4 / 4
約束
しおりを挟む
洸介、こうすけ、
落ち着いたように見えたけど、それは見えただけで心が病んでたらまた自殺してしまうかもしれないと不安が襲ったが、
「こうすけ······」
「ん、起きたみたいだね、おはよう」
机に向かってなにやら勉強をしているようだった。
「なにしてるの?」
「勉強だよ、勉強」
「そう」胸がバクバクしてホッと膝から崩れ落ちたマキ。
このあともしばらく洸介は集中して机で勉強をしていた······。
お昼の時間になって一緒に食べたが、洸介に変化はなく再び椅子に座り勉強を始めだす。
これは、と気にはなったものの目を離すわけにはいかないと座ったら、
「また見張り?」
「······そうよ」
「暇じゃない?」
「え、なによ」
「静かにするんだったらそこのゲームでもしてていいよ」
意外な言葉が飛んできて頭が真っ白になる。そりゃ暇じゃないといえば嘘にはなるが、明らかに彼の何かが変わったような気がしてしまう。
そのまま夜になり夜食も一緒に食べ机に向かうと昨日までの騒ぎとはまるで別の世界のよう。
ところが勉強を始めて午後9時を過ぎたころ、
「はぁ~」
ドタッ、と机に寝そべる洸介。
「洸介、今日はもう止めない?」
「う~ん、少し休憩する」
ベッドに仰向けになる。マキはこの年頃の子はすごいと同時に大変だと思う、自分の人生が左右され周りの期待も背負って、加えてプレッシャーとハードな勉強時間との戦いに見を投じるのだから。
「······マキ」
「な、なに?」考えごとをしてはっとする。
「人間って、どうしてこんなに不安定なんだろう。つい昨日まで、『もうダメだ死にたいっ』て思ったのに」
「いま、は?」
「いまはこうしてベッドに寝ていて、なんていうか昨日とは違う気持ちよさかな」
「そう、なんだ」
やっぱり心境の変化はあったみたいだけど油断はできないと彼を見る。
すると少しして彼は起き出し机に向かった。本当に勉強なんだろうか遺書だったらと心配でこっそり覗きもしたが難しい計算が目に入りちゃんと勉強はしているよう······。
自殺衝動のようなことは起きずに2日目に、
「マキってずっと僕のところにいるの?」
「それは、困った人の悩みが解決すればあたしを見ることはできなくなる」
「そっか」
奇妙なことも訊いてきて、つい油断をしてしまいそうになってしまう。それほど今の彼は安定しているように、頼もしく見えてしかたない。
その夜のことだった。彼がめずらしくタブレットやスマホなどで勉強しながら、
「マキ、あのさ」
「······なに」今日は正座をしながら見張っている。
「ありがとう」
「え!」
勉強しながら言ってきた一言、また自殺かそれとも本当の言葉か。
「受験落ちたときの僕ってさ、落ちたらどうしよう恥ずかしい、怒られる、バカにされるとか自分のことしか考えてなかった」
「そんなことは」誰だって落ちればショックを受けるのも無理もない。
「でも飛び降りたとき助けてくれて、そのあと一緒に話して、マキが涙を零したとき思ったんだ」
「なんて?」
「誰かの哀しい涙は、みたくないって」
「こうすけ」
「なんかまだハッキリとはわからないけど、苦しかった、僕がしっかりしなきゃって······直感して、だから僕ちゃんと勉強して受かってそういう哀しむ人を救える人になりたいんだ、間違った、なるよ」
「だ、だまされないわよっ!」
マキの口は震えていた。ウソかもしれないしホントかもしれない、どう信じれば良いのかわからなくなっていたのだ。
「また、また死のうとしてるに決まってる」
こうやって信用させてまた私を悲しませるんだと涙目になって彼を自殺した少年と重ねる。
すると洸介は椅子から降りて彼女抱きしめた。
「ホントにごめんね。すぐにとは言わない、時間はかかってもキミに信用してもらうまでがんばるから」
マキに気持ちを伝えた洸介は同時にあることに気がつき、
「だからマキ、約束してほしいんだ」
「ぐすっ、やくそく?」
その日2人は約束を交わす······。
その5日後の買い物の帰り、
「マキ、イチゴのサンドイッチでよかった?」
「うん」
友達のように家に帰ったとき、
「じゃあマキ······マキッ!」
さっきまでいた彼女は部屋を探すもどこにも姿がない、
「······そうかやっぱり、か」
わかっていたかのように食事を済まし勉強をする洸介。
「――みえなくなった、のね」
どこぞの屋根の上に体育座りをして空を眺めていたのはマキ、
「受験に落ちて死のうとして、立直って目標を決めて、また大変な勉強に身を投じる。すごいことよ······でもあたしを抱きしめるなんて、100年はやいわよ」
人とは小さなきっかけで傷つき、また小さなきっかけで立ち直る姿を見せてくれた洸介に感謝し、
「あたしも······ふぅ~っ、変わらないとね」
「おーい」
前にケンカした赤い妖精がやってきて妖精お婆ちゃんが呼んでいるという。とうぜん彼女には警戒されている。
