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第一王子の視線の向かう先
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コロン子爵令嬢は学園でとても有名であった。貴族しかいない学舎において一人だけ庶民の振る舞いをする彼女は、婚約者に隠れてまだまだ遊びたいと願う一部の遊び人達から人気があった。
感情をむき出しにする様は、幼児のように愛らしい、と言われて一度見た感想は「何ともチグハグな気持ち悪さ」だけが目立っていた。婚約者を愛している者からすれば「何故あんなに珍妙な者に」と苦言を呈したくもなるが、レクトル曰く「怖いもの見たさではないか。」とのことだった。
淑女然とした令嬢の美しさに見慣れた自分は、あの様な異分子には惹かれなくとも、遊びだと割り切ってしまえば、どのようにも目を瞑れるということか。
第一王子の婚約者は、候補として何人かのご令嬢が挙がっていた。クローディア・ラケルも勿論候補には挙がっていたが、此方が動き始める前に子爵家との縁組を決めてしまったために候補を断念せざるを得なかった。
第一王子は選定には参加していなかったにしても、クローディアが相手では今の様な状態にはならなかっただろうと推測する。クローディアと自分は人への接し方が似ている。政略結婚を受け入れるがあまりにそれ以上の感情を引き出せずに仮面夫婦になっていただろう。
とはいえ、それは似た者同士が夫婦になれば、の仮定の話だ。今は互いに別の伴侶を得て幸せなのだからいいのだが。
ラケル侯爵家が王家よりマシと選んだ子爵家の令息は破滅願望のある奴だったらしく噂のコロン子爵令嬢に瞳を奪われて、折角手にした身に余る幸運を、自ら手放してしまった。
コロン子爵令嬢が、その男で我慢できたら良かったが、自分を客観的に見られない人間には怖いものはないらしい。
マナー講師に頼まれて、我が婚約者が設けたご褒美の茶会に紛れ込み、周りに、白々しい目を向けられても尚、レクトルに絡もうとする姿勢はその場に居合わせた者全員に奇妙な連帯感を齎した。
「一時はどうなることかと心配したけれど、あれで皆思ったそうよ。マナー違反を客観的に見るとどの様に見えるかを。ああはなるまい、とね。彼女の登場はサプライズということで、お楽しみ頂けたわ。先生から感謝までされちゃって、子爵家にはご褒美をあげないとね?」
我が婚約者は心が広い。それならば、と第一王子として、心からの褒美を用意することにした。
卒業後に毎年行われる王家主催の夜会に夫婦揃っての参加を永年継続して、約束させる。
令息の方は顔を青くしていたが、令嬢の方はそれを自分が気に入られたからだと勘違いした様で、必死に可愛いアピールをして礼を伝えて来る。
此方の失笑、若しくは嘲笑を理解しない淑女など一人だけだ。周りの空気は随分と冷めて来ているのに、嬉しそうな彼女はやはり「珍妙なもの」として、皆の目に焼き付いた。
「彼女しか目に入らなくなったのは不幸としか言いようはないな。」
「ええ。それを恋心だと誤解したままの彼の方に同情はしないけれど。」
一度目に入ってしまえば、恐怖や嫌悪による鼓動の高鳴りを体が良いように勘違いしても、仕方ない。どちらにせよ、婚約者以外の異性に目移りした時点で詰んでいる。貴族の義務を果たせないことを自らが主張することになるのだから。
感情をむき出しにする様は、幼児のように愛らしい、と言われて一度見た感想は「何ともチグハグな気持ち悪さ」だけが目立っていた。婚約者を愛している者からすれば「何故あんなに珍妙な者に」と苦言を呈したくもなるが、レクトル曰く「怖いもの見たさではないか。」とのことだった。
淑女然とした令嬢の美しさに見慣れた自分は、あの様な異分子には惹かれなくとも、遊びだと割り切ってしまえば、どのようにも目を瞑れるということか。
第一王子の婚約者は、候補として何人かのご令嬢が挙がっていた。クローディア・ラケルも勿論候補には挙がっていたが、此方が動き始める前に子爵家との縁組を決めてしまったために候補を断念せざるを得なかった。
第一王子は選定には参加していなかったにしても、クローディアが相手では今の様な状態にはならなかっただろうと推測する。クローディアと自分は人への接し方が似ている。政略結婚を受け入れるがあまりにそれ以上の感情を引き出せずに仮面夫婦になっていただろう。
とはいえ、それは似た者同士が夫婦になれば、の仮定の話だ。今は互いに別の伴侶を得て幸せなのだからいいのだが。
ラケル侯爵家が王家よりマシと選んだ子爵家の令息は破滅願望のある奴だったらしく噂のコロン子爵令嬢に瞳を奪われて、折角手にした身に余る幸運を、自ら手放してしまった。
コロン子爵令嬢が、その男で我慢できたら良かったが、自分を客観的に見られない人間には怖いものはないらしい。
マナー講師に頼まれて、我が婚約者が設けたご褒美の茶会に紛れ込み、周りに、白々しい目を向けられても尚、レクトルに絡もうとする姿勢はその場に居合わせた者全員に奇妙な連帯感を齎した。
「一時はどうなることかと心配したけれど、あれで皆思ったそうよ。マナー違反を客観的に見るとどの様に見えるかを。ああはなるまい、とね。彼女の登場はサプライズということで、お楽しみ頂けたわ。先生から感謝までされちゃって、子爵家にはご褒美をあげないとね?」
我が婚約者は心が広い。それならば、と第一王子として、心からの褒美を用意することにした。
卒業後に毎年行われる王家主催の夜会に夫婦揃っての参加を永年継続して、約束させる。
令息の方は顔を青くしていたが、令嬢の方はそれを自分が気に入られたからだと勘違いした様で、必死に可愛いアピールをして礼を伝えて来る。
此方の失笑、若しくは嘲笑を理解しない淑女など一人だけだ。周りの空気は随分と冷めて来ているのに、嬉しそうな彼女はやはり「珍妙なもの」として、皆の目に焼き付いた。
「彼女しか目に入らなくなったのは不幸としか言いようはないな。」
「ええ。それを恋心だと誤解したままの彼の方に同情はしないけれど。」
一度目に入ってしまえば、恐怖や嫌悪による鼓動の高鳴りを体が良いように勘違いしても、仕方ない。どちらにせよ、婚約者以外の異性に目移りした時点で詰んでいる。貴族の義務を果たせないことを自らが主張することになるのだから。
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