上 下
7 / 50

あなたになりたい(後編)

しおりを挟む
 東京都ギャル区ギャル道ギャルの街、に着いた林 桜子ようこと精霊バナナ·ガールのナナ。


「着いたわね、ギヤルの聖地よ、聖地」

「う、うん」


 ギヤルではなくギャルだと思う桜子は初のギャル姿、当然きたのも初めてで緊張し離されないようにナナのシャツを掴んでいた。


「12時45分か、ちょっとお昼には遅いけど食べよ」

「は、はい」


 そう言って駅前店『ライオン♡ギャルそば』に入る······。



 ガラガラガラッと扉を開くと、


「「いらっしゃいませ~」」


「おっ!」

「な、なななっ!」


 なにぬねの、は冗談として和風な居酒屋の雰囲気にみな店員さんはギャル、だが桜子がもっと驚いたのは全員ライオンの被り物をしていたことだった。


「なんなんですかあれは」

「ライオン」


 それはそうだけどと内心で答え桜子が椅子に座るとナナも反対に座る。


「なんかすごいところですね」

「そうね、どれどれ」


 小声でナナに話すもメニューを開いて2人は同じ『ギャルそば』にした。


「はぁ~」なんかとんでもない所に来てしまったように感じていると、

「はい、お客さん」と水を置くライオン·ギャルに「キャッ」思わずビックリ。

「これって、ネイルですか?」

「ああ、そうですよ、お客さんウチの看板読まなかった?」

「はい、すいません」



『このライオン♡ギャルそば店におきましては、ライオンにより近づくため店長および店員の方々みな、接客しております。ご了承の上お入り下さいますようお願いもうしあげます』

