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運命師の言葉
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「――じゃあ頼むよロップ」
「はい……ネモネアさん目がやつれていますが、だいじょうぶでしょうか?」
「昨日の戦いでちょっと疲れただけだよ」
ベッドでたくさん泣きましたなんて言えるもんか……はずかしい。でもホントッ、昨日はスノーとロップに見せつけられちゃったなあ。
「はぁ~……」
「あ、あの~、まだお疲れのようですが」
「ごめんね、えっと占い師だっけかロップて」
「運命師です」
藍色のカーテンで明かりを閉ざし暗くした部屋でロップは助けてくれた御返しにと得意の運命を観てくれるという。占い師と思ったけどそれはいわゆる俗語でその前までは運命師だったと話してくれた。
「スノーのお母さんとは、どうだった?」
「『ごめんなさい』、それと『スノーをよろしく』と言っていただけました」
「そうか、よかったよ」
「はい……では、いきます……はっ!」
ロップは両手をかざし光りだすのは魔力。眩しい閃光のあと魔力が形どっていく。
「こ、これは尖った……水晶?」
「はい……ネモネアさんの運命を表す塊……それが私に教えてくれるんです」
「……あ、ロップッ!」
「キャアッ!」
光を灯し続ける水晶とにらめっこなロップだったが、光は小さくなり徐々に水晶とともに消える。
「ロップ……だいじょうぶかい?」
扉で聞いていたスノーが心配してとんできた。
「うっうっ……だい、じょうぶよ、スノー」
「お、おい、ロップ無理しなくていいよ」
「……ネモネア……さん、私には……ぐすっ、耐えられませんでした」
「え、耐えられないって」
「子を捨てる魔族の両親……無秩序に襲いかかる邪悪な獣たち……闇のなかを1人泣き叫ぶ、子……ううっ」
「ロップ……もしかしてそれが、ネモネアさん?」
「……その子は、邪悪な獣達から生き残るために、冷酷な行動……これが、弱肉強食……」
「うん、それは子供の頃のあたいだ」
ロップが見たという過去は、あたいが魔獣を殺るための罠、魔物の赤子食い、弱ったところを容赦なく襲って食べて生きてきた事。それら幼い時からの生き残るための選択だった。
「なのにネモネアさんは僕たちを助けて……」
「魔王、と……ネモネアさん……あ、ああ」
「ロップ、あたいは……」
「……女神……勇者……今のネモネアさんには……闇が迫ってくる」
「闇……」
「そして命……光」
「ロップ、ネモネアさんはどうなるんだ?」
「断片的なのでなんとも言えません。たださきほど感じた勇者は」
勇者とはアヴエロのことだろう。
「ネモネアさんを、信じています」
「え……」
「せっかく出会った絆を失いたくない、ときに絶望することが起き光弱くなろうとも、ネモネアさんを信じて歩く、この方はきっと……ネモネアさん?」
「ネモネア、さん」
「え……な、なに……これは?」
あたいは大粒の涙を流していた。いつでも切れてしまいそうな心の芯をロップの言葉で安心して油断してしまった。
「ぐすっ、ご、ごめんなさい、なんか勝手に涙が」
「ネモネアさんにもいるんですね、大切な人が」
「……うん、今は離れてるけど……その人に、会いたくてあいたくて……でも、もしかしたら無理かもって不安で……」
「ボクだってロップを諦めたくなくて前に進んだからネモネアさんと会えて彼女と再開できたんです。ネモネアさんの彼も絶対に会いたいはずですよ」
「スノーと私は命の恩人ネモネアさんの安全を心からお祈りしていますわ。ですから希望を捨てずに今日よりも前にある明るい未来を生きてください」
「そうだよね、ありがとう2人とも」
ロップが観てくれた運命。最初は気分が低かったけど、勇者がアヴエロが信じてくれてるってだけでやってよかったとすごく思う。出会った熱く羨ましいカップルの2人に勇気もらって、最後は笑顔でラナロースを後にした……。
「――ごめん、待たせて」
「よ~やく来たかあいつ」
「ネモネア・プリンセス~、お待ちしておりました~」
「プリンセスはやめろって……っで、どうしてあのときの女騎士が?」
「それはですね……」
エメールの話では、あたいを探してた彼に女騎士が気がついて状況を説明すると何故か付いていくと言ってきたらしい。そうして一緒に探してるうちに不気味な気配を感じてクレマと戦ってた場所に着いたんだ。
「――良くも悪くもあの美女……あ、いやクレマとかいう魔族のおかけで見つけ出せてよかったですよ」
「そうか……あんたもすまなかった女騎士」
「ふんっ」
その瞬間、女騎士は素早く剣を抜きあたいの目の前に向けて、鋭い目で睨みつけてきた。
「ちょ、ちょっと突然なにを」
「……微動だにしないか……さすがね、ネモネアだったか」
「……なんのつもり女騎士」
「あんたがあたしを助けてくれたのは礼を言う。その時の話の中で言ってたな『ソレイル』っと」
「うん」
「どこにいる」
「あんたまさか……」
「姉さんはどこにいるかと聞いているっ!」
あたいが知り合った女騎士は奇しくもソレイルの妹だったんだ。でも、
