6 / 50
桃太郎と猿【前編】
しおりを挟む
「ーーはっ」
木葉が鼻に落ち、僅かな感触。
「目を覚ましたわね」
和装がスレや土で汚れている中、キジの凉と交代で仮眠していた桃太郎こと桃子。
「猿は?」
「相変わらず木の上にぶら下がってるわよ」
刀を持ち、
「今度こそ捕まえて見せます······」
昨晩、一人と一羽が猿の居るという森に着いた時の事。
「猿殿~っ」
「飛んで探すわ」
しかし日も暮れているため真っ暗で進みずらいため、
「今日はもう夜だし止めたら?」
「それも、そうですね」
互いに納得して火を起こす準備をしようとする。
そのとき微かな草が踏まれる音、
「何奴」気を引き締め、
「誰、出てきなさい!」
凉が声を大にして言うと出てきたのは、
「人間とキジ、桃太郎だな」
右目に傷のある猿だ。
「オイラを誘いに来たのか?」
「左様、だがその前に周りの警戒を解いてください」
「······みんな!」
すると隠れていた猿が、九匹、十匹と出てきて、
「さあ、解いたぜ」
「では仲間に」
袋から本吉備団子を出すその瞬間、
彼は木の枝に乗り、
「そいつは受け取れない」
「なぜっ?」
驚く彼女に、
「犬も言ったーーって連れてないな、柴犬はどうした?」
「訳あってキジの涼殿から仲間にしました」
「そう、か」
思いもよらない事に猿は考えた。
「分かった、知らないなら教えてやるよ。オイラは木の枝から降りない、そのオイラを捕まえることが出来たら団子は受け取る、いいな?」
「分かりました」
「木登り得意なの桃子?」
「いえ、兄は良く登ってましたが、私は余り」
「手を貸すわよ」
凉と力を合わせれば可能性は上がる。けども、
「まずは一人でやらせてください」
「そう、分かったわ」
「刀はここに置いときますので、見張っててください」
そして猿を捕まえる木登りが始まったのだ。
あれから闇夜でも、慣れず必死に枝から枝へ乗り移り、時には失敗しボロボロになりながら休憩を挟み、
「猿よ、私も休息いたす、そちも休まれよ」
「ボロボロね」
「いたた、おばあ様には悪いことをしてしまった」
身体中アザだらけだが、和装を気にする桃太郎に、
「ホラよ」
彼はリンゴやバナナ等の果物をくれた。
「ありがたい。しかし何故?」
「飯無さそうだからな。お前良く見りゃ女だな、桃太郎なのに」
「確かに女ですが、桃太郎です。もぐっ」
正座してバナナを口にする。
「まだ続けんのか?」
その問いに桃子は笑顔で、
「もちろん、お主を認めさせて見せます!」
「へっ、根性あるじゃねえかーー」
木葉が鼻に落ち、僅かな感触。
「目を覚ましたわね」
和装がスレや土で汚れている中、キジの凉と交代で仮眠していた桃太郎こと桃子。
「猿は?」
「相変わらず木の上にぶら下がってるわよ」
刀を持ち、
「今度こそ捕まえて見せます······」
昨晩、一人と一羽が猿の居るという森に着いた時の事。
「猿殿~っ」
「飛んで探すわ」
しかし日も暮れているため真っ暗で進みずらいため、
「今日はもう夜だし止めたら?」
「それも、そうですね」
互いに納得して火を起こす準備をしようとする。
そのとき微かな草が踏まれる音、
「何奴」気を引き締め、
「誰、出てきなさい!」
凉が声を大にして言うと出てきたのは、
「人間とキジ、桃太郎だな」
右目に傷のある猿だ。
「オイラを誘いに来たのか?」
「左様、だがその前に周りの警戒を解いてください」
「······みんな!」
すると隠れていた猿が、九匹、十匹と出てきて、
「さあ、解いたぜ」
「では仲間に」
袋から本吉備団子を出すその瞬間、
彼は木の枝に乗り、
「そいつは受け取れない」
「なぜっ?」
驚く彼女に、
「犬も言ったーーって連れてないな、柴犬はどうした?」
「訳あってキジの涼殿から仲間にしました」
「そう、か」
思いもよらない事に猿は考えた。
「分かった、知らないなら教えてやるよ。オイラは木の枝から降りない、そのオイラを捕まえることが出来たら団子は受け取る、いいな?」
「分かりました」
「木登り得意なの桃子?」
「いえ、兄は良く登ってましたが、私は余り」
「手を貸すわよ」
凉と力を合わせれば可能性は上がる。けども、
「まずは一人でやらせてください」
「そう、分かったわ」
「刀はここに置いときますので、見張っててください」
そして猿を捕まえる木登りが始まったのだ。
あれから闇夜でも、慣れず必死に枝から枝へ乗り移り、時には失敗しボロボロになりながら休憩を挟み、
「猿よ、私も休息いたす、そちも休まれよ」
「ボロボロね」
「いたた、おばあ様には悪いことをしてしまった」
身体中アザだらけだが、和装を気にする桃太郎に、
「ホラよ」
彼はリンゴやバナナ等の果物をくれた。
「ありがたい。しかし何故?」
「飯無さそうだからな。お前良く見りゃ女だな、桃太郎なのに」
「確かに女ですが、桃太郎です。もぐっ」
正座してバナナを口にする。
「まだ続けんのか?」
その問いに桃子は笑顔で、
「もちろん、お主を認めさせて見せます!」
「へっ、根性あるじゃねえかーー」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
拝啓 私のことが大嫌いな旦那様。あなたがほんとうに愛する私の双子の姉との仲を取り持ちますので、もう私とは離縁してください
ぽんた
恋愛
ミカは、夫を心から愛している。しかし、夫はミカを嫌っている。そして、彼のほんとうに愛する人はミカの双子の姉。彼女は、夫のしあわせを願っている。それゆえ、彼女は誓う。夫に離縁してもらい、夫がほんとうに愛している双子の姉と結婚してしあわせになってもらいたい、と。そして、ついにその機会がやってきた。
※ハッピーエンド確約。タイトル通りです。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる