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プリンセス ―ショート―

夢のよう

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 ――決められた人生なんてごめんよ。



「シリカ、どうしたの?」



「オ、オネリア。いや、別に」



「シリカって立派よね」



「突然なによ」



「お父様お母様が亡くなったのに、しっかりと王女としての仕事をして······泣きたければ泣いてもいいのよ······」



 泣く? 



 そんなわけない、だって父も母も殺す様命令したのはなんだから。



 オネリア、あんたは何時もいつもそうやって分かった様に言ってあたしのことを何もわかってない。



 なのに、友だの親友だのと······。



「シリカ様、王の王女は、その······言われた通り」



」これでいい、これで不要なゴミは消えた······。



「がはっ!」


 後から刺されロベリーを離す。


 同時にチュリンも離され2人が地面に激突しかけるが、ロベリーをバイオレットとガーネット、チュリンをベラが両手でキャッチする。



「おまえ~······よくも、よく、も」



 刺されながらもホワイトの方を向き、



「シリカさま、もう終わりにしましょう」




「やかましいっ、このバカ娘がぁぁぁっ!」




 持っていた剣でホワイトに襲いかかると、スっと手を下げ彼女は身を守らず······、



 グサッ、



「ホワイトッ!」



 チュリンが名を呼ぶも、微動だにせずシリカの剣をその見に受けた。



 ベラの腕から離れホワイトに向かうチュリン、



「ぐはぁ」



 ベチャッと吐血するシリカはそれでも執念で、



「あと、あと、すこしで······殺してやる、殺してやるっ!」



 仰向けに倒れたホワイトの剣を抜き顔に剣を向け、再び「殺してやる」と悪魔の様に連呼する。



「やめてーっ!」



「フフッ······し、ね」



「チュリーンッ!」



 ロベリーが声を上げるもチュリンがホワイトの上に乗らないようかぶさり剣は彼女に。



 キンッ、



 その瞬間ベラが下から上へと大剣でシリカの剣を弾き、



「「はぁぁっ!」」



 自分の剣を拾ったバイオレットとガーネットがシリカをクロスに斬り掛かった。 



 ところがベラが飛ばした剣はエマリンの所に、



「しまった!」



「エマリン!」



「えっ、えっ!」



 ベラとデナが声に出すと、



 剣は弾かれた。



「大丈夫? エマリン王女」



「べ、ベルディ王女」



 怯えるエマリンと顔を合わすベルディは笑顔でウインクをする。



「あっ······あっ······」



「もう終わりだ」



「シリカ!」



 バイオレットとガーネットの言葉が聞こえたが、



 「······やか······し······い、オ······ア······あ」



 ――やかましいオネリア。あたしが、あたしだけがクイーン·ザ·セレブレイド、この世界の女王なんだ――。



 王女とは思えぬ様な血のドレスに染まりシリカは天を見上げながら亡くなった。



「ホワイトッ、ホワイトッ!」



「チュリン······おう、じょ」



 チュリンは自分の膝の上にホワイトの頭を乗せ、



「ホワイト······どうして、あなた、死のうと······ぐすっ」



 薄目を僅かに開き、



「チュ、リン······あた、しの······チュ、リン」



 右手浮かせ、チュリンはその手を両手で握り、



「あたしは、あたしはここよ、ホワイト」



「これ······は、とう······ぜんの······こと」



「あなたは私を殺そうとした。でもっ、私は今あなたのおかげでこうして生きてるっ······だから」



「や······め······」



「ホワイト······ホワイト、ホワイトォォォーッ!」



 やめてればよかった。



 捨てればよかった。



 何もかも捨てあなたと、チュリンと一緒にいたかった······。



 ギトス城の謁見の間で王女達はボロボロになり、人を失い、王女を失い勝者だと言うにはあまりにも得るもののない失っただけの戦争はようやく終戦という時間の針が動く······。



 これは亡くなる前の話、馬車の途中に騎士団長ウィンは「ぐぁ」馬車の運転手を殺しオネリア1人となる。


「なんてことを、ウィン!」


 ふぅ~っ、葉巻を吸うウィンは穏やかに剣を向けて、


「すいませんね~、オネリア王女。シリカ様の命令であなたの命も、貰います」



「······シリカ、だったのね」



「あなたはその髪色の様に、親しみやすく暖かい方でした。何か伝える事はありますかオネリア王女······」



 死を覚悟しそれでも臆せず、



 シリカ、あなたの想う世界にはならない。なぜなら人々と共に歩むのは若き王女かのじょ達だからよ······。



 ――1週間後。



「沢山の犠牲を、生んでしまった」



 大庭園のお墓前で緑髪の彼女はそう口にすると、



「うん、ほんとうに······」



 墓石の頭に優しく擦るピンク髪の彼女。



「ねぇチュリン、ほんとうに平和なんてあるのかな」



「なに言ってるのよ、頑張ってたじゃないロベリー」



 あのあとロベリーは安心と同時に今までの蓄積した疲労で気絶、ギトス隣国のレンプル城へと運ばれベラは自室のベッドに寝かし、まる1日目覚めないロベリーをチュリンと2人で看病し彼女は目を覚ます······。


「いつまでたってもロベリーが目を覚まさないから心配したわ」


「ごめん、無理してたから······かな、ってチュリンだって生きてたならもっと早く教えてくれても良かったのに」



 チュリンはホワイトにより食事に毒を盛られて死んだはずだった。ベッドから倒れ横になり医者が体調を見ていると熱も出て激痛なのか呻き辛そう、ホワイトは気づけば両手から汗が、自分の使命とは裏腹に涙を零す。


 どんどん意識は薄れもう終わりだと騎士達はチュリン王女はお終いだと国民に告げた。



 だが医者が居なくなった空きにホワイトは自分用の解毒剤をチュリンに飲ませていたのだ。



 ところが呼吸をしていたのだが1時間ほどたっても一向に目を開かず6日間にも及び生死をさまよい、目を覚ましたのはロベリーがターキシムと戦った日。


 そしてギトスからの任を受けた鉄仮面の3人と戦うデナを見周りの兵が発見しホワイトと共に救い出した。


 お互いに、王女としての運命をたどりまた再会する約束をするもチュリンが死んだと事により、平和への想いを受け覚悟を決めたロベリーの一方で、チュリンもまた命の戦いに目が覚め2人は再び出会った事が今までの苦悩を凌駕するほど嬉しく抱きしめ合う······。



「ホントッ、夢みたい」



「うん、いまは、ただこうして話してるだけでも、気持ちいい」



 ――目を覚まして2日後にはロベリーも回復、お世話になったベラに別れの挨拶をすると、


「私からも感謝するロベリー王女、おかげで娘と夫とまたこうしていられるのだからな」

「カンシャツル」


 ベラの娘マリンの感謝に思わず満面の笑みで手を振る。


「いえ、こちらこそベラ王女にはとても感謝しています」


「ベラでいい、だから私もこれからはロベリー、でいいか?」


「え、フフッ、はい、構いません」


 するとチュリンも抜けがけと言い張りベラには名前で呼んでもらうことにした。


「ほうらマリン、新しいママの友達でちゅよ~」


「チョベリ~チュチン~」


 戦争時は険しい顔をしていた彼女達もマリンの微妙な呼び違いにベラの部屋で大いに笑う3人の王女達······。


 だがこのあとレンプル城を出た2人は母国に帰らず、もう1つの大切な行事に出る事に······。
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