それは私の仕事ではありません

mios

文字の大きさ
22 / 44

やばい奴

しおりを挟む
連れてこられた先は暗い闇の中。灯一つなく、だけど確実に何かいる。気配だけで強いとわかる。野生の獣?

「あはは。さっきまでと明らかに顔が変わったね。いやあ、君みたいな本物に会えるとはラッキーだったね。さっきの女騎士なんか、怖い怖い助けてって泣いてばかりでまともに動けやしない。あんなので騎士なんて恥ずかしくないのかな。」

「こんなに暗くて周りの様子がわからなければ無理もないと思うわ。それで、私に何をさせたいの?」

アネットは先程すれ違ったエミリアも、同じことをされたのなら、彼女の性格上泣き叫んで戦わないということもある、と考えた。

アネットに対してもそうだった。戦おうとすればエミリアだって充分戦える。だって、学園の騎士科の先生もそこまで甘くはない。少なくとも学生時代のエミリアは何だかんだでちゃんと課題をクリアしたのだもの。筆記はアネットのノートでクリアしても、実技は実力で勝負するしかないのだから。そして、アネットも教わった教師陣は、騎士として命を軽く考える生徒を合格させたりしない。

エミリアは頭の良い子だ。人に迷惑をかけてかけてかけまくっても、自分を大事にできる子。振り回されるのは大変だけど、彼女は生き延びる為に演じた。役に立たない元騎士を。

だけど残念ながらアネットにはそれができない。既に実力が多分バレている。というか。

「貴方もこれをしたの?貴方、騎士でしょう?」

「やっぱりわかるんだね、騎士同士は互いの実力を瞬時に判断するもんね。うーん、やっぱり欲しいな。質問の答えは、難しい。はいともいいえとも言える。私が騎士だとして、どこの騎士かは、君にはわかるかな?」

「それは、……戦ってみないと。」
「あはは。拳でやり合うって奴?君、黙っていると美人なのに、残念って言われない?ま、私は好きだけどね。」

話しているうちに目が慣れてきた。意外なことに闇の中感じた気配は獣、ではなかった。

「人間?」
「うふふ、どうだろうね?」

アネットは、間合いを十分に取ると、意識を男から、その人間に集中させる。

それは少し緊張しているように見える。目が慣れてきて、漸くソレが何か、わかる。

「え?」

人間だと思ったものは、何の変哲もない、ただの人形。人形?人形にしては、随分と人間らしい……

「何これ。」

男はやはり凄い力で、アネットを押さえつけた。いや、彼は先程いた位置から動いてさえいない。

「は?」

「うふふ。君みたいな完璧な女騎士を探していたんだよ。これからは私がご主人様だ。泣いても喚いても君ならいいよ。楽しく末長く暮らそうね。」

アネットは自分が失敗したことを知った。とりあえず、様子を見て、援軍を待つことにした。

「何だ、あんまり怯えないんだね、つまんない。」

男は、おかしな言動を繰り返していたが、相当の実力者。しかも多分異国の者。

先程表にいた客の中で、よりにもよって、一番変な奴を引き当ててしまった。くじ運の悪さにため息をついて、呼吸を整える。

だけど、アネットはそこまで悲観していなかった。何故ならば先生がそこまできているから。先生に会わずに自分が耐えられるとは思わない。火事場の馬鹿力とやらに期待して、今は成り行きを見守ることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫婦という名の協力者、敵は令嬢

にゃみ3
恋愛
齢十二歳にして公爵夫人となった、セレスティア。 常に命を狙われる危険と、露骨な敵意に晒される立場。 同年代の令嬢たちからは妬みと侮蔑を向けられ、年長の貴婦人たちからは距離を置かれる。 そんな生活を送り始めて、早くも六年が経った頃。 「私、公爵様とお近づきになりたいんです!」 夫に好意を寄せる、自らが公爵夫人の座に就きたいと言い出した令嬢が現れて……。 黒く爛れた世界でたった二人の幼い夫婦が、どれほど苦しい思いをして生きてきたか。それは、当人である二人にしか分からないことだ。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様

さくたろう
恋愛
 役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。  ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。  恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。 ※小説家になろう様にも掲載しています いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

処理中です...