12 / 66
2色の眼
しおりを挟む
「――婆さんが膝をやっての~」
「なるほど、それで来られたのですね、では……スモール……リカバリー」
緑色の小さな光がお婆さんの擦り向けた膝傷を治癒していく。ここはクリスロッサ村の唯一、魔法で治癒する場所でお年寄りに人気の回復院。
「ふぅ~」
「やあスオーロ」
「……またお前かネモネア、今日はいったいなんのようだ」
迷惑そうな顔、まだ嫌われている。信頼は時間ものだから仕方ないんだけど。
「今日はあたいじゃなくて、ブリジットなんだ」
「こんにちは」
「こんにちは、どこか調子が悪いのか?」
不安なブリジットがあたいに向いてきたから笑顔でうなずく。
「ほら、だいじょうぶだから」
「うん……」
フードを被ったブリジットは震えながらめくるって髪の毛で隠していた左眼を見せた。
「これは……驚いた。君は紅い眼ではなく2色の眼だったのか」
右目は紅い眼、左目は黄の眼をしていた。火事があった3日後の夜、シスター・カルタとあたいにブリジットが相談してきて自分から明かしてきた。たまたま水に映る自分の眼が左右違ったことに不安を覚えて以来、髪の毛で左眼を隠して生きてきたと、シスター・カルタと出会う前の話だった。
「ワタシって……だいじょうぶですか?」
「珍しい眼だが、なにも心配いらないよ」
「アハッ」
「ただこの前話した赤の魔法の話に今度は黄の魔法も入るということは覚えていたほうがいい」
紅い眼は様々なものに紅の力を与え、火ならば炎に強化することもできるという話だから黄の眼の左目は様々なものに黄の力をあたえるということ……。
「え~っと……」
「光ならば輝に強化、だ」
「かがやき?」
「うん、やってみようか」
「え……」
「恐がらなくていい、光る魔法は安全だから」
「ホント?」
「ホントだよ、両手で丸を作ってみよう」
「りょうてで、まる」
「そして『光って』と心で強く念じるんだ」
「うおっ、光った、すごいよ!」
あたいもブリジットのマネをしていたら光って興奮。
「ネモネア、うるさいぞ」
「あ、ゴメンごめん」
スオーロの言葉で安心したブリジットが念じると光は現れてより強く輝く。
「わぁっ、きれい……あ、大きくなる」
「のあっ、眩しいっ!」
最初の小さな光からブリジットの顔ほど大きな輝きにあたいは目が眩んだ。それと同時に輝きはきえる。
「す、すごくキレイだった」
「うん、魔法は使い方を間違わなければ沢山の人を救うこともできる」
「ひと……でも」
「だから魔法の鍛錬を忘れずに、ブリジット」
ブリジットは大きく頷いたその眼は希望に満ちた魔法にも負けない輝やいた眼だった。
「まぶしっ、まぶしっ」
「ネモネア、うるさい……」
ブリジットの不安も解消、教会の道の間に光る魔法が嬉しいのかずっと練習していた。あの哀しそだった娘が今はいい顔をしてると、いい気分で戻ったらシスター・カルタが玄関で待ってた。
「待ってたわネモネア、ブリジット。どうだった?」
「なんの問題もなかったよ。ねっ」
「うん」
「そう、元気になって嬉しいわ……それでネモネア、あなたにお客さまが来ているわ」
知り合いなんて最近出会った人たちしかいないあたいに一体誰が。
「――楽しくやってますよ」
「そうか、よかったな。世界は平和……」
「誰だろ」
あたいは恐るおそるドアを開いた。するとそこにはアヴエロと話している鎧を着た黄色長髪の騎士が。
「あ、ネモネアおかえり」
「アヴエロ、おかえり……そのひとは」
「ひさしぶりだな、ネモネア」
「あ、あんたはアヴエロの仲間の女騎士」
「私は、グランジウム城の騎士ソレイル・オーランジ」
「あ、ああ」
「……どうした?」
それは勇者の仲間の1人でアヴエロ共に戦った騎士ソレイル・オーランジだった。きっとこのソレイルもあたいを警戒しているだろう。
「まあいいがネモネア、あなたはこの前の夜に魔獣と遭遇しなかったか?」
「うん、帰り道で魔獣エレファントに遭遇してあたいとジュリ2人で倒したけど」
「そうか、詳しく聞かせてくれ」
