勇者に恋した魔王の配下

ヒムネ

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願う声

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 不思議と光る水晶花が1つ、2つ、計4つがシスター・ファスによりはめられていく。するとはめた水晶花の光はより強く輝き出す。

「くっ、これでようやく……」

 白い煙が徐々に薄れていくと同じく光も消えていき中を覆っていた硝子と水晶花は消滅、そして宙に浮くのはブラック・オーブだ。

「うむ、紛れもないブラック・オーブじゃ」

「純粋な黒って感じで綺麗ねぇ……でもどんな力があるのかしら、ネモネア」

「ヴィゴーレ」

「あんたが持ってみなさいよ」

「いいの?」

 エメールとモントも頷きあたいは手汗かきながらもそっとブラック・オーブを両手で持つ。
 光の反射でキラキラと光るオーブに不思議と不気味さを思ったほど感じなく、黒い玉を覗くとまるで中に宇宙空間が感じさせるほど綺麗。

 これでようやくと生きを吸い込み、

「たのむブラック・オーブ、アヴエロたちに会わせて!」

 ……頼んでみるも、反応がない。

「たのむよブラック・オーブ!」

「……なにも……起きないわね」

「ブラック・オーブッ!」

 そのあとも続けてブラック・オーブに声をかけていくも変わった事は一つとして無く、なんの反応も示さないまま。


「ブラック・オーブ、ブラック・オーブッ!」
「ネモネア、もういい」

「モント、まだよっ、あたいは……あたいは諦めない!」

「でも、なにも起きない……だろ」


 肩にポンと優しく手を置いて話してくれるも、モントを無視してずっとブラック・オーブにお願いし続けた。頭に浮かぶアヴエロたちのために、ずっと……。


 結局、昼夜まで続いた声に仕方ないと思ったモントとエメールに連れて行かれラングネスの宿をとることになった。

「ふぅ~」

「……どうでしたかモント・プリンセス、ネモネア・プリンセスの様子は」

「帰ってきてもずっと夜空を見上げてるばかりで何言っても中に入ろうともしない……困ったヤツだよ」

「必死でブラック・オーブにお願いしていましたからね」

「シスター・ファスはオーブを持っていても構わないと言うが……エメールは寝るのか?」

「ネモネア・プリンセスが落ち込んでいるのに、おちおちと眠れませんよ、ブラック・オーブを調べてみます」

「寝れるはず……ないよな……」

 子どもの頃さびしいときは、いつも星を見て、気持ちを誤魔化してた。なのに、今は見上げても全然、誤魔化せない。もうあんたと会えないと、思っちゃうんだよ。

「星が綺麗だよ、アヴエロ……」

「しゃがみ込んで独り言か、ネモネア……」

「モント……いいだろ、べつに……」

「こんなときも前向きかと思ったが、落ち込むんだね」

「……そんなことを言いに来たの」

 あたいは睨みつけるとモントが隣に。

「ネモネアにはまだ姉さんの居所教えてもらってないからね」

「……そうだった」

「だから困るんだ、こんなとこで止まってもらったら」

「わかってるよ……」

 そうだよ、そういう条件でモントは仲間になったんだから。落ちこんだって何も進むわけじゃないことは、わかってるよ。

「悪かった……じゃあどうするかな……」

「立ち上がったか……ブラック・オーブはエメールも調べてみると言ってた。まずはエメールにどうだったか聞いてみよう」

「エメールが……そうだな、そうしよう……」


 ブラック・オーブに何か手がかりがあるのか封印が解けたときは叫ぶことに必死でちゃんと調べなかったし、ちゃんと見たら何かあるかも知れないと微かな望みで部屋に戻った。

「エメール」

「おお、ネモネア・プリンセス元気が戻りましたか」

「……少しね」

「そんなことよりどうだ、何かわかったことはあるか?」

「モント・プリンセス、何かわかった事はありませんでしたが」

「そうか……やっぱり」

「ですがオーブはもとより、この台座が気になります」

 台座とはブラック・オーブの丸い玉を支えてる四角い台座の事。

「台座に描かれているのは最初は柄だと思いましたがこれは、です」

 古代文字とは、古代に用いられ現代にはほとんど滅んだと言われる文体とエメールは言う。

「私は師匠から逃げ出して、魔法剣士として旅をしているときある城下町で噂で聞いたことがあるんです」

「ホントかっ、エメールッ、場所は何処なんだ?」

「ネモネア・プリンセスは運が良いと思いますよ」

「もったいぶらずに教えてくれて!」

「フッ、急に元気になって」

「そことはネモネア・プリンセスがまだちゃんと足を踏み入れてない城下町です、わかりますよね」

 地図を広げてあたいがまだちゃんと冒険していない場所で大きな砂漠。

「ここか、

 そこはかつて勇者と、アヴエロと戦った遺跡のある所でもある。もうダメかと思ってたけど希望が見えてきた……。
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