「――そんなわけだから、つ、伝えたからね、じゃあ」
「まってっ」
振り向く赤い妖精、マキはここで私も逃げるわけにはいかないと覚悟を決め、
「この前はごめんなさい、謝るわ」
「え······」
「失敗したことに苛ついてあなたに当たってしまったの」
赤い妖精は頭を下げたマキに笑顔に「いいよ」と許した。
「ありがとう、スカーレット」
「一緒にいこうよ、ラナン」
2人は妖精界へと飛び立っていった······。
1年後。
「――やったっ、合格っ、やった、やったよ、マキッ!」
洸介は受験に見事合格をする。マキとの出会いから焦ることはなくなり2回目ともあって心身にある程度の余裕があった。
そして何よりも死んでいたかもしれない自分がこうして生きていることのありがたみを今はいっぱいに味わう。
「さてと」
帰り道に彼は公園により空を見上げて、
「あらためてマキ、合格したよ。キミが助けてくれたから、キミの涙を見たから、僕はこうしてここにいる。ありがとう、だから」
――約束してほしい、たぶんマキが見えなくなると思う、だから受験の結果が終わったら合図してくれないかな――。
そのとき、
桜が舞「うわっ」と驚いたその右手に届いたのは桜の花のメッセージカードが、
『みてたわ、応援してるからいい男になりなさい、マキ』
「マキ······ありがとう、ぐすっ」
もう1度見上げた青空、目に見えずともみえる気がした、クールでやさしいマキの笑顔が······。
妖精、それは悩んだり頑張ってる人達に手を差し伸べる、そんな生き物。
次に彼女が見えるのは、あなたかも知れない······。
落ち着いたように見えたけど、それは見えただけで心が病んでたらまた自殺してしまうかもしれないと不安が襲ったが、
「こうすけ······」
「ん、起きたみたいだね、おはよう」
机に向かってなにやら勉強をしているようだった。
「なにしてるの?」
「勉強だよ、勉強」
「そう」胸がバクバクしてホッと膝から崩れ落ちたマキ。
このあともしばらく洸介は集中して机で勉強をしていた······。
お昼の時間になって一緒に食べたが、洸介に変化はなく再び椅子に座り勉強を始めだす。
これは、と気にはなったものの目を離すわけにはいかないと座ったら、
「また見張り?」
「······そうよ」
「暇じゃない?」
「え、なによ」
「静かにするんだったらそこのゲームでもしてていいよ」
意外な言葉が飛んできて頭が真っ白になる。そりゃ暇じゃないといえば嘘にはなるが、明らかに彼の何かが変わったような気がしてしまう。
そのまま夜になり夜食も一緒に食べ机に向かうと昨日までの騒ぎとはまるで別の世界のよう。
ところが勉強を始めて午後9時を過ぎたころ、
「はぁ~」
ドタッ、と机に寝そべる洸介。
「洸介、今日はもう止めない?」
「う~ん、少し休憩する」
ベッドに仰向けになる。マキはこの年頃の子はすごいと同時に大変だと思う、自分の人生が左右され周りの期待も背負って、加えてプレッシャーとハードな勉強時間との戦いに見を投じるのだから。
「······マキ」
「な、なに?」考えごとをしてはっとする。
「人間って、どうしてこんなに不安定なんだろう。つい昨日まで、『もうダメだ死にたいっ』て思ったのに」
「いま、は?」
「いまはこうしてベッドに寝ていて、なんていうか昨日とは違う気持ちよさかな」
「そう、なんだ」
やっぱり心境の変化はあったみたいだけど油断はできないと彼を見る。
すると少しして彼は起き出し机に向かった。本当に勉強なんだろうか遺書だったらと心配でこっそり覗きもしたが難しい計算が目に入りちゃんと勉強はしているよう······。
自殺衝動のようなことは起きずに2日目に、
「マキってずっと僕のところにいるの?」
「それは、困った人の悩みが解決すればあたしを見ることはできなくなる」
「そっか」
奇妙なことも訊いてきて、つい油断をしてしまいそうになってしまう。それほど今の彼は安定しているように、頼もしく見えてしかたない。
その夜のことだった。彼がめずらしくタブレットやスマホなどで勉強しながら、
「マキ、あのさ」
「······なに」今日は正座をしながら見張っている。
「ありがとう」
「え!」
勉強しながら言ってきた一言、また自殺かそれとも本当の言葉か。
「受験落ちたときの僕ってさ、落ちたらどうしよう恥ずかしい、怒られる、バカにされるとか自分のことしか考えてなかった」
「そんなことは」誰だって落ちればショックを受けるのも無理もない。
「でも飛び降りたとき助けてくれて、そのあと一緒に話して、マキが涙を零したとき思ったんだ」
「なんて?」
「誰かの哀しい涙は、みたくないって」
「こうすけ」
「なんかまだハッキリとはわからないけど、苦しかった、僕がしっかりしなきゃって······直感して、だから僕ちゃんと勉強して受かってそういう哀しむ人を救える人になりたいんだ、間違った、なるよ」
「だ、だまされないわよっ!」
