それは私の仕事ではありません

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ニコルの狙い

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「ここまで注目を浴びる必要はなかったんじゃない?言われたでしょう、程々に、って。」
「いや、俺はここぞとばかり、アネットに付け入る隙などないとばかりに近づけ、と言われたよ。」
「私もだ。この機をうまく使えと言われたよ。」

アネットとグレイ、フランクの三人は歓迎会で出来るだけ目立つようにニコルから厳命されていた。その為にアネットはニコルが秘密裏に持って来たドレスを着せられている。

「エミリアがコソコソと動いていたけれど。アレとは別の何かがあるのよね。」
「うん。俺も初耳だったけど、この前の事件にもどうやら関わっていた奴がいたらしいし。膿は全て出し切りたいってことなんかな。」
「彼女の場合、他にも何か考えてそうで怖いけれどまあ、そんなところだろう。後は多分アネットの披露も目的の一つなんだろう。明日からトーナメントで実力も知られる訳だから、お見知り置きをってところかな。」
「多分私だけじゃなくて、フランクとグレイもこちらに注意を払っていると示したかったんじゃない?貴方達を敵には回したくないだろうし……どうしたの?変な顔して。」
「いや、漸く名前で呼んでくれたなって。」

呼べ呼べと言った癖に呼ぶと恥ずかしそうにするから、恥ずかしくなってしまう。グレイは遠い目で、こちらを見ないようにしていたけれど。ニコルは、此方でやりたいことがスムーズに進むようにアネットにたくさん存在感を示すように言った。それは何から目を逸らさせようとしているのか。

「私が目立つなら、ニコルのそばにはいない方が良いのよね。」
「多分、彼女自身がというよりは、相手が動きやすいように、だろうなぁ。囮とまでは言わないけれど。でも、こんなにわかりやすい罠に嵌ろうなんて思うかな。」
「通常なら思わないでしょうね。だけど、わかりやすいご褒美があるなら、怪しいとは思いつつもやるしかないと思う、かもしれない。」

「私なら絶対にニコルにだけは喧嘩売らないんだけどなぁ。」
「わかる。下手したら死ぬぞ。そう言うところ、高位貴族というか。あまりモラルがないだろう?」
グレイが軽率に不敬発言をしているが、私はそこまで言ってない。

でもさっきまでのグレイは演技だとわかっていてもドキドキした。「こうしてみると無駄にスペック高いのよね。」
「誰の話?無駄ってことは、俺か。」
苦笑いを浮かべながら、満更でもないみたいな表情も昔はしていなかった。

フランクが近すぎて恥ずかしいからと、グレイばかり見ていた弊害が今出ている。グレイは、安全圏だったのに、困ったわ。

「ニコルの手のひらの上で転がされているみたい。」

彼女なら、そういう仕掛けもしてそうで少し嫌な気分になる。ニコルが副団長になったのは、決して家の力だけではない。頭の中がアネットとは違う。見ていないようで隅々まで隈なく見ているし、アネットが気がつかないものにまで気がついていたりする。

「落ち着きがないだけ」とニコルは言うが、それならアネットの方が自信がある。彼女はここにいる人に仕掛けてもらいたいと思っているのだ。願わくば、私達がここにいる間に、ニコルを害して欲しい、と。





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