俺の異世界生活は最初からどこか間違っている。

六海 真白

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俺の休日はどこか間違っている。 完

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 俺は期待外れに終わった路地裏探索を止めて、アリアと宿屋に帰ろうと足を進めていた。
 すると、この街では珍しい黒髪の美少女集団が見えた。

 ―― 黒髪って事は全員ジャポンティ出身の連中か。

 「よう、トウカ。何やってんだ?」

 俺はその集団に見知った顔があったので声をかける。

 「カケル…… なぜこんな所に」

 トウカなんか気まずそうなんですけど。声かけちゃダメだった? せっかく勇気出したのに。

 「いや、実は――」
 「君がカケルくん!?」

 トウカの言葉を遮るように彼女の後ろから黒髪ショートカットの女の子がひょこっと顔を出す。日焼けした肌は小麦色で、活発という文字を体現したような美少女だ。

 「そ、そうだけど」
 「丁度良かった! カケルくんにお願いがあるんだよ!」
 「お願い?」
 「そうお願い! 聞いてくれる?」

 その子は顔をぐっと近付けてきて言った。俺は反射的に体を反らす。

 ―― なんだこの子。めっちゃ可愛いじゃねえか。ついに来たか俺の春。

 「分かった、とりあえず話だ――」
 「さすがカケルくん! 頼りにしてるよ! 私はマツリ、これからよろしくね!」

 俺の背中をバンバンと叩きながらケラケラ笑うマツリ。
 お願いを聞くなんて言っていないのだがマツリの中ではすでに了承済みらしい。
 まあ、女の子に頼られるってのは悪い気、というより良い気しかしない。

 「そんな簡単に触れられると勘違いするもんなんだぞ。男って」
 「え? ジャポンティ出身なら女の子には慣れてるでしょー? 今更何言ってんのー!」

 マツリは笑いながら俺の肩に手を回してくる。俺はソレに対して愛想笑い。

 ―― なんて、なんてパーソナルスペースが狭い子なんだ! トウカ程ではないがステラぐらいはありそうな胸が当たっている! ちくしょう! 俺もジャポンティで生まれたかった! なんだよ慣れてるって! ジャポンティ女の例に漏れずさらしを巻いているから詳細は不明だが、腕に伝わる感触は分かる!

 「じゃあ明日から特訓頑張ろうね!」
 「おう! …… ん、特訓?」
 「そう! ソーラン節の特訓! ジャポンティ伝統の踊り! みんなに見せるからには完璧にしないとね! それに懐かしいでしょ?」

 いや名前は懐かしいけど。中学の運動会ん時に散々練習したアレだろ? 懐かしいけどさ。

 「まさか祭りでやるっていうのは」
 「そ! ジャポンティ出身の私たちで披露するんだよ! ドッコイショォ!」
 「……」

 ドッコイショォ! じゃねえよ。何言ってんだこの子。

 「やっぱやめる」

 冗談じゃねえ。そもそも俺の知ってるソーラン節と違うかもしれねえ。なにより人前でドッコイショしたくない。ソーランソーランしたくない。

 「えぇ!? なんでなんで!? やろうよー!」

 くっ。こいつ、胸を押し付けて上目遣いとは女の子の武器を分かってやがる。

 「お願いお願い! もうカケルくんしか頼れる人いないんだよ!」
 「え、俺だけ?」
 「この街にいるジャポンティ出身の男の子はもうカケルくんしかいないの! 昨日まで一緒に練習してた子はパーティーの都合で街から出て行っちゃったんだ」

 ふうん。

 俺は顔をこれでもかと近付けてきたマツリから顔を背けて考える。

 つまりこの黒髪美少女の中に男は俺だけってことか?
 特訓っていってもあれだろ? 動きの確認とかだろ?
 あれ、これって青春の1ページ案件なんじゃないだろうか。女の子に囲まれてワイワイできるのではないだろうか。

 「ねえお願い!」
 「っ。わかったわかった! やればいいんだろ? やってやるよ!」

 俺は決意を固め、マツリのお願いを聞くことにした。
 下心なんてない。俺はただ十五歳という青春を謳歌してみたいだけだ。
 
 「やった! ありがとうカケルくん! それじゃあ明日迎えに行くからね!」
 「おう」

 そう言い残して、マツリたちは去って行った。
 その背中を見送りながら、俺はとある視線に気付く。

 「なんだよトウカ。何か言いたげだな」
 「…… よかったのか?」
 「なにが」
 「カケルはそういう性格じゃないだろう」
 「たまにはいいんじゃねえかって思っただけ」
 「…… そうか。カケルが良いのなら私は構わないのだが」
 「いいのいいの」
 「念のために言っておくがマツリは昔からあんな感じだからな。変な期待は抱かない方がいいぞ」
 「き、期待とかしてねえし! そんなんじゃねえし!」
 「マツリさんに迫られている間ずっと鼻の下伸びてましたよ。私見てました」
 「うるさいぞロリっ子」
 「なっ!? 誰がロリっ子ですか!? 神に対して失礼ですよ!」
 「ちなみに、ジャポンティ出身の男は女に慣れてるとかマツリは言っていたがそんなこともないからな?」
 「知ってるし! そんなの知ってるし!」
 「「……」」
 「ほ、本当だから! そんな目でこっち見るな!」

 そして祭り当日まであったはずの休日は、この日が最後になったのである。
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