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俺の通り名はどこか間違っている。 2

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 アルヒの街から少し離れた森の中。
 キングマルメドリさんと死闘を繰り広げて以来か、この地に足を踏み入れたのは。

 「都合良く思い出を書き換えてそうな顔をしてますね」
 「なぜわかった」

 俺はアリアとステラと共に、新しく習得したスキルと魔法の確認に来ていた。

 「それにしてもなんで森なんですか? 試したいなら街中でも良かったじゃないですか」
 「あの日『ソウルサーチ』覚えたのはいいけど今まで使い所がなかったからな。街中で使っても全部見えてるんだからサーチの意味ないだろ」
 「じゃあ早く使ってください」
 「はいはい」

 俺はすぅっと息を吸い込んでから、

 ――『魂捜索』

 スキルを発動させた。 ――っ!?

 「いっっっってえええええええええええええええええ!」
 「どうしたのだ!?」
 「どうしたんですか!?」

 俺は魂を探知するスキルを発動させたはずなのだが、突然襲ってきた頭痛を抑えようと地面を転がり回っている。
 
 「くそっ! なんだよこの痛み! 頭破裂するかと思ったぞ!」
 「一体何があったんですか!?」
 「知らねえよ! 『ソウルサーチ』使ったら急に頭痛が襲って来やがった!」

 先の痛みがまだ頭にうっすらと残っている。まじ痛い。

 「カケル、『ソウルサーチ』とやらは周囲の魂を感知するスキルで合っておるのか?」
 「そうだけど。ステラ何か知ってるのか?」
 「妾の予想だが、感知した魂とやらが多すぎたのであろうな」
 「魂が多すぎる……?」
 「あー! そういうことですか!」
 「そういうことであろうな」
 「おい、当事者の俺を置いていくな」
 「ぷぷぷ。まだ分からないんですかぁ?」

 アリアは憎たらしい顔をしてこっちを見ている。
 森の中に置き去りにしてやろうか。

 「魂はどんなモノにでも宿ると言われているであろう? 妾たちの周りにある木々や草花にも魂はあるのだ。カケルの『ソウルサーチ』はそれら全てを感知してしまうのであろう」
 「…… それってさ、このスキル使えなくね?」

 なんて使いにくいスキルなんだ。やっぱ俺の加護ハズレじゃねえか。

 「ま、まあ試しに感知する魂をカケル自身で選んでみてはどうじゃ? カケル自身で制御できるのじゃったら使い道はあるやもしれん」
 「だ、だよな! 俺のスキルだし制御ぐらいできるよな!」
 「ぷぷぷぷぷ! 使えないスキルなんてカケルらしいですね!」
 「おいどういう意味だこら」

 このクソガキ。
 今はいいや。あとでこいつの目の前でアイスクリン大量に食ってやろう。

 よし、感知するのは紫色、モンスターの魂を意識して……

 ――『魂捜索』

 スキルを発動させると頭の中にマップのようなモノが浮かんできた。なるほど。

 「なにか見えたか?」
 「……」
 「黙ってないで何か言ってください!」
 「アリアの足元にモンスターがいる」
 「ひゃあっ!?」

 その場を飛び跳ねたアリアを見て俺は鼻で笑ってから、

 「冗談だバァーカ! 俺たちの周囲にモンスターの反応なんか無えよ!」
 「このっ! バカって言った方がバカなんですぅ! 私は神なんですからバカなわけないんです!」
 「お前がバカじゃなかったらどんな奴がバカになるんだよ! このバ神さまが!」
 「なっ!? 今なんて言いました!? なんて言いました!?」
 「こんな場所でやめんか! まだ試したいスキルはあるのだろう?」
 「おっとそうだった。これからが本番だった」
 「ほう」
 「ふん! カケルの事ですからどうせしょーもないモノに決まってます!」

 今のうちに笑っておくといいさこのクソガキが。
 俺は教えてもらった魔法を思い浮かべる。

 「俺は今、四属性の魔法が使える。デンバーたちから教えてもらった」
 「えっ」
 「ほう」

 驚いているな。
 それもそのはず。俺はこいつらには内密にデンバーのパーティーメンバーから初級魔法を教えてもらっていたからだ。初めは火の魔法だけにしようと考えていたのだが、あいつのとこにはバランス良く四属性の加護持ちが揃っていたからそれぞれの初級魔法全てを習得することにした。

 魔法を扱う時に大事なのはイメージだった。

 まず『オド』を体内で巡らせて、ソレを全身の毛穴から吹き出す感じだ。サウナで汗がじわぁと滲み出てくる感覚にちょっと似てる。これはデンバーの「体ん中の熱いもんを全身で出すイメージだ」という助言のおかげで上手くできた。
 次に『オド』と『マナ』が溶け合っていくのを感じ取る。おそらくスキル型の人間の前に立ち塞がる壁がこの行程。俺は何故か普通にできた。
 最後に扱う属性の特徴をイメージする。火属性ならメラメラと燃え盛る火炎だ。これはめっちゃ簡単だった。日本男児のイメージ力はすごいという事だろう。ちなみに俺が一番うまくイメージできたのは水属性だった。


 「これから俺は四属性の魔法を使いこなして戦う、魔法剣士的なやつでやっていこうと思っている」
 「おぉ! 魔法剣士とな! 実によい響きじゃ!」
 「ちょ、ちょっとかっこいいかもしれません」

 そうだろう、かっこいいだろう。

 「ちょっと下がって見てろって。あそこにあるデカい木が俺のエレメンタルフォースによって折れる様をなあ!」
 「「おお!」」
 「まず、火の魔法『ファイアーボール』――っ!」

 掌から野球ボール並みの火の玉を放出する魔法だ。

 「あれ?」

 俺が想像していたよりも遅い火の玉が俺の掌から放出された。

 「これでは火種程度にしかならんだろうな」
 「ぷっ」

 ちっ。教えてもらった時火の玉出しただけで満足するんじゃなかった。

 「次だ次! 土の魔法『ロックショット』――っ!」

 周囲にある地面からサッカーボールぐらいの岩の塊を創り出し、それを放つ魔法だ。

 「あ、あれ?」

 俺が放った岩の塊はふよふよと飛んでいき、対象にしたはずの木に届くことなく地面に落ちた。

 「石を投げた方がいいのではないか?」
 「ぷぷっ」

 街の地面を削るなんてそんな迷惑な事はできなかった俺の優しさが憎い。

 「…… 風の魔法『ウインドウェーブ』――っ!」

 風を操り、その風圧で敵を攻撃する魔法だ。

 「……」

 教えてもらった時は加減して葉っぱを操れてたから本気出せば台風のような風圧で木々を揺らすはずだったのだが。

 「心地よいな」
 「ぷぷぷっ」

 そよ風が吹いただけだった。扇風機代わり程度にしかならねえ。

 「ち、違うぞ! 今からやるのが一番自信あるやつだ! いくぜ! 水の魔法『スプラッシュウォーター』――っ!!」

 使用者の周囲に水の塊を創り出し、それを散弾のように発射する魔法。

 「あれ?」

 水の魔法を使ったはずなのに俺の視界の中に水なんて物質は無い。デンバーたちにも「初めてなのにやるじゃん」って褒められた魔法だし不発って事はないと思うが…… 実際にあるのは目標にした木とさっき創った岩の塊だけ。

 「よし、もういっか――」
 「「カケル」」

 俺は背後からした声に反応して振り返る、と

 「何をするんです」
 「どういうつもりなのだ」

 水浸しになったアリアとステラがわなわなと震えながら立っていた。
 あーそういうイベントね。知ってるわこれ。定番イベントじゃん。
 ここで下手したてに出たらヒドい目に合うんだろ? ならここは逆に……

 「心配するなよお前ら。俺はお前らがびしょびしょに濡れて、ボディラインが浮き彫りになっていたとしても興奮なんてしないから」
 「ならその鼻から出ている赤いモノはなんなのだ?」
 「…… ちょっと魔力を使いすぎたみたいだな。ははっ。…… ステラはともかくアリアみたいなつるぺったん――」
 「何か言い残すことはありますか?」

 うん。逃げよう。

 ――『アクセル』

 俺は二人にオーラみたいなモノが見えたのでその場から離れる為にスキルを使った。
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