勇者に恋した魔王の配下

ヒムネ

文字の大きさ
上 下
65 / 66

告白

しおりを挟む
「……さっきネモネアが走り去ったあと、僕はソレイルに……好きって、告白された」


 ソレイルがあんな状況の中で告白するなんて、やっぱり凄いねソレイルは、泣いていたあたいと違って強い人。

「けど、断った」

「……どうしてよ」


「好きな人がいるから……」


「……だ、誰よ、す、好きな人って」

「え……それは……その」

「は、はっきりしたらっ、勇者のクセに」

「そ……そうだっ、ネモネアが『ここで待ってて』って言ってたから、ネモネアから話して」

「あっ、あ~ずるい……でも、ぐすっ、そうだったね、じゃあ……あたいが死んじゃった時にその~……何か言ってたでしょ」

「え……え~っと~」

「記憶が薄くて覚えてないの」

「そそ、それは~……」


「もうっ……あ、あたいが死ぬ間際にさ、す、好きって言ったあとの答え、おしえて」


「……愛してる」


「え……もう一度言って」


「あ、愛してる……って言ったんです」


 ずっと聞きたかった言葉……。

 かなり遠周りしたけどこの時のために頑張ってきたんだもん……。

 すごく嬉しくて幸せ……。


「ネモネア!」

「わっ……アヴエロ」

「ずっと、こうしてあげたかった。なのに一緒に教会にいたとき……度胸がなくて抱きしめてあげられなかった」

「臆病すぎよアヴエロ……どれだけ、まってたと思ってるの」

「ごめん……そんな僕のために頑張ってくれて、生きてこの場にいてくれてありがとう」

「うん……うん!」


「……ネモネア肌冷たいね」

「夜なんだから、ちょっと寒いの」

「じゃあ……」

「これ……なつかしい」

 抱きしめてくれたアヴエロはとっても温かかった。

 そしてあたいをマントで包んでくれた。

 今でも覚えてる、アヴエロがあたいにマントで包んでくれた時を……。


 あたいとアヴエロは崩れた教会の崖端で2人で座った。

「……アヴエロ」

「ん」

「魔界に閉じこめられたあと、何してたの」

「旅……いや」

「やっぱりそうなんだ」

「……諦めてた」

「え、アヴエロが」

「うん、ネモネア死んじゃった後、封印されてたフラデーア様が御礼と現れて魔界で魔王シャンイレールを倒す事を条件に生き返らせてくれた。でも、魔王に魔界からツオーゴに戻れなくされて、絶望した」

「アヴエロでも絶望するのね」

「でもそんなとき……ふと、目が覚めたネモネアが知ったら、何がなんでもまず行動するだろうなって思えた……そしたら、頑張らないとって」

「そ、そう……」

「違うな……ネモネアにすぐ会いたかったからかな。あってネモネアのそばに、いたかった」


 ドサッと言われた瞬間、隣のアヴエロの胸にあたいは頭を置いた。

「ネ、ネモネアッ、どうしたんですかっ」

「……なんか嬉しくて安心したの」

「あ、頭を、あげ」

「もう少しこうさせて、おねがい……」

 あたいが行動したのは待ってると不安だったから。

 あと、みんな消えちゃってシスター・カルタやジュリとかブリジットに泣き顔を見せたくなかったから。心配させちゃうし。

 ほんとうはいつも何やってんだろって思っちゃうときもあった……。

 なんかいままでの不安が全部吹き飛んで彼の胸で目を閉じる。もうこうしてるだけで気持ちいい……。


「――ネモネア太陽だよ、ネモネア」

「ぐう~……」

「ネモネア……しょうがないですね」

 朝日が観えても気持ちよく寝ちゃったあたいに、風邪を引かないようにとマントを肩にかけてくれる優しいアヴエロ。そんなあなたに出会えて、ほんとうによかった。

「……アヴエロ、すき」

「僕もネモネアが大好きです……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

せっかくですもの、特別な一日を過ごしましょう。いっそ愛を失ってしまえば、女性は誰よりも優しくなれるのですよ。ご存知ありませんでしたか、閣下?

石河 翠
恋愛
夫と折り合いが悪く、嫁ぎ先で冷遇されたあげく離婚することになったイヴ。 彼女はせっかくだからと、屋敷で夫と過ごす最後の日を特別な一日にすることに決める。何かにつけてぶつかりあっていたが、最後くらいは夫の望み通りに振る舞ってみることにしたのだ。 夫の愛人のことを軽蔑していたが、男の操縦方法については学ぶところがあったのだと気がつく彼女。 一方、突然彼女を好ましく感じ始めた夫は、離婚届の提出を取り止めるよう提案するが……。 愛することを止めたがゆえに、夫のわがままにも優しく接することができるようになった妻と、そんな妻の気持ちを最後まで理解できなかった愚かな夫のお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25290252)をお借りしております。

当然だったのかもしれない~問わず語り~

章槻雅希
ファンタジー
 学院でダニエーレ第一王子は平民の下働きの少女アンジェリカと運命の出会いをし、恋に落ちた。真実の愛を主張し、二人は結ばれた。そして、数年後、二人は毒をあおり心中した。  そんな二人を見てきた第二王子妃ベアトリーチェの回想録というか、問わず語り。ほぼ地の文で細かなエピソード描写などはなし。ベアトリーチェはあくまで語り部で、かといってアンジェリカやダニエーレが主人公というほど描写されてるわけでもないので、群像劇? 『小説家になろう』(以下、敬称略)・『アルファポリス』・『Pixiv』・自サイトに重複投稿。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...