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勝者

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「――ガツガツモグモグッ、うーんおいしい~!」

「ガツガツ食べるバナナグラサン1号! まさに肉食女王だぁー!」


 大食い対決は始まって、まず最初の1軒目は牛丼屋『牛丸うしまる』でバナナグラサン1号こと精霊バナナ·ガールのナナは開始早々ワンコイン牛丼をガツガツ食べ始めた一方大食い選手のもち子は、


「ハフ、ハフ・・・御口フキフキ」


 ご飯と牛肉を乗せたはしで口に運ぶその姿はきれいで美しくキラキラと観客を魅力する。


「この姿こそホントウの和風びじーんっ、日本の失われた古代女性はここにいたぁ~っ!」

「おかわり~!」


 ナナが一杯目を早くも食べ終わると、


「おかわり、おねがいいたします」


 そのすぐにもち子も牛丼を頼む。よく噛まずにあくまでも美味しく食べていたナナの方が若干はやく、もち子はそれでも動揺せずに自分のペースで華麗に食べていく。


「おっかわりーっ!」

「早いはやいっ! バナナグラサン1号はもち子選手を少しづつ突きはなーすっ!」


 しかし3杯目を見るとさすがにお腹は満たされてきた。しかしまだたったの2杯しか食べていない。


 という事で、パチンッ☆


 魔法で自分の胃を大きくし、


「よ~しこれでまだまだ食べるぞー、おりゃーっ!」


 再度ガツガツ食べ始める······。



「あれー? 千夏とナナどこいったんだ?」

「う~ん、迷子かしらん」

 そんなバカなと買い物を終えた末信ママを休憩椅子に座られせ軽く入り口から出口まで探してみることにした。


「どこだー・・・イベント会場、なになに大食い選手桜田さくらだ もち子、ふ~んそんな人が来てるのか」


 すると牛丼屋の隣のレストランで人だかりができていて何となく行ってみると、


「わおんっ、素晴らしいバナナグラサン1号はペースが落ちずにガツガツとハンバーグにフォークを刺していくぅーっ!」


 元気なアナウンサーに引きつつも末信が人を避け除くと、


「へ~着物着て綺麗な人だな~、あれが挑戦者か~あっちも着物着て・・・なんで顔マスク?」


 世のなか変人はいるものだ。名前も変だしおかしな奴であんなのと知り合いがいたら見てみたい。すると後ろから服を掴まれ、


「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

「ん、あっ、千夏~、探したんだぞ」


 小声の千夏。


「ごーめーん、そんなことよりこれ」

「ああ、大食いな」

「じつは、あっちの挑戦者、ナナお姉ちゃんなの」


「はぁあ?」


「しーっ、だからもう少し待っててよ」


 変人と思って、しかもその知り合いは自分、頭を抱えどうしてこんなことにと呆れる。仕方ないので千夏を説得し末信ママと先に帰ってもらい自分が見守ることに······。



 依然としてナナが一皿多く食べて3軒目、4軒目と進み食べていく2人。


「5軒目パンを~っ、一口、二口、三口で平らげる両選手~っ、しかーしパンはまだまだ運ばれてくるぞ~っ!」

「アム、アム、クリームパンもさいこう~っ!」


 お腹がパンパンになれば魔法で胃を大きくしているナナが変わらず美味しそうに食べているがもち子も、


「あむ、あむ、御口フキフキ」


 とこちらも変わらずのペースにさすがのナナも焦りを感じる。


 こっちは魔法を乱発してるのに大食い選手を名乗るだけあって全然ペースが落ちてない、さらに目を合わすとニッコリ余裕スマイル。

 このままではらちがあかない、


「お~っとっ、ついに手が止まったバナナグラサン1号ぉーっ!」


 突然と止めた手に観客や末信も終わりだという空気になり、もち子がナナの食べたパン20個を21個目を食べた時点で手を止め様子を見る。


「どうしましたバナナグラサン1号、もうリタイヤですか? そう言っていただければ試合は終了です」


 黙するバナナグラサン1号に早くリタイヤしろと観客が思ったとき、