「――てね、ですから、ほら」



「うわ」ホラっと足を見せてきた店員はサンダルでライオンの爪のようなネイルをしている。


「パないわね、こだわりが」

「はい、私たちの店長はやると言ったらやるギャルなので」


 へ~っと感心しながら店のこだわりも聞いてメニューを待つ2人·······。


「――焼きそば、じゃなくてギャルそばも美味しかったですね」

「うん、見た目にかまけないでちゃんと料理もしっかりやってたし、また来たいわね」


 お腹も満たし次に駅前を出ようとしたらナナが「ちょっと待ってて」と『ライオン♡ギャルそば』の方へと戻っていく、忘れ物だろうか。


「ふぅ、あっつ」

「夏はエアコン効いててもマジかぶりもんきついし」


 さっきの店員ライオン·ギャルたちも汗水たらしていた。そこに、


「オッス、おつかれさまみんな、それっ」

「え、さっきのお客さんこれは」

「スポーツ·ドリンクよ皆で飲んで、あとここに八本バナナ置いてくわ、じゃね」


 背中を見せると店員は、


「そんなわるいですよお客さん」

「じゃあ、かわりにお客さんを満足させてよね。それでお代はいらないから、チョモロハ」


 笑顔で振り向き夏の暑い中の彼女たちに言葉を残しナナは去っていった。


「「チョモロハ~ッ、またのご来店をお待ちしておりますっ!」」



 ――チリンチリーンと風鈴がなる静かな我が家、


「あ~あ、暑いぜ・・・ったく」


 お昼をたべ終わったあとも末信すえのぶはまだぼーっと青空を眺めていた。
 言いすぎてしまった、警戒したとはいえたくさんの失礼な傷つくような事を今思えば言っていた。


「オレでも出ていくよな~、傷ついて」


 だが後悔してももう遅い、彼女は······。



「ウオラーッ、ドリフトよーっ!」


 楽しく遊んでいた。


「う~ん、おいつけな~い」

「ふっ、まだまだね、桜子ちゃん」


 ゲーセンのレーシングゲームでナナは1位、桜子は6位という結果に終わった。


「はぁ~、負けちゃった」

「ワッハッハ、残念、ギャルレベルがまーだまだ足りないわー」


 さすがの桜子でもちょっと悔しくてムッときて自分に出来そうな機材を探す。ちょっとはナナさんをギャフンッやられた~、と言わせたいと鋭い眼つきで探しだしたのは、


「ナナさん、あたしあれやる」


 それはピアノ、正しくはデジタルピアノだが桜子はお金を入れ曲を選び、弾くっ。


 ピロロロロロロロッ、最初はデジタルに手を慣らしていくと次の瞬間、指がまるで一つひとつ意思を持つか如く弾いていく。


「ひえーっ、マジーッ・・・バビるんですけど」


 レベルの高い曲を弾き始め、静かで少し寂しさの伝わる曲は彼女の性格をあらわしているようだった······。


「ブラボーじゃん桜子ちゃん!」

「えへへっ、でも難しかった」


 弾けてた弾けてたとテンションが上がった2人、そんな彼女たちに、


「すんませーん」


 振り向いて見た2人の目線にはギャル男がギターを持っていて、他にもギャルたちが集まり、


「ナナさん、これは」


 桜子は突然の事でちょっと引くと、


「ははーん、なるほど」


 ナナはよくわかったようで桜子を少し待たせて彼らと話し込んだ。結果、


「さぁ~、みんな歌って、弾いて、踊るわよっ!」


 彼らは桜子のピアノの上手さに一緒に弾きたくなったのだった。そしてナナも含めた5人クインテッドが始まり小さな音楽フェスを楽しく遊びつくした······。


 楽しい日はあっという間におわり······。



「――今日はありがとうナナさん、私すんーごく楽しかった」

「ギャルも様になってきたね」


 嬉しそうに微笑む桜子と家に着くと、


「あっ、ナナっ!」


「よっ、今帰ったよ~」


「お、おまえ、出ていったんじゃ」


「うん、外に出ていったよ」


 なあんだと安心したのか末信は、



「へんっ、どうせまたそんなギャル仲間とつるんで」

「ちょっ、ちょっと」


 焦るナナ、



「アホみたいなこと」



 ピキッ、なんの音か、



「ナナさん今日はありがとう、ワタシ帰るっ!」



「え・・・えっ、え! まさか・・・桜子、ちゃん?」



「あちゃ~」



 桜子はナナには笑顔で、末信には怒って帰ってしまった。


「そ、そんなっ、まってよ、桜子ちゃぁぁ~ん」


 こうして珍しくナナと桜子のギャルの旅は終着点で失敗してしまったようだ······。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多
ライト文芸
 恋人に振られて独立を決心!  尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!  庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。  さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!  そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!  古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。  見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!  見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート! **************************************************************** 第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました! 沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました! ****************************************************************

世界で俺だけが幼馴染の事を知らない

なつのさんち
ライト文芸
ある日の朝、起きると知らない女の子が俺の上に跨っていた。え、誰!? 知らない女の子は俺の幼馴染らしい。妹や両親が口を揃えて言う。 いやいやいや、忘れた訳ではなくて最初から知らないんだけど。 とりあえず学校へ行くが、みんな自称幼馴染が元からいるかのように振舞っている。 もしかして、世界で俺だけが幼馴染の事を知らないのか!? そしてこのタイミングで転校生が。何とこちらは知っている女の子でした。 知らない幼馴染と知っていた転校生が俺を巡ってひっちゃかめっちゃかする、そんなお話が突然変化します。

月と太陽

もちっぱち
ライト文芸
雪村 紗栄は 月のような存在でいつまでも太陽がないと生きていけないと思っていた。 雪村 花鈴は 生まれたときから太陽のようにギラギラと輝いて、誰からも好かれる存在だった。 そんな姉妹の幼少期のストーリーから 高校生になった主人公紗栄は、 成長しても月のままなのか それとも、自ら光を放つ 太陽になることができるのか 妹の花鈴と同じで太陽のように目立つ 同級生の男子との出会いで 変化が訪れる 続きがどんどん気になる 姉妹 恋愛 友達 家族 いろんなことがいりまじった 青春リアルストーリー。 こちらは すべてフィクションとなります。 さく もちっぱち 表紙絵 yuki様

蝶の羽ばたき

蒼キるり
ライト文芸
美羽は中学で出会った冬真ともうじき結婚する。あの頃の自分は結婚なんて考えてもいなかったのに、と思いながら美羽はまだ膨らんでいないお腹の中にある奇跡を噛み締める。そして昔のことを思い出していく──

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

愛すべき不思議な家族

桐条京介
ライト文芸
 高木春道は、見知らぬ女児にいきなり父親と間違えられる。  人違いだと対応してる最中に、女児――松島葉月の母親の和葉が現れる。  その松島和葉に、春道は結婚してほしいと頼まれる。  父親のいない女児についた嘘。いつか父親が迎えに来てくれる。  どんな人か問われた松島和葉が娘に示したのは、適当に選んだ写真にたまたま写っていたひとりの男。それこそが、高木春道だった。  家賃等の生活費の負担と毎月五万円のお小遣い。それが松島和葉の提示した条件だった。  互いに干渉はせず、浮気も自由。都合がよすぎる話に悩みながらも、最終的に春道は承諾する。  スタートした奇妙な家族生活。  葉月の虐め、和葉の父親との決別。和葉と葉月の血の繋がってない親子関係。  様々な出来事を経て、血の繋がりのなかった三人が本物の家族として、それぞれを心から愛するようになる。 ※この作品は重複投稿作品です。

処理中です...