勇者に恋した魔王の配下

ヒムネ

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勇者の仲間とは

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 ――ボコッ、崩れたドームの2個分隣の地面からあたいは手を出す。

「ぷはーっ、やっと外に……うわっ、こっちにも骨が飛んで来てる!」

「ランド・ウォールッ、落ちてる骨を魔力が帯びる前に粉々に砕くのじゃっ!」

 ドームが崩れる前にあたいが穴を掘ったんだ。急いで皆を穴から出して、あたいにアヴエロにソレイルは落ちた骨砕き、スオーロとアクアン老師は壁、それぞれの役割をこなすけど。

「ハァ、ハァ、骨砕くのもけっこう大変ねソレイル」

「だがこのままでは、私たちもいずれ力尽きてしまう」

 さすがに骨が折れるとはこのことか。左肩も力を込めるたび痛みが増してくる。

「アヴエロ、なんとかせんと」
「アヴエロッ」

 皆の視線が勇者アヴエロかれに、この期待にいままで答えてきたのか。あたいと戦ったときも、魔王ルモールの死闘の時も。何か打開策を思いつくのだろうか。

「……僕が突撃します」


「えっ? なに言ってんだ、死ぬ気かっ」

「やけになっても勝てないぞ、アヴエロ」

「やけではありませんよソレイル、あの一つ眼邪獣は最初の時、全方向に攻撃したあと僅かに隙がありました」

 そういえばたしかに、次にあたいらは構える隙があったような。

「その隙は、どれくらい?」

「おそらく2秒か、3秒くらいかと」

「3秒……それだけ……」

 ドクンッ、不安になってきた。

「では」

「ちょっとまってっ、ならあたいが」

「ネモネアは左肩と脚を怪我しています。かといってソレイルは鎧ですので僕の方が速いんです」

「でも…に」

 もし失敗したらアヴエロが……、

 ドクンッ、ドクンッ、鼓動が早く鳴る。

 こんな気持ちだったのか勇者の仲間になるって。紙一重じゃないか。こんな、自分の命が脅かされるよりも辛いなんて、身体が震える。

「ネモネア、僕たちはいままで沢山の困難に打ち勝ってきました。だからこんなところでやられるわけにはいきません」

 そう言いって覚悟したかのようにあたいの前に出て骨を砕く。

「またシスター・カルタの、子どもたちの家に帰ろうじゃないですか」

「……うん」

「では頼みます、みんな!」


 一つ眼邪獣は全方向に魔力を帯びた骨を発射、それをランド・ウォールに隠れて最初の隙をうかがう。

「いまだっ!」

 止まない鼓動のあたいは骨の後始末、そして走り出したアヴエロ。一つ眼邪獣に追いつく中間あたりで3秒経過、再び骨を発射。

「アヴエロ!」

「うおぉぉぉっ!」

 2撃目の全方向の骨攻撃をアヴエロは剣で払っていく。だが全てを払い除けるわけじゃなく、頭や胸など一番の急所を守っていく、しかしアヴエロの腕や脚に刺さった。

「ぐうっ」

 あたいは思わずランド・ウォールの前に出る。

「アヴエロ……アヴエロッ」

 全てを耐え凌ぎ3撃目を発射される前に剣で付きにかかった。


「うわぁぁぁっ!」
「「いけっ、アヴエロッ!」」


「 キンキュウ ジタイ 発生ッ!」

「え……」

 一つ眼邪獣はそう言って剣の当たるスレスレ奥にテレポーテーション。すると三度目の全方向に骨が発射される……。


「アヴエロォォォッ!」

「ネモネア……」


 すでに走っていたあたいはアヴエロの前に出て守るように背を向けかばう……。
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