~赤き龍が町娘に恋をした~

ヒムネ

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ブルー·バード

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 翌日ロマーヌは、昨日レッド·ドラゴンが葬った名も知らない泥棒の砂浜に来て木材で作った十字の墓を建てていた。


「ふぅーっ、これでよし」


 人が灰になるのは、いくら泥棒でも気分が悪い。


 せめてもと彼女の思いやりである。


 あのあと町の人達にも心配されブレットおばあちゃんには灰になってしまった財布を謝ると『私が悪い』と許してくれて『ロマーヌちゃんが無事でよかったよ』と言ってくれた優しいブレットおばあちゃんだった。


「戻らないと、あ、ブルー·バード」


「ピィ」


 フローティアの方から飛んできたのは彼女が飼っている磯鵯イソヒヨドリのブルー·バード。



 出会いは森で迷子になった時、彼が現れ付いて行くと無事に抜け出せたことが切っ掛けで飼う事に、更にこの日の天気が雲一つない青空でその鳥も青いことからブルー·バードと名付けたのだ。


「行こ、ブルー·バード」


「ピィ」


 ロマーヌはレストランへ帰っていく······。



「どれかな~」


「ピィ」



 それから一週間、泥棒騒ぎの後は平和なフローティアに戻っていた。


 そんな中、ロマーヌは買いだめしているレストラン用の調味料が無くなってきたため、お母さんに頼まれ町を出て北へ進みブルー·バードと共にニューズの町で商品を選んでいたのだ。


 ニューズの町は商店街になっていて人も多く他の町からの調味料などが売られているため、彼女のレストランはここで買っている物がほとんど、


「コレとコレとコレと·····」


「沢山買うね~、ロマーヌちゃん」


 顔馴染みの人もちらほら、

「じゃあコレお願いします」


「毎度あり~、今日は雨降りそうだから早めに帰りなよ」


「え? ホントだ」


 空を見ると日は出ているものの雲が集まっている。


「おじさんありがとう、行こ、ブルー·バード」


「ピィ」


 なので買ってすぐ町を出た。



 ニューズからフローティアまで歩いて一時間くらいの距離。


 早めに出たロマーヌとブルー·バードだったが、



「あ、小雨だ」



 肌に雨が粒々と当たり走る彼女だが、調味料の重さですぐ息を切らしてしまう。



「ハァ、ハァ、買いすぎだったかな~」



 何とか半分の距離の森まで付くがすでに雨は降っていたので木の下で雨宿りをすることに。



「止むかな~」



 少し濡れた服を触りながら雲が流れるのを待っていたら、



「あっ、ブルー·バード?」



 彼女の左上の木の枝に乗って一緒に止むのを待っていた彼は森の奥まで行ってしまったのだ。



 見失わないように追い掛けるロマーヌ。



 また森の中で迷ってしまうかもしれないが、それでもブルー·バードを追っていく。



「どこまで行くの? ブルー·バード」



 奥へ奥へと進んで行く彼、ちゃんと帰れるか不安になっているのにお構いなしに飛び進む。



 すると岩が見えてきてそこには洞窟が、



「こんなとこに洞窟······あっ、ちょっと!」



 洞窟の中へと入って行ってしまったブルー·バードに、


「もうっ!」


 怒りながらも仕方なく、そっと洞窟の中へと入る。中は男性一人分位の大きさでロマーヌには少しの余裕があり水滴が落ちる音がしてびくつきながら周りの岩を避け進むと入り口からの光とはまた別の光が、



「光······別の外に繋がってるのかなぁ」



「ピィッ」



「ん、ブルー·バード!」



 奥の方で声が響いたので袋を落とさないように光の方へと走った。



 着いた先は広く大きい岩場で天井からは日の光が届いて、どうやら雨は止んだようだ。



「ピィ」



「ブルー·バード、もう勝手はダメよ」



「ピィ~」



 ブルー·バードは戻ってきて疲れたのかロマーヌの左肩に足を着ける。



 その時、



 以前聞いたことのある翼の羽ばたく音がして上を見上げると、



「ドラゴン、様」



 そう、



 ここは龍のねぐら······。
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