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魔王城の地下
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――空の下、ガランッと瓦礫の音。ここはシスター・カルタ教会から真逆の最西端にある崩れた魔王の城。見る影もなくボロボロで地面の上に壁が砂利のよう。
「やっぱ魔王ルモール復活とかはないのかな?」
「う~む……しかし何だな、ネモネアも付いてくるとはな」
「私は思ってたよ」
「さすがソレイルだよ。あたいだって大切な人たちのために不安を拭いたいから」
「……話す暇があったらちゃんと手がかり一つでも探せ」
変わらず厳しい言葉のスオーロ。探すと言っても皆ほとんど瓦礫の絨毯に乗ってるだけで手間はかからないし、何もない。
「――う~ん、海に顔入れてみようかな」
何となくジャポンッ。目をパチクリするが普通に魚が泳いでて美味しそう。
「おい……まったく遊びにきたんじゃないんだぞ。ネモネアおい聞こえてるのか、ネモネアッ!」
「ぷ~、気持ちい」
「おいネモネア遊ぶなら帰っ……」
「悪かったよスオーロ……地震?」
ゴゴゴッと地鳴りが響き、鳥たちも飛び去った。
「みんなっ、離れてっ!」
アヴエロの声も聞こえて急いで瓦礫の近くを離れた。だが瓦礫は意志を持ったのかと勘違いするくらい崩れた魔王の城の中心を避けていく。
「おさまっ……た」
アヴエロの元に集まるが、勇者の目が鋭い。
「地下、じゃな」
それは奥が深く真っ暗な地下へと続く階段。
「……これは」
「ネモネアなにか知ってるのか?」
「ソレイル……ああ、あたいが先頭で行くからみんな付いてきて」
黙って頷き、奈落へと続きそうな階段を慎重に下っていった……。
「――うむ、火が必要じゃな」
と杖の先端に火を灯すアクアン老師。
「ここは一体、教えてくださいネモネア」
「……ここは魔王ルモールの実験場だ」
そう、あたいが魔王の仲間になったとき一度案内してもらった場所、そしてここの最奥には。
「みんなストップ、ここの先は左右とも牢屋だ、あたいが見てくる」
「いやネモネア、私が」
「ここはあたいのがなれてる。アヴエロたちは待ってて」
「……気をつけてください」
一歩づつ慎重に、それには理由があるんだけど……。
「みんな来て、大丈夫だ」
あたいの合図で下りてきたアヴエロたちも牢屋を覗く。
「……なにもないですね」
「いや、変なんだ。ここにはあたいも関わったことのある邪恐竜や魔獣たちが入れられていた……実験体として」
「実験体ですか……」
「それにご丁寧に鍵が掛けられているわね、掛け直したのか?」
「それはあたいにも……」
誰かが開いたのか、でもこの不気味な牢屋には入れたのはあたいや魔王の部下くらい。でも部下の中にはあたいが死にかけた邪恐竜を従えられるやつなんていない。
「う~む、いや、これが普通かもしれん」
「どういうこと、ワニ……アクアン老師」
「そもそもワシらは魔王ルモールを倒している。ならここの牢屋に入れられていた邪恐竜や魔獣も消えるのは自然なことじゃないかの」
なるほどさすがワニ老師、でも外の魔物や魔獣は消えてなかったし……止まって考えたところで結論は出ないとまたあたいを先頭に進んだ。この先もよく知っている……。
「扉ですか」
「じゃあけるよ」
「ネモネア、ちょっと慎重に……」
「大丈夫、この扉の先もよく知ってるから」
「どういうことですか?」
扉を開けたそこは、真っ暗い広場で灯りで見える血痕。
「ここはあたいが力を得るために邪恐竜と死闘を繰り広げた広場」
「この血は……」
「ああ、多分あたいのだ、死にかけだったし……」
「こんなになってまで……必死に」
「どうしたアヴエロ」
「スオーロ、いや」
それで力を手に入れてアヴエロたちを殺そうと……なんか思い出していると気分が悪くなってくる。
「
妙だな……陣がある」
地面を調べていたのかソレイルは続いている線をたどるように歩くとそれは円となっていた。
「これは……スオーロやアクアン老師のほうが詳しいのではないか?」
「アクアン老師これは……まるで……」
「うむ、封印を施してあるといったほうが良いかもしれん」
その時また2度目の地震が。
「みんな魔法をっ!」
アヴエロたちは“ウイング”っと唱え翼を広げるが。
「あたいはその魔法覚えてないよ~っ!」
「ネモネアッ!」
ガバッ、アヴエロが両手であたいをキャッチ、抱きしめられる結果に。
「すいません魔法が使えないのを知らなくて、大丈夫ですかネモネア」
「……こ、怖いし、このままおろして」
本当は怖くないんだけど、ここは嘘をついておこう。しかし幸せな時間は短く無事着地。
「……もう終わりか……もうちょっと」
「ネモネア、どうしました?」
「え、いや、なんでもないよ、ハハッ……そんなことより、調べよう」
「――1部屋分くらい落とされたか、ネモネアここは知ってる?」
「ううん、あたいもここは初めて見るよソレイル」
周りを見渡すと壁、壁、か……いや何かの模様が。丸の中に丸、目みたいだ。その模様を見た瞬間だった。
「シンニューシャ、シンニューシャ、コノ封印ヲ 解ク者ヲ 排除スル……」
「やっぱ魔王ルモール復活とかはないのかな?」
「う~む……しかし何だな、ネモネアも付いてくるとはな」
「私は思ってたよ」
「さすがソレイルだよ。あたいだって大切な人たちのために不安を拭いたいから」
「……話す暇があったらちゃんと手がかり一つでも探せ」
変わらず厳しい言葉のスオーロ。探すと言っても皆ほとんど瓦礫の絨毯に乗ってるだけで手間はかからないし、何もない。
「――う~ん、海に顔入れてみようかな」
何となくジャポンッ。目をパチクリするが普通に魚が泳いでて美味しそう。
「おい……まったく遊びにきたんじゃないんだぞ。ネモネアおい聞こえてるのか、ネモネアッ!」
「ぷ~、気持ちい」
「おいネモネア遊ぶなら帰っ……」
「悪かったよスオーロ……地震?」
ゴゴゴッと地鳴りが響き、鳥たちも飛び去った。
「みんなっ、離れてっ!」
アヴエロの声も聞こえて急いで瓦礫の近くを離れた。だが瓦礫は意志を持ったのかと勘違いするくらい崩れた魔王の城の中心を避けていく。
「おさまっ……た」
アヴエロの元に集まるが、勇者の目が鋭い。
「地下、じゃな」
それは奥が深く真っ暗な地下へと続く階段。
「……これは」
「ネモネアなにか知ってるのか?」
「ソレイル……ああ、あたいが先頭で行くからみんな付いてきて」
黙って頷き、奈落へと続きそうな階段を慎重に下っていった……。
「――うむ、火が必要じゃな」
と杖の先端に火を灯すアクアン老師。
「ここは一体、教えてくださいネモネア」
「……ここは魔王ルモールの実験場だ」
そう、あたいが魔王の仲間になったとき一度案内してもらった場所、そしてここの最奥には。
「みんなストップ、ここの先は左右とも牢屋だ、あたいが見てくる」
「いやネモネア、私が」
「ここはあたいのがなれてる。アヴエロたちは待ってて」
「……気をつけてください」
一歩づつ慎重に、それには理由があるんだけど……。
「みんな来て、大丈夫だ」
あたいの合図で下りてきたアヴエロたちも牢屋を覗く。
「……なにもないですね」
「いや、変なんだ。ここにはあたいも関わったことのある邪恐竜や魔獣たちが入れられていた……実験体として」
「実験体ですか……」
「それにご丁寧に鍵が掛けられているわね、掛け直したのか?」
「それはあたいにも……」
誰かが開いたのか、でもこの不気味な牢屋には入れたのはあたいや魔王の部下くらい。でも部下の中にはあたいが死にかけた邪恐竜を従えられるやつなんていない。
「う~む、いや、これが普通かもしれん」
「どういうこと、ワニ……アクアン老師」
「そもそもワシらは魔王ルモールを倒している。ならここの牢屋に入れられていた邪恐竜や魔獣も消えるのは自然なことじゃないかの」
なるほどさすがワニ老師、でも外の魔物や魔獣は消えてなかったし……止まって考えたところで結論は出ないとまたあたいを先頭に進んだ。この先もよく知っている……。
「扉ですか」
「じゃあけるよ」
「ネモネア、ちょっと慎重に……」
「大丈夫、この扉の先もよく知ってるから」
「どういうことですか?」
扉を開けたそこは、真っ暗い広場で灯りで見える血痕。
「ここはあたいが力を得るために邪恐竜と死闘を繰り広げた広場」
「この血は……」
「ああ、多分あたいのだ、死にかけだったし……」
「こんなになってまで……必死に」
「どうしたアヴエロ」
「スオーロ、いや」
それで力を手に入れてアヴエロたちを殺そうと……なんか思い出していると気分が悪くなってくる。
「
妙だな……陣がある」
地面を調べていたのかソレイルは続いている線をたどるように歩くとそれは円となっていた。
「これは……スオーロやアクアン老師のほうが詳しいのではないか?」
「アクアン老師これは……まるで……」
「うむ、封印を施してあるといったほうが良いかもしれん」
その時また2度目の地震が。
「みんな魔法をっ!」
アヴエロたちは“ウイング”っと唱え翼を広げるが。
「あたいはその魔法覚えてないよ~っ!」
「ネモネアッ!」
ガバッ、アヴエロが両手であたいをキャッチ、抱きしめられる結果に。
「すいません魔法が使えないのを知らなくて、大丈夫ですかネモネア」
「……こ、怖いし、このままおろして」
本当は怖くないんだけど、ここは嘘をついておこう。しかし幸せな時間は短く無事着地。
「……もう終わりか……もうちょっと」
「ネモネア、どうしました?」
「え、いや、なんでもないよ、ハハッ……そんなことより、調べよう」
「――1部屋分くらい落とされたか、ネモネアここは知ってる?」
「ううん、あたいもここは初めて見るよソレイル」
周りを見渡すと壁、壁、か……いや何かの模様が。丸の中に丸、目みたいだ。その模様を見た瞬間だった。
「シンニューシャ、シンニューシャ、コノ封印ヲ 解ク者ヲ 排除スル……」
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