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奇妙な出会い
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――あたいはすぐさま貰った紙を広げてみた。
『女神と魔界王について
―グランジウム城の図書室―
グランジウム 神道の書にて 第三の章
女神フラディーヤと魔界王は千億年
ものあいだ互角の力で戦い続けた。
決着のつかない魔界王は地上に魔物を
呼び出した。苦しむ地上人に女神は
自らの装具をこの世にもたらしたのだ。』
女神フラディーヤ、ソレイルから聞いたのはフラデーアだったのに。クリスロッサの情報ではフラデーア、どうやら町によって伝説が微妙に違うみたい。
「んでもう一枚……」
『ブラック・オーブ
昔話 ―黒い宝珠が大好きな竜たち―
黒い宝珠、それは竜が大好きでいつ
も眺めています。
ピカピカ黒く輝くオーブ。もう一つ
欲しいなー、くれないかな~、
だーれか、だーれかくれないかな~……』
「そうだ、あの子に貰お、貰お、もーらーお……もうっ、何が『グランジウム一番の酒場の情報屋』だよ……くそっ」
情報なんて簡単に手に入る訳がない。
「自らの装具って、たぶん伝説の武具だからアヴエロたちが持ってたやつだろ……アヴエロ、ソレイル……」
優しかったソレイル、思い出すと目にうるっとくる。なんか弱くなったのかなあたいは。泣いてる暇なんてない、魔王と女神、それとブラック・オーブの情報を手に入れるためにグランジウム城から東側へ。そこにはラナロースの城下町があるはず、だから進むんだ……。
グランジウムからラナロースは通り道が出来ていて歩きやすく快適だった。いまは太陽も隠れて魔物が現れるから景色は半減、本来だったらもっと綺麗なんだろう。
そんな気持ちでいた道で激しい声が聞こえた。
「なんだ……魔物じゃない」
「――避けろぉぉっ……くっ、これが魔獣なのか」
走って来てみれば戦っていたのはショートカットの金髪女騎士と部下の騎士達だろう。そして魔獣シカだ、助けよう。
「「うおぉぉぉっ!」」
「誰だっ」
「だいじょうぶかい、騎士の美人ちゃん」
「こいつの弱点は……って誰だよお前っ」
あたいが魔獣シカの角突進を爪で止める隣で、もう1人同じタイミングで飛び込んできたカウボーイハットを被った男は剣で受け止めていた。
「あんたも美人だねぇ、赤髪の女魔族さん」
「はぁあっ……ってそれよりも、こいつの弱点は背中のコブだっ!」
「え?」
「早くっ!」
「背中のコブッ……うぁぁぁああっ!」
魔獣シカのコブを女騎士の二刀で切断、傷口から大量の血が勢いよく流れ崩れるように倒れた。
「はぁ、はぁ……うそ、ほんとうに倒れた……」
まだ啞然としてるのかじっとして動かない女騎士。相当苦戦したんだろう、あたいが来て命拾いしたようだ。
「……それと、なんなんだおまえ……」
「だいじょうぶですか、美しい騎士さん」
「あっ……ふん、なれなれしくするな」
「手厳しい」
変な男が話しかけて目が覚めたのか、あたいの方に向かってくる女騎士。
「あんたか、さっき助けてくれたのは、感謝する」
「ああ、魔獣は普通の騎士には強敵だ、気をつけな、じゃっ」
「待てっ!」
「ん、まだ何かよう?」
過ぎ去ろうとしたのにと仕方なく振り向く。
「私はグランジウムの騎士、なのに魔獣には苦戦した。その魔獣に臆せず立ち向かい、弱点を知っていたりと……あんたは何者だ」
「……生きた環境が違うのさ、あんたらとはね」
「魔王の者か」
元、だけど。ここで正直に喋ったら、勘違いされかねない気がする。
「なぜ答えない」
「……少し、ね」
「なぜ助けたのか知らないが魔王の手下なら、グランジウムの騎士としてここであんたを逃がすわけにはいかない!」
「まったく、おんなじ髪でも今回の女騎士はやけに好戦的だね!」
「同じ、髪……だと」
「……同じグランジウムの騎士なら知ってるはず。ソレイルって女騎士のこと」
「ソレイル……」
「いまだっ」
考え込んで下を向いた空きにその場を離れる。どうせならこの勢いでラナロース城まで突っ切ることにした。
「――あぶない、あぶない、ソレイルの国の騎士と戦うところだった」
「ちょっとまってー」
「ん? あんたはさっきの、変な男」
少しの距離であたいに追いついてきたカウボーイハットの男、アヴエロとは違う笑顔でニカニカして、なんか腹立つ。
「そんな変って~、一緒に美人騎士を助けた仲じゃないですか」
「ああそうっ。ようはなに、こっちは急いでるんだよ……」
すると突然あたいの右手を軽く触って、
手にチュッ。
「なっ、ななななななっ」
「その勇敢な瞳と強さに私の心は奪われました。プリンセス」
「プリ、プリ、プリって……」
そんなことより、あたいのあたいの右手に、く、くく唇付いた。く、唇、くちびる。
「プリンセス、そんなアナタのお名前を……」
「なにするんだよぉぉっ、うわぁぁぁあああぁぁぁっ!」
「あ、おまちを、プリンセスそちらは森のほうですよ。チャーミングなプリンセスだ……」
人生初めての手キスに頭がパニックになってあたいはその場を走って逃走。
