ええっ!」


「わっ、おいバカッ、ナナッ」まずいっ、正体がと焦る末信。


「な~に驚いてんの、飼い主とかよく言うでしょ、『私にはこの子の言葉がわかるのよ』って似たようなもんよ」


「え、そういうことなんだ」

「そういうこと」


 何とか疑われずにすんでヒヤヒヤ者の末信、どうしてナナはあんなに強気でいられるのかわからないが自分も少しは見習ったほうが良いのだろうか考えてしまう。


 犬が流れてきた辺りから飼い主を探すことにして周辺を歩いていてら、


「ワンワン!」

「おっ、まてー」


 急に犬が走り出して見つけたと感づく3人も追いかける。


「おい、オレの犬知らねえか」


 どこかで見たことあるようなリーゼントで赤ティーのでかい男が子どもやお年寄りに怖声で話しかけていた。


「ワンワン」


「あん? おおーマッスル~心配したんだぞ~!」


「よかったな」


「ん、だれだっ、あーん・・・ああぁぁぁっ、魔法ギャルッ!」


「ああ、雑草っ」

草加くさかだっ!」


 以前ナナがスマホ歩きで当たってトラブった不良である。


「末信と林っ、この魔法ギャルと知り合いだったのか」

「うん、草加くんは学校ほとんどこないから」


 会話が始まろうとしてる中ナナは草加の前に出て犬を指差し、


「そのワンコちゃんが川に溺れてたのをあたしたちが助けたの」

「え、あ・・・へんっ、あっそう」


 助けてもらったにもかかわらず知らんぷりをかます態度に3人もムッとするが気にもしない草加。


「ったく、ありがとうくらい言えないの?」

「しるかよ、じゃあな」

「おこちゃま何だから」

「んだとっ」


 さすがのナナも呆れ果てたら、



 ガブッ、



「いってぇ~っ、なにすんだよマッスル~!」


「ワンッ、ワンッ!」


「ふむふむ、『男らしくない、しっかりしろ』だってよ」


「あーンッ、なんでお前がわかんだよっ、いってぇーっ!」


「ワンッ、ワンッ!」


「ちょっ、やめろマッスル、帰るぞ」


 ガブッ、


「いでーっ」帰ろうとすると、


 ガブッ、


「ちょっ、マッスルお前・・・」


 明らかにおかしい愛犬のマッスルと見つめ合う草加だが幼い頃からいつも一緒に育った、


 食事のときも、

 遊ぶときも、

 泣いたときも、

 疑うわけもない。


「マッスル、お前ほんとうに魔法ギャルの言うとおり・・・」


「マッスルはいつもあんたのことを心配して真っ直ぐ進んでほしいと思ってるわよ、ね?」


「ワンッ!」


「ほらっ」


「うう~」


 頭を抱えて悩む。


「だから、せめて自分の大切なペットを助けてもらった相手にお礼くらい言える男になりな、それが礼儀ってもんよ」


「・・・ありがとう、これでいいだろ、いくぞマッスル」

「ワン」


 しぶしぶお礼を言い帰ろうと後ろを向くと、


「今日は花火大会だから、時間があったらマッスルと見てみなよ。楽しいから」


 ナナは草加に言葉を送った。彼に届いていたかはわからなくとも、思いはきっと伝わったはず······。


「ねーねー桜子ちゃん」


 ボソッと話しかける。


「なんかこんな話しだったっけ」


「ナナさんにまかせれば大丈夫」


「さっ、2人ともっ」


「「は、はいっ」」


「いよいよ花火大会、一緒にみよ!」

 
うなずいて待ちにまった花火を観に元のブルー·シートまで戻る3人だった······。
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