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俺の2人目のパーティーメンバーはどこか間違っている。 2

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 いざ、コモモドラゴンリベンジ戦!



 道中ステラから聞いたのだが、どうやら魔法を使うのは簡単ではなく、割と真面目な訓練が必要になるらしい。アリアは誰でも使えるみたいな事を言っていたが、それは元々魔法を使える人間だけのようだ。

 この世界には『オド』を体内で循環させる事に長けたスキル型、『オド』を『マナ』に干渉させる事に長けた魔法型の二種類の人間がおり、俺は前者らしい。

 判別の仕方は凄く単純で、

 最初に習得したのが魔法かスキルか。
 二番目に習得したのが魔法かスキルか。

 つまりぼんやり浮かんできたのが魔法、魔法と来たらそいつは魔法型、逆ならそいつはスキル型になるという。ちなみにアリアのようなヤツは万能型と呼ばれているらしい。くそが。

 この話を聞いて、なんて面倒な異世界なんだ、と思ったが口には出さなかった。



 「着いたな。ステラよろしく頼む」
 「よろしくですっ!」

 現地に着いた俺とアリアはステラの背後に移動して彼女の小さな背中を押す。
 つい数時間前に俺とアリアが絶叫したその平野へいや。アリアが隆起させた『山』を見ると笑いがこみ上げてくる。

 「何ニヤついてるんですか。バカにされてる気がします」
 「してないしてない」
 
 いけないいけない。笑っちゃあダメだ。

 「ま、まてまて! わらわの天体魔法は少し時間が必要なのだ。それに、あんなに散らばっておったら撃ち漏らすやもしれん。 カケル達でコモモドラゴン共を一か所に集めてきてはくれぬだろうか?」
 「天体魔法!? めっちゃすごそう! 早く見てえ!!」

 天体魔法、と聞いた俺はものすごくテンションが上がった。今ならギガスラッシュさえ撃てそうだ。

 「そうであろう? 早く見たいであろう? では早くモンスター共を集めてくるのだ」
 「了解だステラ! よしいくぞアリア。早く来い」

 俺は天体魔法とやらを見るためにやる気を出し、未だにステラの背後から動こうとしないアリアに声をかけた。

 「い、嫌です! おとりならカケル一人で充分じゃないですか! 私はあんな怖いモンスターに追いかけられるのは嫌です!」

 こいつ。まさかただ見物して経験値みたいなもんをもらう為だけに付いてきたのか? 

 「囮は一人より二人の方が良いに決まってるだろ! いいから早くしろ」
 「嫌です嫌ですっ!!」
 「よぉし分かった。お前がビビってるのはよーく分かった。でもなアリア。そのままだとソウルプレートに魂吸収されないぞ?」
 「…… え? そうなんですか?」

 おいこいつやっぱりだ。高みの見物するつもりでいやがった。

 「そりゃそうだろ」

 知らんけど。多分同じパーティーだったら入るんだろうけど。

 「うぅ…… でも」
 「でもじゃない。頑張ったらさっきお前が食べてたヤツ一週間毎日奢ってやるよ」
 「!? カケル本当ですか!? アイスクリン買ってくれるんですか!?」
 「あぁ。だから早くしなさい。ステラさんが待ってるでしょうが」
 「はーいっ」

 正直俺も食べたいし、500サリーぐらいなら懐事情も余裕だろう。
 アリアが俺の隣に移動してきたのを確認して、俺は言った。

 「アリア、お前に囮の極意を伝授してやる」
 「そんな極意知りたくないです」
 「まあそう言うな。全ては借金返済の為だ」
 「……」

 なんで不満そうなん?

 「優秀な囮ってのはな、相手に追い付かれそうで追い付かれない、そういう速さで走るんだ。相手を焦らすんだよ」
 「知ってますけど」
 「さいで」

 俺とアリアはコモモドラゴンの縄張りに再度足を踏み入れた。

 太陽煌めく青空の下。

 「いやああああああああああああああああっ!! はやく! ステラはやく!!!」
 「きゃああああああああああああああああああああ!! カケル助けてください!! 助けてください!!」
 「俺に言うんじゃねええええええええええ!!」

 俺とアリアの叫び声が響いていた。
 コモモドラゴンの縄張りに入った俺とアリアは左右に別れ、円を描くように走っている。
 左右から縄張りにいるコモモドラゴンを誘い出し、中央に引き付けるという作戦だ。走るだけだから問題ないだろうが、念のため俺とアリアの距離はそれほど離れていない。
 俺を追いかけるコモモドラゴンは3体、アリアを追いかけるコモモドラゴンは8体。こいつらを倒せば55万サリーだ。そしてクエスト達成報酬として10万サリーあるから合計で65万サリー。
 借金を返済しても釣りがくる。
 
 「カケル! カケル! 何で私の方が多いんですかぁぁぁ! 怖いですこわいですうう!!!!」
 「いいから走れ! 追い付かれたら終わりだぞ!!」
 「そんなこと分かってますよおお!! ひゃっ!?」
 「っ!? おまっ! お前何こけてんだああああああああああ!! くそっ! ――『アクセル』っ!」

 大事なとこで転んだアリアを救出するため、俺はアリアの元に駆け出した。

 「ふう。ギリギリ間に合ったな」
 「うわあああああああああん! えぐぅ…… かっこよくないです…… ひぐっ」
 「……」

 こいつう。助けてやったんだぞ泣き喚いてないで感謝しろ。

 「カケル! アリア! 時は満ちた! そこを離れよ!」
 「やっとか! 了解だ!!」

 俺はアリアを抱きかかえて縄張りの中心を通るように離脱した。

 『天上門・開門ゲート・オープン

 ステラは右手を天に掲げ、その言葉と同時に、天が裂けた。
 裂けた真っ暗な空間から赤く燃え盛る天体がゆっくりと、ゆっくりと顔を覗かせ始める。

 「是より示すは希望。是より示すは絶望。我は万物の理を指し示す。我が母たる星よ。我が父たる銀河よ。その真髄を宿す現身うつしみと我はなろう。束ねるは原初の粒子。星々のまたたきを今ここに」

 天体から放たれたオレンジ色の光芒こうぼうがステラの身体を包み込む。
 ステラが身に纏ったオレンジ色の光はだんだんと彼女の右腕に収束していき、

 「刮目せよ! 『太陽神の咆哮ヘリオス・ロア』――!!」

 ステラがピストルのカタチを模倣した指先と共に右手を振り下ろすと同時にオレンジ色のビームとなった。

 ステラが放った魔法はコモモドラゴンの群れを捉え、大地に直撃する。
 鼓膜が破れそうになる程の爆音と体が宙に浮かびそうになる程の爆風、そして肌を焼くような熱風が俺とアリアを襲った。
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