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幻でも君は君
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どうして、断ってしまったのだろう。
でも僕と一緒になると彼女は不幸になる······そう強く感じたんだ。
なぜかは分からないけど、なにか、気持ちの奥の方で······気づけば僕は涙を流していた······。
次の日、まだ彼女の事を考えていた。
「昨日泣いてなあ、隅野さん······」
断ったのに変な自分。そんな事を繰り返し考えているとお昼になったのでコンビニに買いに行く――。
――真っ白い空間。
「よし」
と思ったけれど、このあとどうしていいのか分からない。気候獣なら分かるのにと考えていたら、そこにうる覚えだけど見た事のある小さな子供の姿が、
「この子はたしか······」
すると子供は私の服を掴み、私は思う。
「あなた、徹の居場所知ってるのね」
直感で付いていく。
その時、
「うわっ!」
眩しくなって······。
「ここは······」
目を開くと、徹が前に住んでた霞さんの家だった。
「お義母さんの自宅だ······あれ?」
小さな子の姿がない。
「また消えたのね。しょうがない子」
その時ドアを開ける音がして、
「もしかして!」
霞さんの家のドアに向かったら、
「徹ぅ~っ!」
「え、隅野さん······どうして······」
私が抱きつくと、
「や、止めてください!」
「え?」
「昨日も言ったけど······隅野さんとは、付き合えません」
「はい?」
れ~せ~に、考えてみた。そういえばこの時は私も記憶がなかったはず、つまり、
「昨日って······」
「蝶祭りの終わりだよ」
断った?
「どうして断ったのよ」
「それは······」
「それは?」
「僕と付き合うと不幸になる、そんな気がして······」
「徹······」
私のせいだ。私が徹に沢山心配かけてばっかりで······だから心の奥に自分への罪悪感を持たせてしまったのかもしれない、そう感じた。
「だから、ごめん隅野さん······」
けれど、
「徹!」
「うわ!」
「思い出して徹」
「な、何を」
「たしかに最近は大変な事ばかりで、あたしも無茶ばかりしたけど、楽しい思い出だってあるじゃない!」
「隅野さん······」
「水族館で沢山なんとかって魚観たり、薬忘れて大変だったり――あとプール、ブッドレアのプールで一日泳いだり、映画も観たし、恋路ヶ浜で愛の鐘鳴らしたじゃん」
彼の両手を握り覚えてる限りを話す。
すると頭を抱え、
「未、来······」
「徹!」
「違······うよ······」
「なに?」
「······ハハッ、違うよ」
「な、なにがよ?」
「なんとか、じゃなくて蝶々魚でプールは二日目も行ったし、愛の鐘じゃなくて幸せの鐘だろ」
「徹、記憶が戻ったのね、良かった!」
抱きつく、今度は『止めて』とは言わない。
「ごめんな未来、オレが助けるはずが逆に助けられちゃって」
「いいの、これで帰れるから、ね、帰ろう」
「ちょっと待って」
え、と思いながら徹に付いていく······。
「ねえ、なんで電車に乗るの?」
「もう少し待っててよ」
せっかく帰れるのに。電車を降りて着いた先は、
「私の自宅······もしかして」
「未来はここで待ってて······」
徹がインターホンを鳴らす。
「は~い」
「徹です。あの~、隅野さん居ますか?」
「ちょっと待ってて、未来ィ~、徹君よ~」
少しして階段の音が、
「道長君······」
「隅野さん······」
私は気になってコッソリ見に行った。そこには、むむ、若い私の姿が、
「何、しに来たの······」
「あ、あの、お祭りの事だけど取り消しにして――僕と付き合ってほしい!」
「え······」
「急にでごめん、ただ、あの時······とても不安で、僕が君を不幸にしてしまうと思って、それで······」
「そんな、勝手よ、道長君、ぐすっ」
「ホントごめん······でも気が付いた時、諦めきれなくて」
「もう道長君······嬉しいのか悲しいのか分かんない」
「許して、くれるかな······」
「週に一回は必ず······デートしてくれるなら許してあげる」
「うん約束するよ」
「ホント?」
「うん······さすが未来だ······」
「え?」
「――じゃあ帰るよ、許してくれてありがとう隅野さん」
「うん、じゃあね道長君」
「またね······」
徹が戻って来たとき私は感動で、
「うっ、うっ」
泣いていた。
「み、未来、泣いてるの?」
「だっで、何が、感動しちゃっでよかったね私って」
「おいおい自分だぞ」
「分かってる······でもどうしてこんな事?」
「だって、例えあの未来が幻でも、未来は未来だから」
「なによっ、カッコ付けちゃってもう」
「じゃあ帰ろうか」
「うん」
「帰り方わかるの?」
「大丈夫、前と同じ」
そう、素直になって互いを感じ合う······。
でも僕と一緒になると彼女は不幸になる······そう強く感じたんだ。
なぜかは分からないけど、なにか、気持ちの奥の方で······気づけば僕は涙を流していた······。
次の日、まだ彼女の事を考えていた。
「昨日泣いてなあ、隅野さん······」
断ったのに変な自分。そんな事を繰り返し考えているとお昼になったのでコンビニに買いに行く――。
――真っ白い空間。
「よし」
と思ったけれど、このあとどうしていいのか分からない。気候獣なら分かるのにと考えていたら、そこにうる覚えだけど見た事のある小さな子供の姿が、
「この子はたしか······」
すると子供は私の服を掴み、私は思う。
「あなた、徹の居場所知ってるのね」
直感で付いていく。
その時、
「うわっ!」
眩しくなって······。
「ここは······」
目を開くと、徹が前に住んでた霞さんの家だった。
「お義母さんの自宅だ······あれ?」
小さな子の姿がない。
「また消えたのね。しょうがない子」
その時ドアを開ける音がして、
「もしかして!」
霞さんの家のドアに向かったら、
「徹ぅ~っ!」
「え、隅野さん······どうして······」
私が抱きつくと、
「や、止めてください!」
「え?」
「昨日も言ったけど······隅野さんとは、付き合えません」
「はい?」
れ~せ~に、考えてみた。そういえばこの時は私も記憶がなかったはず、つまり、
「昨日って······」
「蝶祭りの終わりだよ」
断った?
「どうして断ったのよ」
「それは······」
「それは?」
「僕と付き合うと不幸になる、そんな気がして······」
「徹······」
私のせいだ。私が徹に沢山心配かけてばっかりで······だから心の奥に自分への罪悪感を持たせてしまったのかもしれない、そう感じた。
「だから、ごめん隅野さん······」
けれど、
「徹!」
「うわ!」
「思い出して徹」
「な、何を」
「たしかに最近は大変な事ばかりで、あたしも無茶ばかりしたけど、楽しい思い出だってあるじゃない!」
「隅野さん······」
「水族館で沢山なんとかって魚観たり、薬忘れて大変だったり――あとプール、ブッドレアのプールで一日泳いだり、映画も観たし、恋路ヶ浜で愛の鐘鳴らしたじゃん」
彼の両手を握り覚えてる限りを話す。
すると頭を抱え、
「未、来······」
「徹!」
「違······うよ······」
「なに?」
「······ハハッ、違うよ」
「な、なにがよ?」
「なんとか、じゃなくて蝶々魚でプールは二日目も行ったし、愛の鐘じゃなくて幸せの鐘だろ」
「徹、記憶が戻ったのね、良かった!」
抱きつく、今度は『止めて』とは言わない。
「ごめんな未来、オレが助けるはずが逆に助けられちゃって」
「いいの、これで帰れるから、ね、帰ろう」
「ちょっと待って」
え、と思いながら徹に付いていく······。
「ねえ、なんで電車に乗るの?」
「もう少し待っててよ」
せっかく帰れるのに。電車を降りて着いた先は、
「私の自宅······もしかして」
「未来はここで待ってて······」
徹がインターホンを鳴らす。
「は~い」
「徹です。あの~、隅野さん居ますか?」
「ちょっと待ってて、未来ィ~、徹君よ~」
少しして階段の音が、
「道長君······」
「隅野さん······」
私は気になってコッソリ見に行った。そこには、むむ、若い私の姿が、
「何、しに来たの······」
「あ、あの、お祭りの事だけど取り消しにして――僕と付き合ってほしい!」
「え······」
「急にでごめん、ただ、あの時······とても不安で、僕が君を不幸にしてしまうと思って、それで······」
「そんな、勝手よ、道長君、ぐすっ」
「ホントごめん······でも気が付いた時、諦めきれなくて」
「もう道長君······嬉しいのか悲しいのか分かんない」
「許して、くれるかな······」
「週に一回は必ず······デートしてくれるなら許してあげる」
「うん約束するよ」
「ホント?」
「うん······さすが未来だ······」
「え?」
「――じゃあ帰るよ、許してくれてありがとう隅野さん」
「うん、じゃあね道長君」
「またね······」
徹が戻って来たとき私は感動で、
「うっ、うっ」
泣いていた。
「み、未来、泣いてるの?」
「だっで、何が、感動しちゃっでよかったね私って」
「おいおい自分だぞ」
「分かってる······でもどうしてこんな事?」
「だって、例えあの未来が幻でも、未来は未来だから」
「なによっ、カッコ付けちゃってもう」
「じゃあ帰ろうか」
「うん」
「帰り方わかるの?」
「大丈夫、前と同じ」
そう、素直になって互いを感じ合う······。
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