それは私の仕事ではありません

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痛み

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それから暫くして着いた一行は休む人と、そうでない人に別れた。当然道中の報告書を書く人は休めず、フランクとグレイは通常業務に戻っていく。

「アネットは休んでおけば。」
「あー、一応明日からお世話になるので、担当の方に挨拶をしに行こうかと思ったのですが。先程グレイに紹介を頼みましたし。」

「ルーナ・カリスタって、初めて聞く名前だわ。」
「そう?合同演習の時に、一番初めに勝った人で、体は小さいけれど、大きな相手にうまく立ち回って、あれで私も実力差のある相手に立ち向かうことができたの。」
「そう、だったかな。よくそんな昔のことを覚えてるわね。」
「だって凄く衝撃的だったもの。」


戦い方としては、ニコルに似ているので、アネットの目に留まりやすかった説は大いにある。ただその場で一度会っただけの相手に挨拶に行くのは正直億劫だった。

怖い人じゃないといいけど。

アネットの心の声は誰にも気づかれない。だが同じ立場にいたルーナには彼女の気持ちがわかった。所謂似た者同士の二人は、だからこそ最初から互いのことを分かり合って、すぐには仲良くならなかった。

二人とも人見知りだったので、仲良くなるための壁は取っ払われていたにもかかわらず、その場で立ち止まってしまったのだ。

「アネット、やっぱりここにいた。」
「どうしたの?グレイ。」
「いや、ルーナと話終わった?」
「ええ、まあ。」

ルーナは空気を読んで、少し下がる。グレイの話の邪魔をするつもりはなかったが、話の内容が聞こえて来て、咄嗟に顔を上げてしまった。

彼は歓迎会のエスコートをしようか、とアネットに申し出た。

「どうして、毎回私、エスコートなんてされてないわよ。」
「まあ、そうだけど。今回は新人もいるだろう?手本として、やっておいた方がいいんじゃないかと。」
「……そんなのいる?」
「いらない?」

アネットの問いに、他意などありません顔をしているグレイだが、ルーナは彼の心の内側が緊張でバクバクしているのを知っている。

「そうね、じゃ、お願いしようかな。」
「うん、わかった。……服はあるよな?」
「ドレスはないけれど、スーツはちょっと多めにもってきたよ。」
「わかった。じゃあ、後で。」

やけにあっさりと引いたけれど、グレイの耳がほんのり赤いのを見ると、相当喜んでいるように見える。

ルーナはとても暗い気持ちになった。そんなルーナをアネットは不思議な顔で眺めている。

「もしかして、ルーナさんってグレイが好きなの?」

鈍感だと噂のアネットにまさかバレるなんて。

「違いますよ。」

冷静さを取り繕うとした結果、明らかに動揺した声が出てしまう。案の定、アネットには生温かい目で見られる事態になり、自分じゃ、ライバルとして見られてないことを痛感したのである。
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