夏にバナナから出てきたヤツは『2ヶ月間すませてください』と言うギャルの精霊バナナ·ガールだった。

ヒムネ

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ブルーシート·バトル

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 朝の8時、


「ここらへんでいいかな~」


 ブルーシートを右肩に持ちながら場所を考えていたのはご存知精霊バナナ·ガールのナナである。


 複合ショッピングモールに行ったときのトラブルは置いといて、パンフレットが目に入りそこに書かれていたのはの文字。
 そういうわけで今日24日の花火に備えて朝早く場所取りに来ていたのだった。


「よっしゃ」と座ると朝早いためパチンと日避けのビーチパラソルを出しセット、


「ふぁ~あ~んん・・・マジねむ、昼までお休みでもすっか」


 寝る。


 しかし、


「殺気っ!」


 カキンッ、


 ナナはとっさにビーチパラソルで受け止めたのは、謎のおばあさんが裏手に持った杖。


「ホッホッホッ、やりおるわい」


「くっ、何者っ」

「コラァッ、貴様っ!」


 おばあさんの後ろから屈強な筋肉質の男が4人あらわれて、


「このお方をどなたと心得る!」


「恐れ多くも花美はなび 夏子なつこ様でおられるぞっ、頭が高い、控えおろう!」


「控えろって、あたしそんなの知らないし」

「なんだと、コイツ」


 コキッコキッ、と指の骨を鳴らし仕掛けて来そうな男たちだったが、


「待てまて、待ちんしゃい」

「女将」

「まだまだだのう主ら、このおなごに手を出したら負けておったぞ」

「えっ! こんなギャルに」


「人、いや生きとし生ける物はけっして見た目で判断つかんものじゃて、なぁおなごよ」


「へ~、そこの4人とはレベルが違うみたいね」


「ホッホッホッ、当然じゃ、小奴らの師匠はわしじゃからな」

「でも、ブルーシートは譲れないっ!」

「・・・ここは昔からわしが雨の日も風の日も、男がよればそっぽを向き、また愛した男にそっぽを向かれ、かれこれ40年以上も前から取っとる場所、譲るわけにはいかん」


 急な展開のなか二人が早くもブルーシートをかけ激突する······。



「ごちそうさま、母さん今日は」

「そうよ~、花火大会の日だからナナちゃんが朝から張り切って場所取りしてくれてるわん」

「だからあたしは向日葵ひまわりちゃん呼んでくる」


 そうだったと思ったところで千夏も友だちを連れてくるというが末信すえのぶもナナに「あたしが場所取りするからあんたは桜子ようこちゃんを呼んできなさい」と言われていた。


「オレも午後には出ないとな~」


 好きな女の子を誘うのは嬉しさと緊張感でドキドキな気持ち。


 そして激闘のナナは、


 ズズズズズー、


「いや~おいしい~」

「そうやな~」


 ビーチパラソルの下でブルーシートに正座してお茶を飲んでいた。



 戦っているうちに面白がるナナに対しこんな若者がいたとはという懐かしさで互いを認め合ったのだ。


「あんたみたいな娘がまだおったとわ、嬉しい限りじゃ」

「あたしも楽しかったわよ」

「・・・昔は若者にもっと根性があったものじゃ」

「根性?」

「う~む、しかし今の若者は・・・」


 遠くを見るおばあさんは今の若者に題して淋しそうな眼だがナナは、


「そんなことはないよ、おばあちゃん」


 笑顔でそう言う。


「今の若い子は、いまの若い子なりにがんばってるのよ」

「う~んそうじゃが、感じるんじゃ、どこかフワッとして、こう根性がの~」


「今ってさ、なんでも物が良くなって若い子の行動とか情報が筒抜けだけど、たぶん中身は昔の子と変わらない。だっておばあちゃんも若いころ両親に『おまえは若い~』とか言われたんじゃない?」


 明るくも深いような言葉に昔の幻影を思い出したおばあさん。


「ホッホッホッ、そういえばそうじゃった、ワシのやることになんでも反対されたの~『世の中あまくない』とか『辛抱しろ』とかのう・・・そうかもしれん、ワシも頭がちと固くなってしまったかの」


「若い子は若い子で、案外じぶんたちで何とかするもんよ」


 世間話のように今の時代を語りながら美味しくお茶を飲み干す2人。


「ふぁあ~、おばあちゃんハイッ」

「何じゃマフラーかいの?」

「あたしここでこれ巻いて寝るけど、よければおばあちゃんもこれ巻いて寝る? これ巻くと涼しいのよ~」


 ホッホッホッと半信半疑でナナに貰ったバナナマークのマフラーをこの暑いなか巻くと、


「な、なんじゃこれは、身体が丁度良い温度になっていくような」

「でしょ~、良かったら使ってよ、んじゃお休み・・・ぐ~っ」


 ほんとうに面白い子じゃと笑いながらお言葉に甘えて寝ることにしたおばあさん。


「オ、オレたちは、ど、どうする?」


 忘れ去られキョロキョロする男4人衆だったが、
「自由にせい」とおばあさんの声で解散していった······。
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