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第四章 砂糖でできた甘い楽園
幻想から、弟は帰還する
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生まれた農場があった頃、出席した村の結婚式はその人の家で行われるものだった。そしてたいてい、大人たちが騒ぎ飲んだくれて終わる。
王都流の式が、これほど格式ばったものだとはいざ自分の番が来るまで知らなかった。
教会には親族が集まり、司祭の前で夫婦の誓いをする。今日からついにシャノンと夫婦になるというのに、ルーカスには未だその実感はなかった。
病院で目覚めてからも、しばらく頭はぼんやりとしていた。人が数人会いに来た気がするが、あまり覚えてはいない。上官だったレット・フォードも見舞いに訪れたと聞いたが、おそらく回復していない時であったらしい。
ようやく頭がはっきりした時見えたのは、心配そうにこちらを伺う、シャノンの顔だ。そして彼女に告げられた。
――あたしたち、恋人だったのよ。
言われても、やはりまるで思い出せなかった。
だが微かに残る感情の中に、心の底から誰かを求めていたという疼きを感じた。
自分の中に、誰かが確かに存在している、よく知る人だ。助けたいと願う、ただ一人の人だ。
かつて、激情があった。
悲しみがあった。
苦しみがあった。
喜びがあった。
愛があった。
その人を前にして、言葉にならない思いを、いくつ飲み込んだのだろう。
それがシャノンであったらしい。
だが大層すまないと思うことには、記憶を忘れたルーカスは彼女を前にしても、湧き上がるのは忘れ去っているという罪悪感だけで、愛情ではなかった。それでも恋人であったのなら、結婚するべきなんだろう。あれよあれよという間に、式の段取りは終わり、そして今日になった。
司祭の前で、シャノンを待つ。
教会の中を見渡した。
シャノンの関係者がほとんどだ。当たり前だった。ルーカスに親族はいない。唯一の身内と呼べるのは、血のつながらない姉のロクサーナだけだ。
彼女はどういうわけか、家を出て、父親と一緒にレット・フォードと暮らしているという。恋人なのだろうか。なぜだかそれが気がかりだった。
教会の中に、その彼女の姿はなかった。
(来るわけないか。来るなと言ったようなもんだし)
幼い頃の記憶は大方戻っていたが、ロクサーナの記憶はない。
一緒に野原を駆けまわったと言うが、さっぱり分からなかった。彼女と一緒に過ごしたという昔の話を聞いてみたいという思いがなくはなかったが、喧嘩のように別れて以来会っていなかった。
――わたしの知ってるルーカスは、そんなこと言わないわ。
それを言われた瞬間、激しい怒りを感じた。
オレの何を知っていたっていうんだ?
言いたいことを、どれだけ我慢してきたと思ってるんだ。あんたの知ってるいい子のルーカスなんて、初めからどこにもいないんだ。いたのは自分を押し殺してでもあんたの側にいたかった、馬鹿な男だけだった。
(……これは、誰の思いなんだ)
突如として噴出した感情に、狼狽えた。
教会の扉が開く。
拍手とともに、シャノンが入ってくる。少し恥ずかしそうに、美しい笑顔で。
だが、ルーカスの目はいないと分かっていてもロクサーナを探していた。
だってまだ、彼女に伝えきれていない。
(そうだよ。オレがどんなに好きだと思ってたか、結局知らないままじゃないか)
あの日も、こんな教会だった。大雨が降っていた。彼女は寒そうにしていて、だから上着をかけた。
そうだ、二度と戻らないつもりだった。戦場に行って、自分が死んでも死ななくても、もう永遠に彼女の前に姿を現さないつもりだった。
だから好きだと言ったんだ。だけどどれほど伝えられたんだろうか。
(どうしてオレは戻ったんだ。また、彼女の前に)
司祭の声が聞こえてくる。
「……ルーカスさん?」
シャノンの瞳が、心配そうに見つめてくる。
「誓いますって、言えばいいのよ――」
会場がざわついている。新郎はどうしたのだろうかと。
だがルーカスはそれどころではなかった。
眩暈がしそうなほど、鮮やかに蘇る。
唯一、求めたその人の名が。
「ロクサーナ……」
ロクサーナ。
ロクサーナ。
ロクサーナだ。
そうだ、ロクサーナじゃないか。
なんで分からなかったんだろうか。
彼女以外にいるはずがない。
消し去ってしまいたいほど強烈に焼き付いていた。
