七代目 双子の桃太郎

ヒムネ

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    桃太郎と犬【後編】

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 ーー夕暮れの頃、彼はまだ飛竜を捕まえられずにいた。
 相手は、犬の反射神経と俊敏さ、更にこの場所を知り尽くしているため不利であることは否めない。

「カーカー」
「カラスか」すると雲が橙色に、
「夕日、沈む前に決着をつけねば」
 そこでまぶたを閉じ心を落ち着かせ瞑想、あえて太陽を浴び耳を澄ます。
 それをコッソリ観ていた飛竜、
「何か考えてるのか」
 奇襲をされぬように見張っていた。
「······よし」
 桃太は思い付いたのか周りを確認しながら刀を地面に刺す。その北側に何やら薄い穴を掘る姿を凝視、
「落とし穴?」と感づいていたら、こちらに向かって突然駆け走ってくる。
 桃太は瞑想していたとき小さな足音を見逃していなかったのだ。

「遅い遅い!」
 犬にとっては人の速さなど歩きも同然、それでも追い掛け竹林を回り、
「待てー!」
 一周駆け回ると刀の刺した所まで誘導させていることに気づく飛竜。
 桃太を見ながら、
「やはり落とし穴か、飛び越える!」
 そう言い前を向いた時、

 目の前の刀に、風に揺られた竹々により西日が反射し、
「うわっ!」おもわず目を瞑る。

「好きありーっ!」

 すかさず鞘を横薙ぎした瞬間、飛竜の左足に当たりバランスを崩したところを捕らえたのだ。

「お見事!」
 長老と仲間が竹やぶから出てきて、
「お前の敗けじゃな、飛竜よ」
「ああ勿論、ただ何故こんな意味のない穴を?」
「それは、気をそらさせるためだ。五感を研ぎ澄ませてお主がこちらを観ていることに気づいて、刀の西日という事からそらすようにな」
「流石、天下の桃太郎だな」
「お主の俊敏さも流石だったよ、では約束通り仲間になってくれ」
 そう言って吉備団子きびだんごを袋から出す。

「うむ、ありがたく頂戴する」

 日が沈み暗くなると、肌に感じる冷たい風。
 一日中走り回った一人と一匹、さぞ疲れているだろうと思い、
「桃太殿、今日はもう休んではいかがだろうか? 夜になられてはお探しの仲間も見つかるまい」
 確かに夜間訪ねるのは失礼、
「それもそうですな」
「ではワシ達の寝床に案内しましょう。そちらの方が安全ですじゃ」
「かたじけない」
「こっちだ桃太っーー」

 こうして柴犬の飛竜を仲間にした桃太郎こと桃太は、長老の計らいで眠らせてもらうことになった······。


 ーー鬼ヶ島、そこには沢山の鬼がいた。そこで桃太郎が動き出したと言う事が伝わる。

「カーカー」

「ほう、遂に動き出したか桃太郎」
 金棒を持ち、ゾウ並の大きな岩を、

「ふんっ!」砕く。

「面白そうだ、なぁーー」
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