「……言えない」
答えることは出来ない……。
「はい……ネモネアさん目がやつれていますが、だいじょうぶでしょうか?」
「昨日の戦いでちょっと疲れただけだよ」
ベッドでたくさん泣きましたなんて言えるもんか……はずかしい。でもホントッ、昨日はスノーとロップに見せつけられちゃったなあ。
「はぁ~……」
「あ、あの~、まだお疲れのようですが」
「ごめんね、えっと占い師だっけかロップて」
「運命師です」
藍色のカーテンで明かりを閉ざし暗くした部屋でロップは助けてくれた御返しにと得意の運命を観てくれるという。占い師と思ったけどそれはいわゆる俗語でその前までは運命師だったと話してくれた。
「スノーのお母さんとは、どうだった?」
「『ごめんなさい』、それと『スノーをよろしく』と言っていただけました」
「そうか、よかったよ」
「はい……では、いきます……はっ!」
ロップは両手をかざし光りだすのは魔力。眩しい閃光のあと魔力が形どっていく。
「こ、これは尖った……水晶?」
「はい……ネモネアさんの運命を表す塊……それが私に教えてくれるんです」
「……あ、ロップッ!」
「キャアッ!」
光を灯し続ける水晶とにらめっこなロップだったが、光は小さくなり徐々に水晶とともに消える。
「ロップ……だいじょうぶかい?」
扉で聞いていたスノーが心配してとんできた。
「うっうっ……だい、じょうぶよ、スノー」
「お、おい、ロップ無理しなくていいよ」
「……ネモネア……さん、私には……ぐすっ、耐えられませんでした」
「え、耐えられないって」
「子を捨てる魔族の両親……無秩序に襲いかかる邪悪な獣たち……闇のなかを1人泣き叫ぶ、子……ううっ」
「ロップ……もしかしてそれが、ネモネアさん?」
「……その子は、邪悪な獣達から生き残るために、冷酷な行動……これが、弱肉強食……」
「うん、それは子供の頃のあたいだ」
ロップが見たという過去は、あたいが魔獣を殺るための罠、魔物の赤子食い、弱ったところを容赦なく襲って食べて生きてきた事。それら幼い時からの生き残るための選択だった。
「なのにネモネアさんは僕たちを助けて……」
「魔王、と……ネモネアさん……あ、ああ」
「ロップ、あたいは……」
「……女神……勇者……今のネモネアさんには……闇が迫ってくる」
「闇……」
「そして命……光」
「ロップ、ネモネアさんはどうなるんだ?」
「断片的なのでなんとも言えません。たださきほど感じた勇者は」
勇者とはアヴエロのことだろう。
「ネモネアさんを、信じています」
「え……」
「せっかく出会った絆を失いたくない、ときに絶望することが起き光弱くなろうとも、ネモネアさんを信じて歩く、この方はきっと……ネモネアさん?」
「ネモネア、さん」
「え……な、なに……これは?」
あたいは大粒の涙を流していた。いつでも切れてしまいそうな心の芯をロップの言葉で安心して油断してしまった。
「ぐすっ、ご、ごめんなさい、なんか勝手に涙が」
「ネモネアさんにもいるんですね、大切な人が」
「……うん、今は離れてるけど……その人に、会いたくてあいたくて……でも、もしかしたら無理かもって不安で……」
「ボクだってロップを諦めたくなくて前に進んだからネモネアさんと会えて彼女と再開できたんです。ネモネアさんの彼も絶対に会いたいはずですよ」
「スノーと私は命の恩人ネモネアさんの安全を心からお祈りしていますわ。ですから希望を捨てずに今日よりも前にある明るい未来を生きてください」
「そうだよね、ありがとう2人とも」
ロップが観てくれた運命。最初は気分が低かったけど、勇者がアヴエロが信じてくれてるってだけでやってよかったとすごく思う。出会った熱く羨ましいカップルの2人に勇気もらって、最後は笑顔でラナロースを後にした……。
「――ごめん、待たせて」
「よ~やく来たかあいつ」
「ネモネア・プリンセス~、お待ちしておりました~」
「プリンセスはやめろって……っで、どうしてあのときの女騎士が?」
「それはですね……」
エメールの話では、あたいを探してた彼に女騎士が気がついて状況を説明すると何故か付いていくと言ってきたらしい。そうして一緒に探してるうちに不気味な気配を感じてクレマと戦ってた場所に着いたんだ。
「――良くも悪くもあの美女……あ、いやクレマとかいう魔族のおかけで見つけ出せてよかったですよ」
「そうか……あんたもすまなかった女騎士」
「ふんっ」
その瞬間、女騎士は素早く剣を抜きあたいの目の前に向けて、鋭い目で睨みつけてきた。
「ちょ、ちょっと突然なにを」
「……微動だにしないか……さすがね、ネモネアだったか」
「……なんのつもり女騎士」
「あんたがあたしを助けてくれたのは礼を言う。その時の話の中で言ってたな『ソレイル』っと」
「うん」
「どこにいる」
「あんたまさか……」
「姉さんはどこにいるかと聞いているっ!」
あたいが知り合った女騎士は奇しくもソレイルの妹だったんだ。でも、
「……言えない」
答えることは出来ない……。
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