そう言われてジュリも呼び出して一緒にその日の出来事を覚えてる限り話した。ふむふむと紙にひたすら書いていくソレイル、その顔に恨みはなさそうだけど。
――話は終わって一仕事お得たように海岸に出た騎士ソレイルに誘われたあたい。
「ここは海が見えて綺麗ね」
「……あのさ」
「ん、どうした? 今日は元気が出ないみたいだが」
振り向くと綺麗な人だ、そんな人をあたいは……。
「恨みがあるなら言ってくれ……その、あたいは元でもあんたを襲った魔王の配下……だったから」
「ネモネア……ははーん、さてはスオーロに何か言われたんだな」
「えっ、どうしてそれを?」
「彼も相変わらずのようだな」
「信じてないって、言われてさ」
「私がアヴエロの仲間になるときも『魔王を倒す旅だからな、引き返すなら今のうちだ』ってずっと睨まれてたよ」
「え、そうなの?」
「だがスオーロも悪気があるわけじゃないんだ。彼はアヴエロの友で、誰にでも優しく接しすぎるアヴエロに不安を感じていて、自身が代わりに近づくものを注意深く観察するようになったんだ」
たしかにアヴエロは疑わずにすぐ誰とでも知り合いになるし敵のあたいにさえ慈悲をくれたし。そう思うとスオーロの気持ちがちょっとわかる気がした。なんていうかもう少しあたいを……。
「ん? 顔が赤くなってるぞ」
「あ、いや、なんでも」
「ネモネア、お前は本当に変わったな……なんていうか今のほうが……おもしろい」
「え……おもしろい……それって褒め言葉?」
「褒め言葉よ、人間らしい。あと私の妹にそっくりだ」
「人間らしい……ありがとうソレイルさん」
「ソレイルでいい」
「ありがとうソレイル」
「そうだっ、今日はクリスロッサ城で剣の指南をするんだがネモネアも空いているなら来てもらえないだろうか?」
「え、いいけど剣使えないよ」
「剣は使わないから大丈夫」
突然の話だったけど気分よくシスター・カルタに話したら快く許してくれてあたいはソレイルと一緒に急遽クリスロッサ城に向かった……。
「なるほど、それで来られたのですね、では……スモール……リカバリー」
緑色の小さな光がお婆さんの擦り向けた膝傷を治癒していく。ここはクリスロッサ村の唯一、魔法で治癒する場所でお年寄りに人気の回復院。
「ふぅ~」
「やあスオーロ」
「……またお前かネモネア、今日はいったいなんのようだ」
迷惑そうな顔、まだ嫌われている。信頼は時間ものだから仕方ないんだけど。
「今日はあたいじゃなくて、ブリジットなんだ」
「こんにちは」
「こんにちは、どこか調子が悪いのか?」
不安なブリジットがあたいに向いてきたから笑顔でうなずく。
「ほら、だいじょうぶだから」
「うん……」
フードを被ったブリジットは震えながらめくるって髪の毛で隠していた左眼を見せた。
「これは……驚いた。君は紅い眼ではなく2色の眼だったのか」
右目は紅い眼、左目は黄の眼をしていた。火事があった3日後の夜、シスター・カルタとあたいにブリジットが相談してきて自分から明かしてきた。たまたま水に映る自分の眼が左右違ったことに不安を覚えて以来、髪の毛で左眼を隠して生きてきたと、シスター・カルタと出会う前の話だった。
「ワタシって……だいじょうぶですか?」
「珍しい眼だが、なにも心配いらないよ」
「アハッ」
「ただこの前話した赤の魔法の話に今度は黄の魔法も入るということは覚えていたほうがいい」
紅い眼は様々なものに紅の力を与え、火ならば炎に強化することもできるという話だから黄の眼の左目は様々なものに黄の力をあたえるということ……。
「え~っと……」
「光ならば輝に強化、だ」
「かがやき?」
「うん、やってみようか」
「え……」
「恐がらなくていい、光る魔法は安全だから」
「ホント?」
「ホントだよ、両手で丸を作ってみよう」
「りょうてで、まる」
「そして『光って』と心で強く念じるんだ」
「うおっ、光った、すごいよ!」
あたいもブリジットのマネをしていたら光って興奮。
「ネモネア、うるさいぞ」
「あ、ゴメンごめん」
