視線の向かう先

mios

文字の大きさ
4 / 10

第一王子の視線の向かう先

しおりを挟む
コロン子爵令嬢は学園でとても有名であった。貴族しかいない学舎において一人だけ庶民の振る舞いをする彼女は、婚約者に隠れてまだまだ遊びたいと願う一部の遊び人達から人気があった。

感情をむき出しにする様は、幼児のように愛らしい、と言われて一度見た感想は「何ともチグハグな気持ち悪さ」だけが目立っていた。婚約者を愛している者からすれば「何故あんなに珍妙な者に」と苦言を呈したくもなるが、レクトル曰く「怖いもの見たさではないか。」とのことだった。

淑女然とした令嬢の美しさに見慣れた自分は、あの様な異分子には惹かれなくとも、遊びだと割り切ってしまえば、どのようにも目を瞑れるということか。


第一王子の婚約者は、候補として何人かのご令嬢が挙がっていた。クローディア・ラケルも勿論候補には挙がっていたが、此方が動き始める前に子爵家との縁組を決めてしまったために候補を断念せざるを得なかった。

第一王子は選定には参加していなかったにしても、クローディアが相手では今の様な状態にはならなかっただろうと推測する。クローディアと自分は人への接し方が似ている。政略結婚を受け入れるがあまりにそれ以上の感情を引き出せずに仮面夫婦になっていただろう。

とはいえ、それは似た者同士が夫婦になれば、の仮定の話だ。今は互いに別の伴侶を得て幸せなのだからいいのだが。

ラケル侯爵家が王家よりマシと選んだ子爵家の令息は破滅願望のある奴だったらしく噂のコロン子爵令嬢に瞳を奪われて、折角手にした身に余る幸運を、自ら手放してしまった。

コロン子爵令嬢が、その男で我慢できたら良かったが、自分を客観的に見られない人間には怖いものはないらしい。

マナー講師に頼まれて、我が婚約者が設けたご褒美の茶会に紛れ込み、周りに、白々しい目を向けられても尚、レクトルに絡もうとする姿勢はその場に居合わせた者全員に奇妙な連帯感を齎した。


「一時はどうなることかと心配したけれど、あれで皆思ったそうよ。マナー違反を客観的に見るとどの様に見えるかを。ああはなるまい、とね。彼女の登場はサプライズということで、お楽しみ頂けたわ。先生から感謝までされちゃって、子爵家にはご褒美をあげないとね?」

我が婚約者は心が広い。それならば、と第一王子として、心からの褒美を用意することにした。

卒業後に毎年行われる王家主催の夜会に夫婦揃っての参加を永年継続して、約束させる。

令息の方は顔を青くしていたが、令嬢の方はそれを自分が気に入られたからだと勘違いした様で、必死に可愛いアピールをして礼を伝えて来る。

此方の失笑、若しくは嘲笑を理解しない淑女など一人だけだ。周りの空気は随分と冷めて来ているのに、嬉しそうな彼女はやはり「珍妙なもの」として、皆の目に焼き付いた。

「彼女しか目に入らなくなったのは不幸としか言いようはないな。」
「ええ。それを恋心だと誤解したままの彼の方に同情はしないけれど。」

一度目に入ってしまえば、恐怖や嫌悪による鼓動の高鳴りを体が良いように勘違いしても、仕方ない。どちらにせよ、婚約者以外の異性に目移りした時点で詰んでいる。貴族の義務を果たせないことを自らが主張することになるのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

さよなら 大好きな人

小夏 礼
恋愛
女神の娘かもしれない紫の瞳を持つアーリアは、第2王子の婚約者だった。 政略結婚だが、それでもアーリアは第2王子のことが好きだった。 彼にふさわしい女性になるために努力するほど。 しかし、アーリアのそんな気持ちは、 ある日、第2王子によって踏み躙られることになる…… ※本編は悲恋です。 ※裏話や番外編を読むと本編のイメージが変わりますので、悲恋のままが良い方はご注意ください。 ※本編2(+0.5)、裏話1、番外編2の計5(+0.5)話です。

【完結】私の小さな復讐~愛し合う幼馴染みを婚約させてあげましょう~

山葵
恋愛
突然、幼馴染みのハリーとシルビアが屋敷を訪ねて来た。 2人とは距離を取っていたから、こうして会うのは久し振りだ。 「先触れも無く、突然訪問してくるなんて、そんなに急用なの?」 相変わらずベッタリとくっ付きソファに座る2人を見ても早急な用事が有るとは思えない。 「キャロル。俺達、良い事を思い付いたんだよ!お前にも悪い話ではない事だ」 ハリーの思い付いた事で私に良かった事なんて合ったかしら? もう悪い話にしか思えないけれど、取り合えずハリーの話を聞いてみる事にした。

妹はわたくしの物を何でも欲しがる。何でも、わたくしの全てを……そうして妹の元に残るモノはさて、なんでしょう?

ラララキヲ
ファンタジー
 姉と下に2歳離れた妹が居る侯爵家。  両親は可愛く生まれた妹だけを愛し、可愛い妹の為に何でもした。  妹が嫌がることを排除し、妹の好きなものだけを周りに置いた。  その為に『お城のような別邸』を作り、妹はその中でお姫様となった。  姉はそのお城には入れない。  本邸で使用人たちに育てられた姉は『次期侯爵家当主』として恥ずかしくないように育った。  しかしそれをお城の窓から妹は見ていて不満を抱く。  妹は騒いだ。 「お姉さまズルい!!」  そう言って姉の着ていたドレスや宝石を奪う。  しかし…………  末娘のお願いがこのままでは叶えられないと気付いた母親はやっと重い腰を上げた。愛する末娘の為に母親は無い頭を振り絞って素晴らしい方法を見つけた。  それは『悪魔召喚』  悪魔に願い、  妹は『姉の全てを手に入れる』……── ※作中は[姉視点]です。 ※一話が短くブツブツ進みます ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げました。

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

隣の芝生は青いのか 

夕鈴
恋愛
王子が妻を迎える日、ある貴婦人が花嫁を見て、絶望した。 「どうして、なんのために」 「子供は無知だから気付いていないなんて思い上がりですよ」 絶望する貴婦人に義息子が冷たく囁いた。 「自由な選択の権利を与えたいなら、公爵令嬢として迎えいれなければよかった。妹はずっと正当な待遇を望んでいた。自分の傍で育てたかった?復讐をしたかった?」 「なんで、どうして」 手に入らないものに憧れた貴婦人が仕掛けたパンドラの箱。 パンドラの箱として育てられた公爵令嬢の物語。

愚か者の話をしよう

鈴宮(すずみや)
恋愛
 シェイマスは、婚約者であるエーファを心から愛している。けれど、控えめな性格のエーファは、聖女ミランダがシェイマスにちょっかいを掛けても、穏やかに微笑むばかり。  そんな彼女の反応に物足りなさを感じつつも、シェイマスはエーファとの幸せな未来を夢見ていた。  けれどある日、シェイマスは父親である国王から「エーファとの婚約は破棄する」と告げられて――――?

婚約破棄の日の夜に

夕景あき
恋愛
公爵令嬢ロージーは卒業パーティの日、金髪碧眼の第一王子に婚約破棄を言い渡された。第一王子の腕には、平民のティアラ嬢が抱かれていた。 ロージーが身に覚えのない罪で、第一王子に糾弾されたその時、守ってくれたのは第二王子だった。 そんな婚約破棄騒動があった日の夜に、どんでん返しが待っていた·····

処理中です...