「――どうして、あの魔族が……姉さんの名前を……」
『女神と魔界王について
―グランジウム城の図書室―
グランジウム 神道の書にて 第三の章
女神フラディーヤと魔界王は千億年
ものあいだ互角の力で戦い続けた。
決着のつかない魔界王は地上に魔物を
呼び出した。苦しむ地上人に女神は
自らの装具をこの世にもたらしたのだ。』
女神フラディーヤ、ソレイルから聞いたのはフラデーアだったのに。クリスロッサの情報ではフラデーア、どうやら町によって伝説が微妙に違うみたい。
「んでもう一枚……」
『ブラック・オーブ
昔話 ―黒い宝珠が大好きな竜たち―
黒い宝珠、それは竜が大好きでいつ
も眺めています。
ピカピカ黒く輝くオーブ。もう一つ
欲しいなー、くれないかな~、
だーれか、だーれかくれないかな~……』
「そうだ、あの子に貰お、貰お、もーらーお……もうっ、何が『グランジウム一番の酒場の情報屋』だよ……くそっ」
情報なんて簡単に手に入る訳がない。
「自らの装具って、たぶん伝説の武具だからアヴエロたちが持ってたやつだろ……アヴエロ、ソレイル……」
優しかったソレイル、思い出すと目にうるっとくる。なんか弱くなったのかなあたいは。泣いてる暇なんてない、魔王と女神、それとブラック・オーブの情報を手に入れるためにグランジウム城から東側へ。そこにはラナロースの城下町があるはず、だから進むんだ……。
グランジウムからラナロースは通り道が出来ていて歩きやすく快適だった。いまは太陽も隠れて魔物が現れるから景色は半減、本来だったらもっと綺麗なんだろう。
そんな気持ちでいた道で激しい声が聞こえた。
「なんだ……魔物じゃない」
「――避けろぉぉっ……くっ、これが魔獣なのか」
走って来てみれば戦っていたのはショートカットの金髪女騎士と部下の騎士達だろう。そして魔獣シカだ、助けよう。
「「うおぉぉぉっ!」」
「誰だっ」
「だいじょうぶかい、騎士の美人ちゃん」
「こいつの弱点は……って誰だよお前っ」
あたいが魔獣シカの角突進を爪で止める隣で、もう1人同じタイミングで飛び込んできたカウボーイハットを被った男は剣で受け止めていた。
「あんたも美人だねぇ、赤髪の女魔族さん」
「はぁあっ……ってそれよりも、こいつの弱点は背中のコブだっ!」
「え?」
「早くっ!」
「背中のコブッ……うぁぁぁああっ!」
魔獣シカのコブを女騎士の二刀で切断、傷口から大量の血が勢いよく流れ崩れるように倒れた。
「はぁ、はぁ……うそ、ほんとうに倒れた……」
まだ啞然としてるのかじっとして動かない女騎士。相当苦戦したんだろう、あたいが来て命拾いしたようだ。
「……それと、なんなんだおまえ……」
「だいじょうぶですか、美しい騎士さん」
「あっ……ふん、なれなれしくするな」
「手厳しい」
変な男が話しかけて目が覚めたのか、あたいの方に向かってくる女騎士。
「あんたか、さっき助けてくれたのは、感謝する」
「ああ、魔獣は普通の騎士には強敵だ、気をつけな、じゃっ」
「待てっ!」
「ん、まだ何かよう?」
過ぎ去ろうとしたのにと仕方なく振り向く。
「私はグランジウムの騎士、なのに魔獣には苦戦した。その魔獣に臆せず立ち向かい、弱点を知っていたりと……あんたは何者だ」
「……生きた環境が違うのさ、あんたらとはね」
「魔王の者か」
元、だけど。ここで正直に喋ったら、勘違いされかねない気がする。
「なぜ答えない」
「……少し、ね」
「なぜ助けたのか知らないが魔王の手下なら、グランジウムの騎士としてここであんたを逃がすわけにはいかない!」
「まったく、おんなじ髪でも今回の女騎士はやけに好戦的だね!」
「同じ、髪……だと」
「……同じグランジウムの騎士なら知ってるはず。ソレイルって女騎士のこと」
「ソレイル……」
「いまだっ」
考え込んで下を向いた空きにその場を離れる。どうせならこの勢いでラナロース城まで突っ切ることにした。
「――あぶない、あぶない、ソレイルの国の騎士と戦うところだった」
「ちょっとまってー」
「ん? あんたはさっきの、変な男」
少しの距離であたいに追いついてきたカウボーイハットの男、アヴエロとは違う笑顔でニカニカして、なんか腹立つ。
「そんな変って~、一緒に美人騎士を助けた仲じゃないですか」
「ああそうっ。ようはなに、こっちは急いでるんだよ……」
すると突然あたいの右手を軽く触って、
手にチュッ。
「なっ、ななななななっ」
「その勇敢な瞳と強さに私の心は奪われました。プリンセス」
「プリ、プリ、プリって……」
そんなことより、あたいのあたいの右手に、く、くく唇付いた。く、唇、くちびる。
「プリンセス、そんなアナタのお名前を……」
「なにするんだよぉぉっ、うわぁぁぁあああぁぁぁっ!」
「あ、おまちを、プリンセスそちらは森のほうですよ。チャーミングなプリンセスだ……」
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「――どうして、あの魔族が……姉さんの名前を……」
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