スオーロの言葉で安心したブリジットが念じると光は現れてより強く輝く。
「わぁっ、きれい……あ、大きくなる」
「のあっ、眩しいっ!」
最初の小さな光からブリジットの顔ほど大きな輝きにあたいは目が眩んだ。それと同時に輝きはきえる。
「す、すごくキレイだった」
「うん、魔法は使い方を間違わなければ沢山の人を救うこともできる」
「ひと……でも」
「だから魔法の鍛錬を忘れずに、ブリジット」
ブリジットは大きく頷いたその眼は希望に満ちた魔法にも負けない輝やいた眼だった。
「まぶしっ、まぶしっ」
「ネモネア、うるさい……」
ブリジットの不安も解消、教会の道の間に光る魔法が嬉しいのかずっと練習していた。あの哀しそだった娘が今はいい顔をしてると、いい気分で戻ったらシスター・カルタが玄関で待ってた。
「待ってたわネモネア、ブリジット。どうだった?」
「なんの問題もなかったよ。ねっ」
「うん」
「そう、元気になって嬉しいわ……それでネモネア、あなたにお客さまが来ているわ」
知り合いなんて最近出会った人たちしかいないあたいに一体誰が。
「――楽しくやってますよ」
「そうか、よかったな。世界は平和……」
「誰だろ」
あたいは恐るおそるドアを開いた。するとそこにはアヴエロと話している鎧を着た黄色長髪の騎士が。
「あ、ネモネアおかえり」
「アヴエロ、おかえり……そのひとは」
「ひさしぶりだな、ネモネア」
「あ、あんたはアヴエロの仲間の女騎士」
「私は、グランジウム城の騎士ソレイル・オーランジ」
「あ、ああ」
「……どうした?」
それは勇者の仲間の1人でアヴエロ共に戦った騎士ソレイル・オーランジだった。きっとこのソレイルもあたいを警戒しているだろう。
「まあいいがネモネア、あなたはこの前の夜に魔獣と遭遇しなかったか?」
「うん、帰り道で魔獣エレファントに遭遇してあたいとジュリ2人で倒したけど」
「そうか、詳しく聞かせてくれ」
そう言われてジュリも呼び出して一緒にその日の出来事を覚えてる限り話した。ふむふむと紙にひたすら書いていくソレイル、その顔に恨みはなさそうだけど。
――話は終わって一仕事お得たように海岸に出た騎士ソレイルに誘われたあたい。
「ここは海が見えて綺麗ね」
「……あのさ」
「ん、どうした? 今日は元気が出ないみたいだが」
振り向くと綺麗な人だ、そんな人をあたいは……。
「恨みがあるなら言ってくれ……その、あたいは元でもあんたを襲った魔王の配下……だったから」
「ネモネア……ははーん、さてはスオーロに何か言われたんだな」
「えっ、どうしてそれを?」
「彼も相変わらずのようだな」
「信じてないって、言われてさ」
「私がアヴエロの仲間になるときも『魔王を倒す旅だからな、引き返すなら今のうちだ』ってずっと睨まれてたよ」
「え、そうなの?」
「だがスオーロも悪気があるわけじゃないんだ。彼はアヴエロの友で、誰にでも優しく接しすぎるアヴエロに不安を感じていて、自身が代わりに近づくものを注意深く観察するようになったんだ」
たしかにアヴエロは疑わずにすぐ誰とでも知り合いになるし敵のあたいにさえ慈悲をくれたし。そう思うとスオーロの気持ちがちょっとわかる気がした。なんていうかもう少しあたいを……。
「ん? 顔が赤くなってるぞ」
「あ、いや、なんでも」
「ネモネア、お前は本当に変わったな……なんていうか今のほうが……おもしろい」
「え……おもしろい……それって褒め言葉?」
「褒め言葉よ、人間らしい。あと私の妹にそっくりだ」
「人間らしい……ありがとうソレイルさん」
「ソレイルでいい」
「ありがとうソレイル」
「そうだっ、今日はクリスロッサ城で剣の指南をするんだがネモネアも空いているなら来てもらえないだろうか?」
「え、いいけど剣使えないよ」
「剣は使わないから大丈夫」
突然の話だったけど気分よくシスター・カルタに話したら快く許してくれてあたいはソレイルと一緒に急遽クリスロッサ城に向かった……。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
