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穏やかな幸せ?
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ステラとエディの婚約は消えてなくなった。破棄として慰謝料をたっぷりとふんだくるつもりが、解消となったのには訳があるのだが。ステラは納得がいかなかった。だって、婚約がなくなって、もうそれ以上の縁を当のステラ自身が望んでいないのである。フリート伯爵家には何ならずっと居座る気だったので、それには慰謝料が必要だったのに、どうして。
ステラには新たな婚約が結ばれることになった。
エディの弟であるニコルからも、打診があったようだが、そこは両親が断っていた。ニコル自身の為人に文句はないが、あのエディと確実に縁を切りたい。
元婚約者が義理の兄なんて、笑えないと思う。ニコルはお詫びにと、慰謝料に近い額を謝罪金と言う名で支払ってくれた。最初からニコルが婚約者なら、とは思うがもう後の祭りだ。
ステラが特別にニコルに気持ちがあるのかと言うと、それは全くない。どちらかと言うと、家族に対する愛情に似ている。彼はあの兄を立てることのできる優れた弟で、自慢の義弟だった。
何らかの理由により婚約がなくなった場合、一度目よりは二度目の方が、相手の身分は下がるものだが、新しい婚約者はエディよりも立場は上の侯爵家の出身だった。
ただ、出身なだけで、侯爵家とはあまり良好な関係ではなかったようで、彼はエディとは全く違う魅力に溢れていた。
彼は土いじりをしたいと言うステラを馬鹿にしたりせずに一緒に楽しんでくれた。ご令嬢らしくないステラに興味があるようで、基本何でも受け止めてくれた。
「有難いけど、何かしっくりこないのよね。」
「気が乗らないのであればお断りもできますよ。」
ミラは少し残念そうだが、ステラには彼は勿体なさすぎるように感じていた。
彼は良い人すぎるのだ。何故この人が婚約者を作らなかったのか疑問だが、本人に問うと、「何でなんでしょうね。」と遠い目をするから、理由ははっきりしないままだ。
「あまりに良い人すぎて取り合いになったとか?」
「うーん、穏やかすぎて、いい人止まりだったのでは?」
「何かまだ隠している信じられない癖があるんじゃないですか?」
レイラとサリナがあーだこーだと理由を考えてくれている。
彼はステラより歳は上だと言っていた。
「私の知らない癖が何かあるなら、知りたいわね。」
こんなにいい人を断ったら、この先良い縁など来ない気もして、ステラは、彼について知りたくなった。
今思えば、エディには特に自分から知りたいと思うことはなかった。そのあるなしが二人に決定的な違いを齎したのだろう。
「ねえ、彼なら悪戯も笑って許してくれると思う?」
レイラは怪訝な顔をしていたが、サリナは少し嬉しそうにしている。
「まさかまたやるんですか?」
「やったー!」
二人ともエディに色々仕掛けた悪戯が楽しかったらしい。だけど、レイラの動機は浮気者への制裁だったために、浮気者でもない彼にイタズラを仕掛けることは、良心に背く行為だった。だから、やるのを止めたのだった。
「だって、どうやっても仲良くなりきれない気がするのよ。悪戯に怒ってくれたりしないかな。本性が見えなきゃ、愛せない、とか言うのも変かな?」
何かと言い訳しているが、ステラの意思はただ一つ。エディの件は不完全燃焼だった。悪戯のない穏やかな暮らしは暇で暇で仕方がない。ステラの婚約者になるには、エディほどのリアクションはなくても、少しは驚いてくれなくちゃ。
ステラには新たな婚約が結ばれることになった。
エディの弟であるニコルからも、打診があったようだが、そこは両親が断っていた。ニコル自身の為人に文句はないが、あのエディと確実に縁を切りたい。
元婚約者が義理の兄なんて、笑えないと思う。ニコルはお詫びにと、慰謝料に近い額を謝罪金と言う名で支払ってくれた。最初からニコルが婚約者なら、とは思うがもう後の祭りだ。
ステラが特別にニコルに気持ちがあるのかと言うと、それは全くない。どちらかと言うと、家族に対する愛情に似ている。彼はあの兄を立てることのできる優れた弟で、自慢の義弟だった。
何らかの理由により婚約がなくなった場合、一度目よりは二度目の方が、相手の身分は下がるものだが、新しい婚約者はエディよりも立場は上の侯爵家の出身だった。
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彼は土いじりをしたいと言うステラを馬鹿にしたりせずに一緒に楽しんでくれた。ご令嬢らしくないステラに興味があるようで、基本何でも受け止めてくれた。
「有難いけど、何かしっくりこないのよね。」
「気が乗らないのであればお断りもできますよ。」
ミラは少し残念そうだが、ステラには彼は勿体なさすぎるように感じていた。
彼は良い人すぎるのだ。何故この人が婚約者を作らなかったのか疑問だが、本人に問うと、「何でなんでしょうね。」と遠い目をするから、理由ははっきりしないままだ。
「あまりに良い人すぎて取り合いになったとか?」
「うーん、穏やかすぎて、いい人止まりだったのでは?」
「何かまだ隠している信じられない癖があるんじゃないですか?」
レイラとサリナがあーだこーだと理由を考えてくれている。
彼はステラより歳は上だと言っていた。
「私の知らない癖が何かあるなら、知りたいわね。」
こんなにいい人を断ったら、この先良い縁など来ない気もして、ステラは、彼について知りたくなった。
今思えば、エディには特に自分から知りたいと思うことはなかった。そのあるなしが二人に決定的な違いを齎したのだろう。
「ねえ、彼なら悪戯も笑って許してくれると思う?」
レイラは怪訝な顔をしていたが、サリナは少し嬉しそうにしている。
「まさかまたやるんですか?」
「やったー!」
二人ともエディに色々仕掛けた悪戯が楽しかったらしい。だけど、レイラの動機は浮気者への制裁だったために、浮気者でもない彼にイタズラを仕掛けることは、良心に背く行為だった。だから、やるのを止めたのだった。
「だって、どうやっても仲良くなりきれない気がするのよ。悪戯に怒ってくれたりしないかな。本性が見えなきゃ、愛せない、とか言うのも変かな?」
何かと言い訳しているが、ステラの意思はただ一つ。エディの件は不完全燃焼だった。悪戯のない穏やかな暮らしは暇で暇で仕方がない。ステラの婚約者になるには、エディほどのリアクションはなくても、少しは驚いてくれなくちゃ。
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