勇者に恋した魔王の配下

ヒムネ

文字の大きさ
上 下
51 / 66

家族との再会

しおりを挟む
 ――それは、女神フラデーアが魔王シャンイレールと宇宙で戦っていたときだった。

「生命を脅かす事に溺れた、可哀想な魔王……」

「弱者に寄り添うことしかできない哀れな女神……決着をつけよう」

「光よっ!」
「闇よ……」

 強力な力がぶつかり合おうとしたとき後ろにフラデーアの後ろ目掛けて魔法が飛んできた。

「はっ、あなたは……ぐふっ!」

「よそ見か、フラデーアッ!」

 振り向た隙にフラデーアを闇が貫く……。

「な、なぜ、シスター・ファス、が……」

「フッフッフ」

「全てはだよフラデーア」

「シャン……イレール……」

「ハッハッハッハッハッ……」

 こうして女神フラデーアはその命を散らせた……。


「――フフッ、ショックかしらネモネア」

「クレマッ」

「でも安心して、あんたはあたしが殺してあげるから」

「……ああそうかい」

 こっちは頭が纏まらないのに、こうなったらクレマを早く倒すしかない。

「ならやってみなクレマ、あたいもあんたを倒す」

「ネモネアァァァッ!」

 浮いているクレマが鎌を引いて突っ込んでくる。あれは鎌を振り下ろすという事。

「ハアァァァッ!」

 思ったとおりに振り下ろしてきた。右手の竜爪で鎌を受け止めようとした。

「え、鎌がっ、消えたっ?」

 鎌の刃の部分は消え空振る。

「隙ができたわねっ、終わりよっ!」

 再び刃が洗われて斬り上げる。右手は空振って使えない。


竜の息吹ドラゴン・ブレスっ!」

「キャアァァァッ!」

 口から炎を吐き出した。


「終わりだぁぁぁっ!」

「やられる……」


 斬り裂かれたのはクレマの魔王の鎌と闇の法衣。大人びた顔も戻り浮けなくなったクレマは当然地面へと落ちていく。

「ああぁぁぁっ……ネモネア……」

「あたいの勝ちだ……」

「どうしてよ……」

 クレマを助け、そのまま地上に降ろしたあたいをまだ睨んでる。


「なんで……なんでまた助けたのよっ!」

「……わからない」

「……あんたの妹って言ったから? はんっ、あまいのね」

「似てるんだ……」

「顔の事なら、両親が一緒なんだから」

「ちがう……両親に捨てられた時、必死に魔性の森で、怖くて、1人になりたくなくて、悲しくて、許してもらおうと叫んでた……あの時のあたいに」

「な……なによ……それ」

両親あいつらに捨てられるのが怖くて必死なんだろ……」

 黙って両手を付き地面に顔を向けたクレマ。負けたのが衝撃だったのかもしれない。でもツオーゴの為にも負けるわけにはいかないんだ。急いでモントたちの加勢に行かないと。


「……そうよ……でももう終わり……」

「クレマ……」


「もう……あんたに負けたあたしは……」

「やっぱり駄目な娘だよお前は……」


「こ……この声は……」

 次元の穴が出現しそこから現れたのは、幼い過去の記憶が蘇ほどあたいが忘れたくても忘れられない魔族の2人。

「ウフ、久しぶりね、え~っと」

「ネモネアだよ、たしか」

「……父さん、母さん……」

 かつてあたいを魔性の森に捨てた両親だった。こんな最悪の再開をするとは、思ってなかったよ……。


「お父さん、お母さん……」

 怯えたようなそれでいて悲しそうな顔をしているクレマだけど、あたいも気持ちの中は複雑だった。

 あの頃の幼いあたいだったら喜んだかもしれないけど、けっきょく魔性の森で命がけで生き残りボスになるまで顔も見せずいた両親。
 嬉しさはない、でもあの幼なかったあたいの部分はそうでもないのかも。

「近づくなよクレマ、お前はやっぱりダメだ」

「お父、さん……」

「シッシッ、ツオーゴに住むなり魔界に住むなり勝手にしな」

「ま、まってよっ、お母さん!」

「あたしをお母さんなんて呼ぶなっ、この役たたずのガキがっ!」

「うっうっ……」

「……あんた達……まだ……」


「なぁ、ネモネア~」

「……なんだ」

「捨てたのは謝るから~、あたし達と来ない? 家族じゃな~い」

 こんなに、こんな奴等があたいの両親。こいつらには捨てられた娘の涙を知ってるのか、捨てられても信じて待った娘の気持ちが。

「そうだよネモネア、私達と来なさい」


「……ほら、立てよクレマ」

「うっうっ、ネモネア……もうあだじは」

「あんたのやった事は許されない。けどそれはあたいも同じだ。でも捨てられたクレマはやり直すことはできる」

「ちょっとネモネアお母さんに無視?」

「そうだよ、そんな出来損ないなんかほっといて、なっ、なっ?」

 スーッ……、


「あんたらなんかっ、死んじまえぇっ!」


 これでもかと大声で言ってやった。もう、両親なんてどうでもいい。


「でも……ぐすっ」

「今は哀しんでる場合でもないんだ、しっかりしろ」

 たぶんクレマの心情はまだうまく整理出来てないはず。でも、今は一刻も早く事態を解決するのが先なんだ。

「「ネモネア」」

「なんだよ……あんたたち」

「こ、こっちに、なっ!」
「そ、そうよ、ネモネア、早くあたしたちと」

「あんたらと話す言葉ない、消えろ……消えないなら、この竜爪で切り裂く……」

「「ヒィッ!」」


「いくぞクレマ」

「……うん」

 あたいはクレマと共に両親とすれ違う。会ってない両親に心の奥底で何かを期待していた気持ちは無かったといえば嘘になる。でももうこれで決別。
 アヴエロやシスター・カルタに助けられて、こんな奴等にならなくて良かったと心底、思っていた。


