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いらなくなったもの
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レイラを埋めたように見せるため、レイラが髪につけていたリボンと同じものを手に入れ、それをこれみよがしに花壇の周りに落としておく。
レイラはノリノリで金髪のカツラと、リボンに血糊を垂らし、それを土に中途半端に埋める、という作業を手伝った。
それは明らかな悪戯と呼べるものであったが、暗闇や、焦った状態で見ると、充分に騙せるだろう代物だった。
「凄いわね、レイラ。貴女才能あるわよ。」
侍女見習いだからなのか、手先が器用なレイラは必要なものをどんどんと手作業で作っていく。
ステラにはその辺りの器用さは皆無でそう言うところが婚約者様のお気に召さなかったのだろう。
とはいえ、あの人に好かれてなくてよかったと今では思っているのだが。
レイラはエディと会う時、元婚約者の浮気相手のように演じていたと白状した。彼女と接していると、確かに最初に話を聞いていた彼女の輪郭との違いに気がついていた。どちらかと言うと、彼女は此方側だ。浮気をする側ではなく、される側。泣き寝入りではなく、やられたらやり返したくなる側。ステラはエディのおかげで更なる味方を手に入れた。
「まさか彼に感謝することになるなんて。」
レイラの働きっぷりにミラも満足そうだ。レイラと同時期に入った侍女見習いの面々も、皆協力的で、よりリアルを追求してこだわりを見せる様子が面白く、何とかして一泡ふかせてやりたい、と皆が躍起になっていた。
いつもと同じ時間にエディは訪れた。いつもなら可愛いレイラが出迎えてくれるのだが、今日は別の侍女見習いが出迎える。
「あの……いつもの女の子は、今日は休みかな?」
話しかけられたサリナは、少し躊躇ったそぶりを見せて、「彼女は……配置換えになりました。」と言った。
「どこに、配置換えになったの?知ってる?」
「多分、お嬢様ならお分かりになられると思います。」
「ふーん、そっか。」
案内されながらも、落ち着かない様子でレイラを探しているのかキョロキョロと忙しなく動くエディの瞳。
「道具はいつもどちらをお使いでしたか?」
いつもなら、レイラが探してくれる道具も彼女はわからないでいるようで、エディは自ら道具室に入り、選ぼうとした。
いつもの場所にある筈の、大きなスコップがない。
「あれ?」
「ありました?」
「いや、あの、顔ぐらいの大きさの……」
ガタッと音がして、彼女が何かを見たように動きが止まる。
そちらに目をやると、明らかに隠された、血のついたスコップがそこにあった。
「何だ、コレ。」
侍女は顔色を悪くし、足早に立ち去る。
「ここから先はご案内できません。どうぞ、お嬢様の花壇にお越しください。」
最初にステラが掘っていた人の入れるぐらいの大きい穴。怯えていたのは杞憂だったみたいで、ピンク色の小さな可愛い花と水色の花が植えられているだけだった。
そこで。エディの記憶が蘇る。学園に在籍していた時、中庭の花壇の下に死体が埋まっている、という怪談話を聞いた気がする。
あのピンク色の花はあの花壇にも咲いていた。
「あのピンクの花は、最初白かったんだけど、遺体の血を全て吸い取ってからはピンクの花が咲くようになったんだ。」
エディが慌てて、穴を見てみると、ピンクの花の隣にあった新しい穴に不自然に土が盛られていた。見覚えのあるリボンによく似たものと、レイラの髪の毛に似た……エディは一目散に逃げ出した。
レイラはノリノリで金髪のカツラと、リボンに血糊を垂らし、それを土に中途半端に埋める、という作業を手伝った。
それは明らかな悪戯と呼べるものであったが、暗闇や、焦った状態で見ると、充分に騙せるだろう代物だった。
「凄いわね、レイラ。貴女才能あるわよ。」
侍女見習いだからなのか、手先が器用なレイラは必要なものをどんどんと手作業で作っていく。
ステラにはその辺りの器用さは皆無でそう言うところが婚約者様のお気に召さなかったのだろう。
とはいえ、あの人に好かれてなくてよかったと今では思っているのだが。
レイラはエディと会う時、元婚約者の浮気相手のように演じていたと白状した。彼女と接していると、確かに最初に話を聞いていた彼女の輪郭との違いに気がついていた。どちらかと言うと、彼女は此方側だ。浮気をする側ではなく、される側。泣き寝入りではなく、やられたらやり返したくなる側。ステラはエディのおかげで更なる味方を手に入れた。
「まさか彼に感謝することになるなんて。」
レイラの働きっぷりにミラも満足そうだ。レイラと同時期に入った侍女見習いの面々も、皆協力的で、よりリアルを追求してこだわりを見せる様子が面白く、何とかして一泡ふかせてやりたい、と皆が躍起になっていた。
いつもと同じ時間にエディは訪れた。いつもなら可愛いレイラが出迎えてくれるのだが、今日は別の侍女見習いが出迎える。
「あの……いつもの女の子は、今日は休みかな?」
話しかけられたサリナは、少し躊躇ったそぶりを見せて、「彼女は……配置換えになりました。」と言った。
「どこに、配置換えになったの?知ってる?」
「多分、お嬢様ならお分かりになられると思います。」
「ふーん、そっか。」
案内されながらも、落ち着かない様子でレイラを探しているのかキョロキョロと忙しなく動くエディの瞳。
「道具はいつもどちらをお使いでしたか?」
いつもなら、レイラが探してくれる道具も彼女はわからないでいるようで、エディは自ら道具室に入り、選ぼうとした。
いつもの場所にある筈の、大きなスコップがない。
「あれ?」
「ありました?」
「いや、あの、顔ぐらいの大きさの……」
ガタッと音がして、彼女が何かを見たように動きが止まる。
そちらに目をやると、明らかに隠された、血のついたスコップがそこにあった。
「何だ、コレ。」
侍女は顔色を悪くし、足早に立ち去る。
「ここから先はご案内できません。どうぞ、お嬢様の花壇にお越しください。」
最初にステラが掘っていた人の入れるぐらいの大きい穴。怯えていたのは杞憂だったみたいで、ピンク色の小さな可愛い花と水色の花が植えられているだけだった。
そこで。エディの記憶が蘇る。学園に在籍していた時、中庭の花壇の下に死体が埋まっている、という怪談話を聞いた気がする。
あのピンク色の花はあの花壇にも咲いていた。
「あのピンクの花は、最初白かったんだけど、遺体の血を全て吸い取ってからはピンクの花が咲くようになったんだ。」
エディが慌てて、穴を見てみると、ピンクの花の隣にあった新しい穴に不自然に土が盛られていた。見覚えのあるリボンによく似たものと、レイラの髪の毛に似た……エディは一目散に逃げ出した。
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