大恋愛の後始末

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大恋愛の後始末

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「仲良くしているようで、何よりだ。」

シェイラの第一子が生まれたときいて、公爵は安堵した。養子は不要になった。あの二人の子なら、優秀に違いないし、花畑の住人になることもないだろう。

とはいえ、結婚してからのライアンはすでに新妻にご執心で、花畑の片鱗はみせている。

養子は、また聞いてみよう。公爵は、考えを改めた。

あんなに恋愛に興味など一切ありません、という二人があれほどまでに恋に落ち、愛に溺れたのか。公爵は全てがわかって二人を引き合わせたのではない。似てるから、ちょうど良いかと思ったのだ。

大公家は一代限りで後が継げないため、新たに公爵となったライアンは、公爵夫人を溺愛して、夜会の間もずっと側を離れない。

公爵はシェイラに何度となく話しかけようとしたが、狂犬のようなライアンに連れ去られ、未だまともに会話ができない。

会うのは諦めて、手紙でも送る以外ないのか、と思考する。遅れてきた春を満喫する甥に、人間らしさを感じて微笑ましくなった。

彼らの幸せを邪魔する者達はいない。ジュリエットの為に、と宣って、二人に危害を加えようとした者は王家に罰せられたし、あんなに妻にべったりのライアンに近付く者は、彼の態度で勝手にいなくなった。

どこにも空気を読めない人間はいるものだ。その最たる者がライアンではあるが。今日の夜会でも、気づけば彼らはいなくなっていた。挨拶も、ダンスも、二人との会話もまだ出来ていない。

「二人を引き合わしたの、俺なんだけど!」

公爵の叫びにフフ、と反応したのは、第二王子アダム。

「初恋が叶ったんですから、応援してあげましょう。聞くところによると、お相手の方も、初恋らしいですから。」

「それにしたって、限度があるだろう。養子の話だって、まだはっきりと拒否された訳でもないし。」

「あ、奥方は養子を望んでいるようですよ。今すぐではないらしいですが、自分の子育てが上手くいかなかった場合に、念の為、ということです。時期は明言されてなかったので、それでも大丈夫か聞いてほしいと。大丈夫ですよね?

奥様曰く、あのライアンの変わりように考えが変わったのだそうです。花畑は変異することもある、と悟られたようで。」

「まあ、大恋愛の後始末はあちらに丸投げしたのだから、花畑夫のやらかしについてはこちらが責任を取るのも、悪くない。教育係の選定から始めなくてはな。」

シェイラへの連絡の取付は、アダムからシェイラ付きの侍女に許可を取ってもらうそうで、あちら側も、公爵に連絡を取りたいと話していたらしい。

「あの年になってようやく訪れた春だから、愛想を尽かされないようにしてやらなくてはな。」

シェイラの様子を知るアダムとしては、その心配は多分ない、と思うが、公爵の言葉に同意した。
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