「よし、このまま崖に……」

「ネモネア、あたし……待ってっ……」


「エメール……なんだ、こ、この寒気は……」

「か、感じた事のない、重く、底知れない……支配欲……モント・プリンセス」

「フフフッ、ついにあの方がこの地上に降り立つのだ」

 目の前に、今度は美しいと思うほど黒い禍々しい異次元の穴が。あたいとクレマ、デニルエールと戦っていたエメールやモントも禍々しい暗黒の気配と底のしれない恐怖を感じた……。

「――竜神よ、感じるか……」

「虎神、ああ感じる、奴の何よりも深い暗黒の意思をな……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

ファンタジー
「詰んだ…」遠い眼をして呟いた4歳の夏、カイザーはここが乙女ゲーム『亡国のレガリアと王国の秘宝』の世界だと思い出す。ゲームの俺様攻略対象者と我儘悪役令嬢の兄として転生した『無能』なモブが、ブラコン&シスコンへと華麗なるジョブチェンジを遂げモブの壁を愛と努力でぶち破る!これは優雅な白鳥ならぬ黒鳥の皮を被った彼が、無自覚に周りを誑しこんだりしながら奮闘しつつ総愛され(慕われ)する物語。生まれ持った美貌と頭脳・身体能力に努力を重ね、財力・身分と全てを活かし悪役令嬢ルート阻止に励むカイザーだがある日謎の能力が覚醒して…?!更にはそのミステリアス超絶美形っぷりから隠しキャラ扱いされたり、様々な勘違いにも拍車がかかり…。鉄壁の微笑みの裏で心の中の独り言と突っ込みが炸裂する彼の日常。(一話は短め設定です)

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

神様のサウナ ~神様修業がてらサウナ満喫生活始めました~

イタズ
ファンタジー
定年を機に、サウナ満喫生活を行っていた島野守。 極上の整いを求めて、呼吸法と自己催眠を用いた、独自のリラックス方法『黄金の整い』で、知らず知らずの内に神秘の力を身体に蓄えていた。 そんな中、サウナを満喫していたところ、突如、創造神様に神界に呼び出されてしまう。 『黄金の整い』で得ていた神秘の力は、実は神の気であったことが判明し、神の気を大量に蓄えた身体と、類まれなる想像力を見込まれた守は「神様になってみないか?」とスカウトされる。 だが、サウナ満喫生活を捨てられないと苦悶する守。 ならば異世界で自分のサウナを作ってみたらどうかと、神様に説得されてしまう。 守にとって夢のマイサウナ、それが手に入るならと、神様になるための修業を開始することに同意したとたん。 無人島に愛犬のノンと共に放り出されることとなってしまった。 果たして守は異世界でも整えるのか? そして降り立った世界は、神様が顕現してる不思議な異世界、守の異世界神様修業とサウナ満喫生活が始まる! *基本ほのぼのです、作者としてはほとんどコメディーと考えています。間違っていたらごめんなさない。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

迦国あやかし後宮譚

シアノ
キャラ文芸
旧題 「茉莉花の蕾は後宮で花開く 〜妃に選ばれた理由なんて私が一番知りたい〜 」 第13回恋愛大賞編集部賞受賞作 タイトルを変更し、「迦国あやかし後宮譚」として現在3巻まで刊行しました。 コミカライズもアルファノルンコミックスより全3巻発売中です! 妾腹の生まれのため義母から疎まれ、厳しい生活を強いられている莉珠。なんとかこの状況から抜け出したいと考えた彼女は、後宮の宮女になろうと決意をし、家を出る。だが宮女試験の場で、謎の美丈夫から「見つけた」と詰め寄られたかと思ったら、そのまま宮女を飛び越して、皇帝の妃に選ばれてしまった! わけもわからぬままに煌びやかな後宮で暮らすことになった莉珠。しかも後宮には妖たちが驚くほどたくさんいて……!?

宮廷から追放された魔導建築士、未開の島でもふもふたちとのんびり開拓生活!

空地大乃
ファンタジー
旧題:未開の島に追放された宮廷建築士、懐かれたもふもふとのんびり開拓生活を送ります~培った建築技術で豊かになった島を王国が羨ましそうに見ています~ 師匠から受け継いだ魔導建築の技を活かし、宮廷建築士として仕えてきたワークだったがある日突然クビを言い渡される。 「お前の施工費は高すぎる。もっと安くて割のいい連中がいるからお前は用済みだ」 「ワーク。お前が材料費などを水増し請求し私服を肥やしていたのはわかっている。よって貴様を追放処分とし島流しの刑に処す」 クビにされるどころか大臣や王に濡れ衣を着せられる始末。ワークは自分が追放されればあらゆる建造物はその機能を果たせなくなりとんでもないことになると告げるが、まったく信用されることなく結局島流しを受け入れることとなった。新天地となった未開の島で勝手気ままなDIY生活を始めるワークはなぜか懐いてくるもふもふ達と一緒に魔導重機を駆使して島の開拓を進めていく。その内に、いつの間にかドワーフの姫と王に気に入られ、ドワーフ国専属の魔導建築士として手腕を振るい島の開発も進んでいき島がどんどんと豊かになっていった。 一方で元の王国はワークの危惧したとおり国家存亡の危機に見舞われることになり崩壊の一途をたどることとなるのだった――

【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです

鳴宮野々花@初書籍発売中【二度婚約破棄】
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。 十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。 そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり────── ※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。 ※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...