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第4章 陰謀、逆襲、リバイバル
監禁されていたのですわ!
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グレイはまず厨房へと向かおうとした。おかしな事に、使用人の気配はない。普通、これほど大きな屋敷であれば朝方から活発に動く使用人が複数いるものだ。例えアルベルトが大勢解雇したとしても身の回りの世話をする者がいたっていいはずだ。
しかしこの屋敷は不気味なほどに静まりかえる。装飾品も埃を被り、まるでお化け屋敷だ。
「~~~」
その時、微かにだが、確かに何者かのうめき声が聞こえた。まるで閉じ込められた猛獣が地の底から血を求めて唸っているような恨みがましい吠え声だ。
内心得体の知れない何者かへの恐怖はあったが、もしそれが悪魔だとしても、チェチーリアに害を成すのであれば、臆することなく退治するつもりだ。
声は廊下の隅の物置同然に物が積まれた扉の奥から聞こえてくるようだ。廊下に置かれた机や椅子は扉の中の何者かを閉じ込めておくだけに置かれているらしい。頻繁に開け閉めされているのかそこだけ埃を被っていない。
「~~~!」
先ほどよりもうめき声は大きい。グレイは意を決してガラクタをどかし、扉を開いた。そしてその人物を見るなり驚愕する。よく知った者であったからだ。
「ヒュー!?」
両手両足を縛られ、口にさえ布を巻かれているのは紛れもない、友人ヒュー・グランビューだ。
「んん~!」
グレイは混乱しつつも、早く縄を解けと必死の眼力で訴えかける友人を解放してやる。
「お前……何してるんだ? 趣味か」
「人をヘンタイ呼ばわりするな!」
ヒューは口枷が外れるなりグレイに怒鳴る。ご自慢の髪型はボサボサと崩れ、女を見れば流し目をせずにはいられないその目は今や血走っていた。
「グレイ、なんでここにいる!?」
アルベルトの屋敷に、友人が監禁されていたなど異常事態でしかない。なぜと聞きたいのはグレイの方だった。
「そ、それはこっちの台詞だ! なぜヒューがアルベルトさんの屋敷にいる!?」
「見りゃ分かるだろう! 捕まってたんだ。食事とトイレ以外はこれさ! ああ。見ちまったんだよ、ミーアとアルフォルト家のクソ公爵が密会しているのを。それで、アルベルトに殴られて……。くそ、あの野郎!」
ヒューの怒りは凄まじかった。顔を真っ赤にし、口汚くアルベルトを罵る。グレイには訳が分からない。
「なんでアルベルトさんがお前を殴るんだ?」
「知るかよ! シドニアがミーアに手を貸していたのは間違いない。それを見たオレを監禁してたって事は」
「おかしい。アルベルトさんはシドニアがA国に背信していたという証拠を集めていた。ヒューがそれを見たなら、この上ない証人のはずだ。なのに監禁したって? でも、命までは奪われなかった。アルベルトさんもシドニアに脅されていたのか?」
「いずれオレに証言をさせるにしても、あの瞬間、まだ企みがばれちゃいけなかった。そういうことかもしれない」
「一体、どうして……」
二人が顔を見合わせた時、チェチーリア達がいる部屋の方角から、激しい銃声が聞こえてきた。
しかしこの屋敷は不気味なほどに静まりかえる。装飾品も埃を被り、まるでお化け屋敷だ。
「~~~」
その時、微かにだが、確かに何者かのうめき声が聞こえた。まるで閉じ込められた猛獣が地の底から血を求めて唸っているような恨みがましい吠え声だ。
内心得体の知れない何者かへの恐怖はあったが、もしそれが悪魔だとしても、チェチーリアに害を成すのであれば、臆することなく退治するつもりだ。
声は廊下の隅の物置同然に物が積まれた扉の奥から聞こえてくるようだ。廊下に置かれた机や椅子は扉の中の何者かを閉じ込めておくだけに置かれているらしい。頻繁に開け閉めされているのかそこだけ埃を被っていない。
「~~~!」
先ほどよりもうめき声は大きい。グレイは意を決してガラクタをどかし、扉を開いた。そしてその人物を見るなり驚愕する。よく知った者であったからだ。
「ヒュー!?」
両手両足を縛られ、口にさえ布を巻かれているのは紛れもない、友人ヒュー・グランビューだ。
「んん~!」
グレイは混乱しつつも、早く縄を解けと必死の眼力で訴えかける友人を解放してやる。
「お前……何してるんだ? 趣味か」
「人をヘンタイ呼ばわりするな!」
ヒューは口枷が外れるなりグレイに怒鳴る。ご自慢の髪型はボサボサと崩れ、女を見れば流し目をせずにはいられないその目は今や血走っていた。
「グレイ、なんでここにいる!?」
アルベルトの屋敷に、友人が監禁されていたなど異常事態でしかない。なぜと聞きたいのはグレイの方だった。
「そ、それはこっちの台詞だ! なぜヒューがアルベルトさんの屋敷にいる!?」
「見りゃ分かるだろう! 捕まってたんだ。食事とトイレ以外はこれさ! ああ。見ちまったんだよ、ミーアとアルフォルト家のクソ公爵が密会しているのを。それで、アルベルトに殴られて……。くそ、あの野郎!」
ヒューの怒りは凄まじかった。顔を真っ赤にし、口汚くアルベルトを罵る。グレイには訳が分からない。
「なんでアルベルトさんがお前を殴るんだ?」
「知るかよ! シドニアがミーアに手を貸していたのは間違いない。それを見たオレを監禁してたって事は」
「おかしい。アルベルトさんはシドニアがA国に背信していたという証拠を集めていた。ヒューがそれを見たなら、この上ない証人のはずだ。なのに監禁したって? でも、命までは奪われなかった。アルベルトさんもシドニアに脅されていたのか?」
「いずれオレに証言をさせるにしても、あの瞬間、まだ企みがばれちゃいけなかった。そういうことかもしれない」
「一体、どうして……」
二人が顔を見合わせた時、チェチーリア達がいる部屋の方角から、激しい銃声が聞こえてきた。
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