マキの口は震えていた。ウソかもしれないしホントかもしれない、どう信じれば良いのかわからなくなっていたのだ。
「また、また死のうとしてるに決まってる」
こうやって信用させてまた私を悲しませるんだと涙目になって彼を自殺した少年と重ねる。
すると洸介は椅子から降りて彼女抱きしめた。
「ホントにごめんね。すぐにとは言わない、時間はかかってもキミに信用してもらうまでがんばるから」
マキに気持ちを伝えた洸介は同時にあることに気がつき、
「だからマキ、約束してほしいんだ」
「ぐすっ、やくそく?」
その日2人は約束を交わす······。
その5日後の買い物の帰り、
「マキ、イチゴのサンドイッチでよかった?」
「うん」
友達のように家に帰ったとき、
「じゃあマキ······マキッ!」
さっきまでいた彼女は部屋を探すもどこにも姿がない、
「······そうかやっぱり、か」
わかっていたかのように食事を済まし勉強をする洸介。
「――みえなくなった、のね」
どこぞの屋根の上に体育座りをして空を眺めていたのはマキ、
「受験に落ちて死のうとして、立直って目標を決めて、また大変な勉強に身を投じる。すごいことよ······でもあたしを抱きしめるなんて、100年はやいわよ」
人とは小さなきっかけで傷つき、また小さなきっかけで立ち直る姿を見せてくれた洸介に感謝し、
「あたしも······ふぅ~っ、変わらないとね」
「おーい」
前にケンカした赤い妖精がやってきて妖精お婆ちゃんが呼んでいるという。とうぜん彼女には警戒されている。
「――そんなわけだから、つ、伝えたからね、じゃあ」
「まってっ」
振り向く赤い妖精、マキはここで私も逃げるわけにはいかないと覚悟を決め、
「この前はごめんなさい、謝るわ」
「え······」
「失敗したことに苛ついてあなたに当たってしまったの」
赤い妖精は頭を下げたマキに笑顔に「いいよ」と許した。
「ありがとう、スカーレット」
「一緒にいこうよ、ラナン」
2人は妖精界へと飛び立っていった······。
1年後。
「――やったっ、合格っ、やった、やったよ、マキッ!」
洸介は受験に見事合格をする。マキとの出会いから焦ることはなくなり2回目ともあって心身にある程度の余裕があった。
そして何よりも死んでいたかもしれない自分がこうして生きていることのありがたみを今はいっぱいに味わう。
「さてと」
帰り道に彼は公園により空を見上げて、
「あらためてマキ、合格したよ。キミが助けてくれたから、キミの涙を見たから、僕はこうしてここにいる。ありがとう、だから」
――約束してほしい、たぶんマキが見えなくなると思う、だから受験の結果が終わったら合図してくれないかな――。
そのとき、
桜が舞「うわっ」と驚いたその右手に届いたのは桜の花のメッセージカードが、
『みてたわ、応援してるからいい男になりなさい、マキ』
「マキ······ありがとう、ぐすっ」
もう1度見上げた青空、目に見えずともみえる気がした、クールでやさしいマキの笑顔が······。
妖精、それは悩んだり頑張ってる人達に手を差し伸べる、そんな生き物。
次に彼女が見えるのは、あなたかも知れない······。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ナマズの器
螢宮よう
キャラ文芸
時は、多種多様な文化が溶け合いはじめた時代の赤い髪の少女の物語。
不遇な赤い髪の女の子が過去、神様、因縁に巻き込まれながらも前向きに頑張り大好きな人たちを守ろうと奔走する和風ファンタジー。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める
緋村燐
キャラ文芸
家の取り決めにより、五つのころから帝都を守護する鬼の花嫁となっていた櫻井琴子。
十六の年、しきたり通り一度も会ったことのない鬼との離縁の儀に臨む。
鬼の妖力を受けた櫻井の娘は強い異能持ちを産むと重宝されていたため、琴子も異能持ちの華族の家に嫁ぐ予定だったのだが……。
「幾星霜の年月……ずっと待っていた」
離縁するために初めて会った鬼・朱縁は琴子を望み、離縁しないと告げた。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
MIDNIGHT
邦幸恵紀
キャラ文芸
【現代ファンタジー/外面のいい会社員×ツンデレ一見美少年/友人以上恋人未満】
「真夜中にはあまり出歩かないほうがいい」。
三月のある深夜、会社員・鬼頭和臣は、黒ずくめの美少年・霧河雅美にそう忠告される。
未成年に説教される筋合いはないと鬼頭は反発するが、その出会いが、その後の彼の人生を大きく変えてしまうのだった。
◆「第6回キャラ文芸大賞」で奨励賞をいただきました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる