勇者に恋した魔王の配下

ヒムネ

文字の大きさ
上 下
47 / 66

勇者のメッセージ

しおりを挟む
 あたいらにも竜神ブラック・ドラゴンが誰かとやり取りする声が聞こえてきた。

『……その声はデュオン、竜神か』

「ひさしいなブリッド」

『なんのようだ、貴様から話し掛けてくるとは……気持ち悪い』

「フンッ、今はこっちに珍しい客人が来てな」

『客人……ほう、それはもしや魔族の女か?』

「フッ、気配を感じなかったのはやはりそちらにいたからか……ネモネアよ」

「竜神様……いったい……」

『主がネモネアか……』

 あたいに話しかけてきたのは竜神じゃない、どうやら虎の神様みたい。

「あたいがネモネア、です……」

『我は虎神ホワイト・タイガー、異世界カザンを管理する神』

 今度はカザンっていう異世界があるみたい。あたいは生きるのに必死で魔性の森にずっと居座ってたのに、世界ってあたいが思うよりも遥かに広大なんだな。

『ネモネア、どうやら間違いないようだ』

「な、なにが……」

『勇者アヴエロからの言葉を代わりに伝えよう』

「アッ、アヴエロからっ?」

『勇者アヴエロとその仲間は……』

 いまアヴエロと仲間たちは新しい力を得るための特訓をしている。それは魔王を倒すためでもあり魔界から抜けるため、って。

「特訓して、魔王を……」

 アヴエロらしい、きっと魔界の人々を助けて周ってたんだろうな。自然と笑みがこぼれてくる。死んだとかじゃなくてホッと安心して力も抜けてくる。

「よかった……アヴエロ」

『勇者アヴエロに世界の事を話したとき、竜神のところにネモネアが来る可能性を我に話していた』

「えっ……」


『ネモネアが目を覚ましたら、じっとしてられないと思って、おそらく……いや必ず竜神様の元に辿り着くでしょうね。ですから――。ネモネアも竜神様の竜力を極めてほしい』


「竜、力……」

『ネモネア、君を信じている……言葉は伝えた、あとは自身で決めるがよい』

「あ、虎神様」

『ツオーゴも物騒になってきたな竜神よ』

「ああ、フラデーアもどうなるか……」

『で、さらば……』

 伝言を言い終えた虎神ホワイト・タイガーは穏やかであり気高い声で消えた。アヴエロが信じてくれているなら、その竜力ってやつを会得しないわけにはいかない。あたいの中の心配ごと徐々に消え、また力が湧いてきた。


「竜神ブラック・ドラゴン、勇者アヴエロが倒そうとしている魔王とはなんだ」

「奴の名は魔王シャンイレール、魔王ルモールより若く、強い力を感じる」

 あの魔王ルモールは確かに髭をはやしておじいさんみたいだったけど、あたいに魔力を注いで化けさせるほどの力があった。そのルモールより強い魔王シャンイレール。

「魔王シャンイレール、そいつが魔王ルモールを超えるのか……」

「勇者アヴエロと仲間たちが帰らないのにはそういう理由があったのですね」

「アヴエロだけに戦わせる訳にはいかない……そうだ竜神様、竜力って?」

「竜力とは、魔法の力の魔力のように、人の中にある竜の力のこと」

「じゃあ、あたいたちもアヴエロみたいに竜力を極めることは出来るんだ」

「そうだな……フフッ、さっそく始めるか?」

「ちょっと仲間と話します」

 特訓ならすぐに始められる。頭を整理して、もしここでアヴエロにあっても足手まといで特訓の邪魔になるだけ。なら信じてくれているアヴエロの為にも何としても竜力を極めた方がいい。

「エメールとモントはどうなの?」

「ソレイル姉さんはのことだから、勇者の一員としてその竜力を一緒に会得するだろう。だから、あたしも特訓には参加させてもらう」

「……もう逃げようなんて思いません。プリンセスたちを護るために特訓させてもらいます」

 あたしたちに迷いはない。よし、それじゃあと思ったら、口を開いたモント。

「……でも、ちょっと寄り道をさせてほしい」

「よりみちって、なんなのモント?」

「2日、3日の間だけでいい、前から考えていた事がある。ネモネアとエメールあたしに力を貸してくれ」


 モントの考えで特訓は竜神様と話して3日後という事で、カーゼ先生とブリーズも連れて地上に戻った。最後にカーゼ先生とブリーズから『夢をありがとう』と笑顔でお別れをした。トアースで研究をしたいが魔王シャンイレールの事が治まるまでは自分の世界ツオーゴを見守りたいという。

 そうしてモントの頼みも終わって再び竜神ブラック・ドラゴンの元に……。


「――ではお主たち3人で特訓を始めるぞ」

 竜神様の黄色い眼がキラリと光った瞬間だった。なんとあたいたちは竜の姿に。しかも大きくさは人のときと変わらず。

「な、なんだこの姿は!」

「竜力を身につけるためにはまず竜になって竜力を目覚めさせなければならない」

「……手足は短いし……尻尾はあった、ふ~んこんな感じて動かすんだ」

 尻尾って手足を動かす感覚と何ら変わらなかった。

「くう~っ!」

 羽をパタパタとさせると僅かに浮くけど疲れる。火もうまく出せないしこれは大変そう。

「いきなりは無理であろう、竜騎士たちと特訓してコツを掴むのだ」

「竜騎士だって?」

 そこに現れたのは3人の女性は竜神様の前に立つ、人の姿ではあるが肌の色が青くモントのように鎧を来て、武器に槍を持ってる。

「私たちは竜騎士団ドラゴン・ナイツ、私は長女のアルビス」

「同じく次女のサファエルです」

「同じく三女のミンシーで~す」

「この人たちと、どれくらい特訓するんですか?」

「そうだな竜力を目覚めさせるだけなら、一月だ」

「え、一月って……」

「特訓はツオーゴと時間経過が遅い場所。心配無用だ」

「わかった、ありがとう竜神様」

 あたいらは3匹の竜となって異世界トアースにて竜力を身につけるべくの特訓をすることとなったんだ。絶対に極めてアヴエロに会ってみせる……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…

三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった! 次の話(グレイ視点)にて完結になります。 お読みいただきありがとうございました。

処理中です...