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女王様気分は最初から

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「あの子って、縁故採用だっけ?確か前の副団長の姪に当たるんだっけ?」

「え?じゃあ、あれで侯爵令嬢なの?」

「まさか。違う違う。彼女は男爵令嬢よ。まだ学生気分が抜けてないのよ。学園でも騎士科で女性が少なかったからか、周りに男を侍らせて女王様気取りだったって言うし。うちの弟も、私の下僕になりなさい、とか勧誘されたらしいし。」

同僚のマリアは侯爵令嬢で、歳の離れた弟がいる。爽やかな好青年だが、エミリアのタイプだったのだろうか。

「それで、どうしたの?婚約者、居たわよね?」

「気持ち悪いから、近づくな、って言ったらしいわ。騎士になりたいなら自分で立てるようになれって。ああいう子って口煩い男が苦手じゃない?だから、嫌われたって言ってたわ。」

「流石ね。」

「学生気分って言っても、婚約者のいる男に言い寄ったりするのは昔からなのね。」

「あれは、病気だと思うわよ。」

ニコルは苦い顔をして、頭を振った。

「怖いもの知らずも大概にしてほしいわ。騎士団長にアピールし始めた時は、何事かと思ったもの。」

そう、あれは地獄だった。元々エミリアは騎士団長の補佐官ではない。最初に割り振られたのは、副団長の元だった。前任の副団長から任された彼女を今の副団長は持て余した。結果、舐められて、好き勝手されている。

今の副団長は、若い女性に滅法弱い。好きだとかそういうのではなく、例外なく初対面では怯えられる為に、優しくなりすぎるのだ。本人は顔が怖いだけで真面目な人なのだが。

彼は、アネットやニコル、マリアにも優しく接してくれるが、此方はそれに甘えたりしない。分別のある大人ならそうなるのが当然だ。

副団長の仕事をせずに、団長の側にばかりいるエミリアを副団長はどう思っているのだろう。それに、アネットとニコルとマリアは、団長の仕事よりも副団長の仕事ばかりさせられている。理由は、本来の担当であるエミリアのせい。

「これはちゃんとわかってもらわないといけないわ。」

副団長と団長に話を通して、エミリアの仕事は、副団長の補佐官内でサポートしてもらうようにする。

副団長は知らなかったようで、しきりに謝ってくれた。対して、彼方の補佐官は不満そうな顔をしている。

「何で俺たちが、みたいな顔ね。」
ニコルが小さな声で、副音声を入れていたけど、それはこちらの台詞だ。

「どうも、新人騎士の間では書類仕事は女の仕事と思ってる節があるのよね。」

「おじさん達はしないから。」
「しないんじゃなくて、出来ないから追い出されただけなんだけど。」

確かにその辺の事情を知らなければ、不満もあるのかもしれない。だけど、それは彼方で解決することだ。

私達は関係がない、と静観することにした。
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