激情は、悲しみは、苦しみは、喜びは、愛は。何もかも、全てロクサーナのためにあったのに。
シャノンの顔が、青ざめるのが分かった。
「どうして、ルーカスさん……。なんで今なの」
そして理解した。
記憶を消したのは、砲弾じゃない。ルーカス自身だ。
彼女を好きな気持ちごと、消し去ってしまいたかった。そして約束したように、ただの弟に戻ろうとした。戻れるはずはない。だって初めから、弟だと思ったことなど一度もなかったのだから。
あるいは、その決意すらなかったものにして、未練がましく側にいようとしたのか――。
「君は、嘘をついていたのか」
恋人ではなかった。
目の前のシャノンに言う。彼女の目が見開かれた。
司祭は様子のおかしい新郎新婦に困り果てて黙っている。
「ごめん。シャノン、無理だ。全部、思い出したんだ」
「いや、いやよ……。やっとここまで、きたのに」
彼女から伸ばされた手から逃れるように、一歩下がる。
「オレの心の中にいたのは、たった一人の家族で、愛している女の子だ。それはシャノン、君じゃない。君じゃなかった」
違和感は氷解する。夢もいつかは覚めるのだ。
シャノンはその場に力なく座り込んだ。ドレスの裾がふわりと広がる。ルーカスは立ったまま呆然とそれを見つめることしかできない。
どういうことだ、とシャノンの両親の怒号が聞こえる。
ルーカスは白い上着を脱ぎ捨てた。
「結婚はできない。なんとでも言ってくれ、いっそ殺してくれたってかまわない! だけど、結婚だけはできない!」
きっと近年稀にみる最低の新郎だろう。親族からの怒りの声が聞こえてくる。シャノンの両親が殴りかかってくる。
それでも心は変わらない。
しかしどうしたものかと思うのは、ロクサーナは今、レットと暮らしているはずだ。今更会って、どうしろと言うのだろうか――。
――――――――――
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
第四章はここで終わりです。
第五章が実質的な最終章になります。引き続きお付き合いくださいませ♪
王都流の式が、これほど格式ばったものだとはいざ自分の番が来るまで知らなかった。
教会には親族が集まり、司祭の前で夫婦の誓いをする。今日からついにシャノンと夫婦になるというのに、ルーカスには未だその実感はなかった。
病院で目覚めてからも、しばらく頭はぼんやりとしていた。人が数人会いに来た気がするが、あまり覚えてはいない。上官だったレット・フォードも見舞いに訪れたと聞いたが、おそらく回復していない時であったらしい。
ようやく頭がはっきりした時見えたのは、心配そうにこちらを伺う、シャノンの顔だ。そして彼女に告げられた。
――あたしたち、恋人だったのよ。
言われても、やはりまるで思い出せなかった。
だが微かに残る感情の中に、心の底から誰かを求めていたという疼きを感じた。
自分の中に、誰かが確かに存在している、よく知る人だ。助けたいと願う、ただ一人の人だ。
かつて、激情があった。
悲しみがあった。
苦しみがあった。
喜びがあった。
愛があった。
その人を前にして、言葉にならない思いを、いくつ飲み込んだのだろう。
それがシャノンであったらしい。
だが大層すまないと思うことには、記憶を忘れたルーカスは彼女を前にしても、湧き上がるのは忘れ去っているという罪悪感だけで、愛情ではなかった。それでも恋人であったのなら、結婚するべきなんだろう。あれよあれよという間に、式の段取りは終わり、そして今日になった。
司祭の前で、シャノンを待つ。
教会の中を見渡した。
シャノンの関係者がほとんどだ。当たり前だった。ルーカスに親族はいない。唯一の身内と呼べるのは、血のつながらない姉のロクサーナだけだ。
彼女はどういうわけか、家を出て、父親と一緒にレット・フォードと暮らしているという。恋人なのだろうか。なぜだかそれが気がかりだった。
教会の中に、その彼女の姿はなかった。
(来るわけないか。来るなと言ったようなもんだし)
幼い頃の記憶は大方戻っていたが、ロクサーナの記憶はない。
一緒に野原を駆けまわったと言うが、さっぱり分からなかった。彼女と一緒に過ごしたという昔の話を聞いてみたいという思いがなくはなかったが、喧嘩のように別れて以来会っていなかった。
――わたしの知ってるルーカスは、そんなこと言わないわ。
それを言われた瞬間、激しい怒りを感じた。
オレの何を知っていたっていうんだ?