「パンッ、100個おかわりぃーっ!」


 えーっ、とお客とアナウンサーは驚きどうしましょうとお店のスタッフも動揺、とにかくとパンを大量に用意すると、


「パクッ、パクッ、パクッ!」


 なんと運ばれてきたパンを一口で高速飲みするという普通では考えられないようなことをするナナに、もち子も手が止まり驚きの表情。


 1分間に10、20だろうか止まることなく千手の如く食べていると、


「もうパンが切れました」スタッフがお手上げで会場のスタッフたちも前代未聞に動揺しているそんな中で手がスッと手を挙げる者が、



「リタイヤいたします」



 その女性はもち子だった。


「・・・あの~、もち子選手、その~リタイヤということは負けを認めると?」


 信じられないこと続きでつい2度聞きしてしまうアナウンサー、


「ええ、あのような食べ方はウチにはできません。それだけでなくまだ余裕がお有りのようで・・・なんていうかウチ圧倒されてしまいましたわ、ホッホッ」


 そんなわけで「試合しゅ~りょうぉぉぉ~っ!」


 勝負はバナナグラサン1号が圧倒的な食べっぷりとブラック·ホール胃袋、その正体は魔法だが勝利を手にした······。


 元の会場に戻り観客の拍手を送られるバナナグラサン1号に対戦相手のもち子が、


「驚かされましたわ、バナナさん」

「いえいえ、そんな~、あなたの食べっぷりに圧倒されたのはこっちよ」

「ウフフ、勝ったのにおかしな人・・・あの」

「ん?」

「ぜひ、正体を見せてはいただけないのでしょうか」

「ごめんね、大衆だといろいろめんどいから」

「ならせめてサングラスだけでも」


 それならば大丈夫だろうと、


「ホイ、これでいい?」


 サングラスを取りウインクのサービス。


「お美しい瞳です」

「ありがとう、あ、じゃあこれおまけ」

「はい?」 


 パチンッ☆


 今度はナナがもち子の手に7本束のバナナを出した。


「まあ、あなたマジシャンかなにかで」

「う~んまぁそんなとこ、あなたのこと応援するからこれからも頑張って、じゃ帰るね」


「それではっ、バナナグラサン1号さんに是非いろいろ訊いちゃいましょうっ!」


 アナウンサーは訊く気満々。しかしナナも負けじと、


「残念っ、私は平和を愛するバナナグラサン1号はいろいろと大変なのだーっ!」

「ちょ、ちょっとっ、少しくらい」

「ではっ、さらばっ! 縁があればまた会おうーっ!」


 着物を脱ぎ捨て男どもが「おーっ!」と唸るが、そこにバナナグラサン1号の姿はなかった。


「あーっ、逃げられた、み、みなさんそこらへんに居ないかさがして~」


 焦るアナウンサーを見ていた末信の右肩がツンツンと感じて振り向いたら、


「ん? ナナ!」

「よ、じゃあ帰ろうか」

「はぁ~、おまえなんであんなことを~」


 逃げられて焦る会場をよそに、末信ママと千夏が先に帰ったと知り2人は複合ショッピングモールを後にした······。


「ただいま~」

「おかえり、ナナお姉ちゃん勝った? 負けた?」

「もちろん勝ったよ~」

「さすが!」

「まあね」


 インチキで勝ったくせにと細めでナナを見ていた末信。この日は何事もなかったかのように過ごしていたが次の日そんなナナに天罰が。


「「うわぁぁぁっ!」」


 森田家に悲鳴、それは、


「お姉ちゃん・・・だよね?」

「ナナ、ちゃん・・・?」

「だから余計なことするなって」


「ごべーん、太ちった」


 太った、しかしそれは普通の太り方ではではなく声も図太く何故かデカい相撲取りのようになってしまった。


「あ~きつ・・・ちょっとお腹痛くなった、トイレ」


 扉へ進もうとしたら、


 ガタッ、


「ヤバッ、入り口に挟まった助けて~っ!」


「はあ? 何やってんだよおまえはっ!」


「お兄ちゃんお母さん引っ張るよ、せーの、うーん、せーの、う~ん!」

「イタたたっ、イタたたっ」


 大食いなんて2度と、二度としないと後悔するナナだった······。
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