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消えるとき
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「――みんな……ネモネア」
シスター・カルタは、不安な子どもたちのためにと教会の外に出た。
「シスター」
「だいじょうぶだよ、帰ってくよ」
「勇者だもん」
「ありがとう、みんな……あらブリジット、それ」
「うん、お花、ネモネアおねぇちゃんが、げんきなように」
「ネモネアの髪と同じ赤い花、やさしいのねブリジット」
「エヘッ……」
――足が軽く速く動ける、これならアヴエロを救える。大切な人を殺されてたまるか。
全ての魔力を帯び骨はあたいの身体全身に、腕を、腹部を、心の臓を刺していく。
「ア……ヴエロ……は、はや……く、とどめ」
「キンキュウ、キンキュ……」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
アヴエロは一つ眼邪獣に女神の剣をその目に突き刺した。あたいを指した骨が全て消えた。その瞬間大量の赤紫色の血が流れ出す。
「ネモネア、ネモネアッ!」
「ア……ヴ……ロ……か……た」
「スオーロッ、老師っ、ネモネアを回復っ!」
アヴエロの膝枕、そこに仲間が集まる。
「……だめだ、刺された箇所と出血が多すぎる」
「残念じゃがわしらには、どうにもできん」
「そんなっ……ネモネア、死ぬなんてやだよ、ネモネアァァッ!」
「ほ……ん……に……か……た」
本当によかった。大切な人を守れてほんとうに……。
「あた……い……ア……ヴ、ゴホッ」
「ネモネアッ!」
「アヴエロ、ネモネアの最後の言葉を、聞いてやれ」
「ソレイル……」
「あい……て……る」
この甘酸っぱい胸の鼓動が何なのか今わかった。暗くて寒い世界にいたあたいを光ある温かい世界に連れてってくれたアヴエロを、愛している。だから、自分自身を盾にしてアヴエロが無事だったことが、嬉しい……。
「ネモネアッ」
あたいの右手にアヴエロの暖かい両手、もう感覚もないのに感じることが出来る。想像することが、できる。
「あんなに辛い思いをしたキミが、幸せになるべきキミが……どうして……」
まだみていたいけど、もう目を開いてるのも疲れてきた……。
「アヴ……ロ、は……」
「ネモネア……僕は、魔王の配下から立ち直って……君が教会で楽しそうにしている君が……輝いてみえた……過去から逃げず子どもたちに笑顔を絶やさないそんな君を……ぼくは、好きだった……だから目を……開いてよ……ネモネア……愛してるよ……だから生きてっ、ううっ」
最後のさいごに、愛された。もう思い残すことはない。人生も終わりよければ、かな……。
――教会に戻ろうと走るブリジットは、
「キャッ」
「ブリジット、慌てないの」
「いてて、あっ……」
転けた勢いと爽やかな風に握っていた紅い花は散った……。
「ううっ、ネモネア……」
あれ、これで、いいはずなのに、涙が。
どうして……どうして。
だって、愛されたんだよ……なのに……愛された……そうだよだから、
やっぱりやだ、死にたくない。
愛されたってことは、これから幸せが待ってて、楽しいことや嬉しいことがあるのに、あるのに……ここで死ぬなんて……いやだっ、いやだよぉぉっ。
「し……たく……ゴホッ……」
「ネモネアァァァァァァ、うわぁぁぁぁぁぁーっ!」
あたいは光を感じながら死を後悔しながら、死んだ……。
シスター・カルタは、不安な子どもたちのためにと教会の外に出た。
「シスター」
「だいじょうぶだよ、帰ってくよ」
「勇者だもん」
「ありがとう、みんな……あらブリジット、それ」
「うん、お花、ネモネアおねぇちゃんが、げんきなように」
「ネモネアの髪と同じ赤い花、やさしいのねブリジット」
「エヘッ……」
――足が軽く速く動ける、これならアヴエロを救える。大切な人を殺されてたまるか。
全ての魔力を帯び骨はあたいの身体全身に、腕を、腹部を、心の臓を刺していく。
「ア……ヴエロ……は、はや……く、とどめ」
「キンキュウ、キンキュ……」
「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
アヴエロは一つ眼邪獣に女神の剣をその目に突き刺した。あたいを指した骨が全て消えた。その瞬間大量の赤紫色の血が流れ出す。
「ネモネア、ネモネアッ!」
「ア……ヴ……ロ……か……た」
「スオーロッ、老師っ、ネモネアを回復っ!」
アヴエロの膝枕、そこに仲間が集まる。
「……だめだ、刺された箇所と出血が多すぎる」
「残念じゃがわしらには、どうにもできん」
「そんなっ……ネモネア、死ぬなんてやだよ、ネモネアァァッ!」
「ほ……ん……に……か……た」
本当によかった。大切な人を守れてほんとうに……。
「あた……い……ア……ヴ、ゴホッ」
「ネモネアッ!」
「アヴエロ、ネモネアの最後の言葉を、聞いてやれ」
「ソレイル……」
「あい……て……る」
この甘酸っぱい胸の鼓動が何なのか今わかった。暗くて寒い世界にいたあたいを光ある温かい世界に連れてってくれたアヴエロを、愛している。だから、自分自身を盾にしてアヴエロが無事だったことが、嬉しい……。
「ネモネアッ」
あたいの右手にアヴエロの暖かい両手、もう感覚もないのに感じることが出来る。想像することが、できる。
「あんなに辛い思いをしたキミが、幸せになるべきキミが……どうして……」
まだみていたいけど、もう目を開いてるのも疲れてきた……。
「アヴ……ロ、は……」
「ネモネア……僕は、魔王の配下から立ち直って……君が教会で楽しそうにしている君が……輝いてみえた……過去から逃げず子どもたちに笑顔を絶やさないそんな君を……ぼくは、好きだった……だから目を……開いてよ……ネモネア……愛してるよ……だから生きてっ、ううっ」
最後のさいごに、愛された。もう思い残すことはない。人生も終わりよければ、かな……。
――教会に戻ろうと走るブリジットは、
「キャッ」
「ブリジット、慌てないの」
「いてて、あっ……」
転けた勢いと爽やかな風に握っていた紅い花は散った……。
「ううっ、ネモネア……」
あれ、これで、いいはずなのに、涙が。
どうして……どうして。
だって、愛されたんだよ……なのに……愛された……そうだよだから、
やっぱりやだ、死にたくない。
愛されたってことは、これから幸せが待ってて、楽しいことや嬉しいことがあるのに、あるのに……ここで死ぬなんて……いやだっ、いやだよぉぉっ。
「し……たく……ゴホッ……」
「ネモネアァァァァァァ、うわぁぁぁぁぁぁーっ!」
あたいは光を感じながら死を後悔しながら、死んだ……。
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