言いたいことを、どれだけ我慢してきたと思ってるんだ。あんたの知ってるいい子のルーカスなんて、初めからどこにもいないんだ。いたのは自分を押し殺してでもあんたの側にいたかった、馬鹿な男だけだった。
(……これは、誰の思いなんだ)
突如として噴出した感情に、狼狽えた。
教会の扉が開く。
拍手とともに、シャノンが入ってくる。少し恥ずかしそうに、美しい笑顔で。
だが、ルーカスの目はいないと分かっていてもロクサーナを探していた。
だってまだ、彼女に伝えきれていない。
(そうだよ。オレがどんなに好きだと思ってたか、結局知らないままじゃないか)
あの日も、こんな教会だった。大雨が降っていた。彼女は寒そうにしていて、だから上着をかけた。
そうだ、二度と戻らないつもりだった。戦場に行って、自分が死んでも死ななくても、もう永遠に彼女の前に姿を現さないつもりだった。
だから好きだと言ったんだ。だけどどれほど伝えられたんだろうか。
(どうしてオレは戻ったんだ。また、彼女の前に)
司祭の声が聞こえてくる。
「……ルーカスさん?」
シャノンの瞳が、心配そうに見つめてくる。
「誓いますって、言えばいいのよ――」
会場がざわついている。新郎はどうしたのだろうかと。
だがルーカスはそれどころではなかった。
眩暈がしそうなほど、鮮やかに蘇る。
唯一、求めたその人の名が。
「ロクサーナ……」
ロクサーナ。
ロクサーナ。
ロクサーナだ。
そうだ、ロクサーナじゃないか。
なんで分からなかったんだろうか。
彼女以外にいるはずがない。
消し去ってしまいたいほど強烈に焼き付いていた。
激情は、悲しみは、苦しみは、喜びは、愛は。何もかも、全てロクサーナのためにあったのに。
シャノンの顔が、青ざめるのが分かった。
「どうして、ルーカスさん……。なんで今なの」
そして理解した。
記憶を消したのは、砲弾じゃない。ルーカス自身だ。
彼女を好きな気持ちごと、消し去ってしまいたかった。そして約束したように、ただの弟に戻ろうとした。戻れるはずはない。だって初めから、弟だと思ったことなど一度もなかったのだから。
あるいは、その決意すらなかったものにして、未練がましく側にいようとしたのか――。
「君は、嘘をついていたのか」
恋人ではなかった。
目の前のシャノンに言う。彼女の目が見開かれた。
司祭は様子のおかしい新郎新婦に困り果てて黙っている。
「ごめん。シャノン、無理だ。全部、思い出したんだ」
「いや、いやよ……。やっとここまで、きたのに」
彼女から伸ばされた手から逃れるように、一歩下がる。
「オレの心の中にいたのは、たった一人の家族で、愛している女の子だ。それはシャノン、君じゃない。君じゃなかった」
違和感は氷解する。夢もいつかは覚めるのだ。
シャノンはその場に力なく座り込んだ。ドレスの裾がふわりと広がる。ルーカスは立ったまま呆然とそれを見つめることしかできない。
どういうことだ、とシャノンの両親の怒号が聞こえる。
ルーカスは白い上着を脱ぎ捨てた。
「結婚はできない。なんとでも言ってくれ、いっそ殺してくれたってかまわない! だけど、結婚だけはできない!」
きっと近年稀にみる最低の新郎だろう。親族からの怒りの声が聞こえてくる。シャノンの両親が殴りかかってくる。
それでも心は変わらない。
しかしどうしたものかと思うのは、ロクサーナは今、レットと暮らしているはずだ。今更会って、どうしろと言うのだろうか――。
――――――――――
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
第四章はここで終わりです。
第五章が実質的な最終章になります。引き続きお付き合いくださいませ♪
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