成長率マシマシスキルを選んだら無職判定されて追放されました。~スキルマニアに助けられましたが染まらないようにしたいと思います~
m-kawa
ファンタジー
第5回集英社Web小説大賞、奨励賞受賞。書籍化します。
書籍化に伴い、この作品はアルファポリスから削除予定となりますので、あしからずご承知おきください。
【第七部開始】
召喚魔法陣から逃げようとした主人公は、逃げ遅れたせいで召喚に遅刻してしまう。だが他のクラスメイトと違って任意のスキルを選べるようになっていた。しかし選んだ成長率マシマシスキルは自分の得意なものが現れないスキルだったのか、召喚先の国で無職判定をされて追い出されてしまう。
一方で微妙な職業が出てしまい、肩身の狭い思いをしていたヒロインも追い出される主人公の後を追って飛び出してしまった。
だがしかし、追い出された先は平民が住まう街などではなく、危険な魔物が住まう森の中だった!
突如始まったサバイバルに、成長率マシマシスキルは果たして役に立つのか!
魔物に襲われた主人公の運命やいかに!
※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。
※カクヨムにて先行公開中
ウサ耳の精霊王女は黒の竜王に溺愛される
櫻井金貨
恋愛
ウサギに変身できる少女フィオナは、精霊王女。子供の頃に助けてくれた恩人、大好きな”彼”と再会するために、人間の世界へやってきてしまいました。
しかし、2つの世界を分ける境界線を超えたため、精霊国のことは忘れてしまいます。
大好きな”彼”は、黒の竜王と呼ばれる、オークランド王国国王ドレイクでした。
ドレイクと再会したフィオナの恋の行方は?
一方、オークランドと因縁のある隣国、アルワーン王国の国王アルファイドも、何かを企んでいるようで!?
過去の痛みが、精霊に癒される時、世界に平和が訪れます。
ラストはハッピーエンドです。
※全44話
※カクヨム、小説家になろうにも掲載しています
欲しいものはガチャで引け!~異世界召喚されましたが自由に生きます~
シリウス
ファンタジー
身体能力、頭脳はかなりのものであり、顔も中の上くらい。負け組とは言えなそうな生徒、藤田陸斗には一つのマイナス点があった。それは運であった。その不運さ故に彼は苦しい生活を強いられていた。そんなある日、彼はクラスごと異世界転移された。しかし、彼はステ振りで幸運に全てを振ったためその他のステータスはクラスで最弱となってしまった。
しかし、そのステ振りこそが彼が持っていたスキルを最大限生かすことになったのだった。(軽い復讐要素、内政チートあります。そういうのが嫌いなお方にはお勧めしません)初作品なので更新はかなり不定期になってしまうかもしれませんがよろしくお願いします。
婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています
葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。
そこはど田舎だった。
住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。
レコンティーニ王国は猫に優しい国です。
小説家になろう様にも掲載してます。
貴族令嬢に生まれたからには念願のだらだらニート生活したい。
譚音アルン
ファンタジー
ブラック企業に勤めてたのがいつの間にか死んでたっぽい。気がつくと異世界の伯爵令嬢(第五子で三女)に転生していた。前世働き過ぎだったから今世はニートになろう、そう決めた私ことマリアージュ・キャンディの奮闘記。
※この小説はフィクションです。実在の国や人物、団体などとは関係ありません。
※2020-01-16より執筆開始。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる