23 / 84
俺の2人目のパーティーメンバーはどこか間違っている。 2
しおりを挟むいざ、コモモドラゴンリベンジ戦!
*
道中ステラから聞いたのだが、どうやら魔法を使うのは簡単ではなく、割と真面目な訓練が必要になるらしい。アリアは誰でも使えるみたいな事を言っていたが、それは元々魔法を使える人間だけのようだ。
この世界には『オド』を体内で循環させる事に長けたスキル型、『オド』を『マナ』に干渉させる事に長けた魔法型の二種類の人間がおり、俺は前者らしい。
判別の仕方は凄く単純で、
最初に習得したのが魔法かスキルか。
二番目に習得したのが魔法かスキルか。
つまりぼんやり浮かんできたのが魔法、魔法と来たらそいつは魔法型、逆ならそいつはスキル型になるという。ちなみにアリアのようなヤツは万能型と呼ばれているらしい。くそが。
この話を聞いて、なんて面倒な異世界なんだ、と思ったが口には出さなかった。
*
「着いたな。ステラよろしく頼む」
「よろしくですっ!」
現地に着いた俺とアリアはステラの背後に移動して彼女の小さな背中を押す。
つい数時間前に俺とアリアが絶叫したその平野。アリアが隆起させた『山』を見ると笑いがこみ上げてくる。
「何ニヤついてるんですか。バカにされてる気がします」
「してないしてない」
いけないいけない。笑っちゃあダメだ。
「ま、まてまて! 妾の天体魔法は少し時間が必要なのだ。それに、あんなに散らばっておったら撃ち漏らすやもしれん。 カケル達でコモモドラゴン共を一か所に集めてきてはくれぬだろうか?」
「天体魔法!? めっちゃすごそう! 早く見てえ!!」
天体魔法、と聞いた俺はものすごくテンションが上がった。今ならギガスラッシュさえ撃てそうだ。
「そうであろう? 早く見たいであろう? では早くモンスター共を集めてくるのだ」
「了解だステラ! よしいくぞアリア。早く来い」
俺は天体魔法とやらを見るためにやる気を出し、未だにステラの背後から動こうとしないアリアに声をかけた。
「い、嫌です! 囮ならカケル一人で充分じゃないですか! 私はあんな怖いモンスターに追いかけられるのは嫌です!」
こいつ。まさかただ見物して経験値みたいなもんをもらう為だけに付いてきたのか?
「囮は一人より二人の方が良いに決まってるだろ! いいから早くしろ」
「嫌です嫌ですっ!!」
「よぉし分かった。お前がビビってるのはよーく分かった。でもなアリア。そのままだとソウルプレートに魂吸収されないぞ?」
「…… え? そうなんですか?」
おいこいつやっぱりだ。高みの見物するつもりでいやがった。
「そりゃそうだろ」
知らんけど。多分同じパーティーだったら入るんだろうけど。
「うぅ…… でも」
「でもじゃない。頑張ったらさっきお前が食べてたヤツ一週間毎日奢ってやるよ」
「!? カケル本当ですか!? アイスクリン買ってくれるんですか!?」
「あぁ。だから早くしなさい。ステラさんが待ってるでしょうが」
「はーいっ」
正直俺も食べたいし、500サリーぐらいなら懐事情も余裕だろう。
アリアが俺の隣に移動してきたのを確認して、俺は言った。
「アリア、お前に囮の極意を伝授してやる」
「そんな極意知りたくないです」
「まあそう言うな。全ては借金返済の為だ」
「……」
なんで不満そうなん?
「優秀な囮ってのはな、相手に追い付かれそうで追い付かれない、そういう速さで走るんだ。相手を焦らすんだよ」
「知ってますけど」
「さいで」
俺とアリアはコモモドラゴンの縄張りに再度足を踏み入れた。
太陽煌めく青空の下。
「いやああああああああああああああああっ!! はやく! ステラはやく!!!」
「きゃああああああああああああああああああああ!! カケル助けてください!! 助けてください!!」
「俺に言うんじゃねええええええええええ!!」
俺とアリアの叫び声が響いていた。
コモモドラゴンの縄張りに入った俺とアリアは左右に別れ、円を描くように走っている。
左右から縄張りにいるコモモドラゴンを誘い出し、中央に引き付けるという作戦だ。走るだけだから問題ないだろうが、念のため俺とアリアの距離はそれほど離れていない。
俺を追いかけるコモモドラゴンは3体、アリアを追いかけるコモモドラゴンは8体。こいつらを倒せば55万サリーだ。そしてクエスト達成報酬として10万サリーあるから合計で65万サリー。
借金を返済しても釣りがくる。
「カケル! カケル! 何で私の方が多いんですかぁぁぁ! 怖いですこわいですうう!!!!」
「いいから走れ! 追い付かれたら終わりだぞ!!」
「そんなこと分かってますよおお!! ひゃっ!?」
「っ!? おまっ! お前何こけてんだああああああああああ!! くそっ! ――『アクセル』っ!」
大事なとこで転んだアリアを救出するため、俺はアリアの元に駆け出した。
「ふう。ギリギリ間に合ったな」
「うわあああああああああん! えぐぅ…… かっこよくないです…… ひぐっ」
「……」
こいつう。助けてやったんだぞ泣き喚いてないで感謝しろ。
「カケル! アリア! 時は満ちた! そこを離れよ!」
「やっとか! 了解だ!!」
俺はアリアを抱きかかえて縄張りの中心を通るように離脱した。
『天上門・開門』
ステラは右手を天に掲げ、その言葉と同時に、天が裂けた。
裂けた真っ暗な空間から赤く燃え盛る天体がゆっくりと、ゆっくりと顔を覗かせ始める。
「是より示すは希望。是より示すは絶望。我は万物の理を指し示す。我が母たる星よ。我が父たる銀河よ。その真髄を宿す現身と我はなろう。束ねるは原初の粒子。星々の瞬きを今ここに」
天体から放たれたオレンジ色の光芒がステラの身体を包み込む。
ステラが身に纏ったオレンジ色の光はだんだんと彼女の右腕に収束していき、
「刮目せよ! 『太陽神の咆哮』――!!」
ステラがピストルのカタチを模倣した指先と共に右手を振り下ろすと同時にオレンジ色のビームとなった。
ステラが放った魔法はコモモドラゴンの群れを捉え、大地に直撃する。
鼓膜が破れそうになる程の爆音と体が宙に浮かびそうになる程の爆風、そして肌を焼くような熱風が俺とアリアを襲った。
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる